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カクテル・ヒストリア第3回『「初めは違った」そのレシピ』

カクテル「マンハッタン」
ハリー・マッケルホーンが著した世界初の実用的カクテルブック「ABC of Mixing Cocktails」の表紙

現代のバーの人気カクテルの約8割は、1890~1930年代に誕生したクラシック・カクテルである。しかし、誕生当時のレシピがそのまま定着しているケースは極めて稀だ。なのに、現代の標準的なレシピが「昔のまま」と信じ込んでいる人も少なくない。

例えば、マティーニは、ジンとドライ・ベルモットでつくる辛口カクテルの代表格。しかし1930年以前のカクテルブックを見ていると、マティーニと言えば通常、ジンとスイート・ベルモットだった。ジン+ドライ・ベルモットのマティーニが主流になるのは、1930年代後半~40年代以降である。

また、ジンと生のライム・ジュースを使い、辛口カクテルの代表格でもあるギムレットだが、英国で誕生した1890年頃は、「甘口系のプリマス・ジン+ローズ社製のライム・コーディアル(甘口のライム・ジュース)」という材料でつくるのが普通だった。時代が進み、バーで生ライムが手に入り易くなると、ギムレットはベースのジンも含め徐々に辛口になり、甘口の“元祖”ギムレットはいつしか忘れ去られていった。

女性に人気があるアレクサンダーは「ブランデー+クレーム・ド・カカオ+生クリーム」というレシピだが、意外なことに、1930年以前は基本ジン・ベースで、ブランデー・ベースが主流になるのはそれ以降である。また、ソルティ・ドッグも現代では通常ウオッカ・ベースだが、1940年代後半の誕生当初から70年代前半まではジン・ベースが主流だった。ウオッカ・ベースが登場するのは70年代に入ってからである。  「最初はそんなレシピじゃなかった」という有名カクテルはまだ他にもある。「過去」を知る・学ぶことは、時には思わぬ発見、そして「次のヒント」にもつながるから面白い。

この記事を書いた人

荒川 英二
荒川 英二https://plaza.rakuten.co.jp/pianobarez/
1954年生まれ。大阪・北新地のバーUK・オーナーバーテンダー、バー・エッセイスト。新聞社在職中から全国のバーを巡りながら、2004年以来、バー文化について自身のブログで発信。クラシック・カクテルの研究もライフワークとしてきた。2014年 の定年退職と同時に、長年の夢であった自らのバーをオープン。切り絵作家の故・成田一徹氏没後に出版されたバー切り絵作品集『NARITA ITTETSU to the BAR』では編者をつとめた。
荒川 英二
荒川 英二https://plaza.rakuten.co.jp/pianobarez/
1954年生まれ。大阪・北新地のバーUK・オーナーバーテンダー、バー・エッセイスト。新聞社在職中から全国のバーを巡りながら、2004年以来、バー文化について自身のブログで発信。クラシック・カクテルの研究もライフワークとしてきた。2014年 の定年退職と同時に、長年の夢であった自らのバーをオープン。切り絵作家の故・成田一徹氏没後に出版されたバー切り絵作品集『NARITA ITTETSU to the BAR』では編者をつとめた。