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ブランデーとは?ブランデーの種類・造り方・楽しみ方:もっと洋酒を楽しむためのFirst Step~ブランデー~

ブランデーって、どんなお酒?

ブランデーの名前は、元々コニャック地方でワインを蒸留したものを「焼いたワイン(Vin Brûlé)」と呼んでいたことに由来します。

これを取引していたオランダの商人たちが、そのままオランダ語にして「Brandewjin」と称し、イギリスに渡った際に英語で「Brandy」となったのです。そのため、ブランデーとはブドウを原料としてワインを造り、これを蒸留したお酒といえます(狭義のブランデー)。

現在では、穀物原料のウイスキーと分類するうえで、ブドウ以外の果実を原料とした蒸留酒についてもブランデーと呼んでいます(広義のブランデー)。リンゴや洋ナシ、杏、プラム、チェリー、すもも(ミラベル)、フランボワーズなどのベリー系なといった、さまざまな果実で造られています。

ウイスキーは樽で熟成するのが一般的ですが、フランスの原産地統制呼称法AOCで規定されているコニャック・アルマニャック・カルバドス以外については、特に樽熟成の規定はありません。ステンレスタンクなどで熟成を行った無色透明のブランデーも多くリリースされています。

ブランデーはどうやって造られるの?

ブランデーは、大きく分類すると以下の3つの製法があります。

➀果汁を発酵してモロミを造り、その後、蒸留する
➁果実をつぶし圧搾後、糖分やでんぷんと酵母を加えて発酵し、その後、蒸留する
➂果実をスピリッツに浸漬し、その後、蒸留する

➀は、主としてブドウやリンゴなど糖分の多い果汁が得られる場合に用いられます。多くの場合、酵母は添加せずに天然酵母によって果実中の糖分をアルコールに変換します。フランスのコニャックやカルバドスなどは、この方法で造られています。ドイツでは、キルシュヴァッサー(キルシュはサクランボの意)のように、名称の最後に「○○ヴァッサー wasser」と名付けています。

➁や➂は、糖分が少なくそのままでは十分なアルコール分が得られない果実(フランボワーズやプルーンなど)の場合に用いられる方法です。

➁は、酵母が果実にも働きかけるため、➂より複雑な香味が得られる傾向にあります。東欧やスラブ諸国で広く飲まれているプラムブランデーのスリヴォヴィッツなどはこの方法で造られています。プラムを種ごとつぶして仕込むため、種子からも様々な香味がもたらされることになります。

➂は、一般的にブドウなど果実由来のスピリッツ(アルコール度数70%程度)を用いて、果実を数日から数か月浸け込みます。その果実の香味を十分に取り出した後に蒸留することで、よりフレッシュな香味を得ることができます。ドイツでは➀のヴァッサーとの区別のため、「…ガイスト geist」と名付けています。

ブランデーは、あくまで蒸留酒ですので40%程度以上の度数があり、無色透明もしくは樽熟成による琥珀色を呈しています。ブランデーと称されている商品の一部に、その果実の色彩や糖分が付加されたものもありますが、これらは分類上リキュールですので注意が必要です。

ブランデーの蒸留器には、どんなものがあるの?

ブランデーでは、現在以下のような様々な蒸留器が用いられています。基本的にこれらの容量は百~数千リットル程度と、ウイスキーのそれよりは小型といえます。これは、原料が生鮮果実であるため調達に限りがあることや、より果実の香味を取り出すためには小さな蒸留器のほうが有利であることに起因しています。

➀シャラント式アランビック蒸留器(単式蒸留器)

コニャックなどフランスで単式蒸留を行う際、主として使われる蒸留器。高品質のカルバドスでも使用され、アルマニャックでも一部使用されています。

基本的に、加熱部であるショーディエール(左)と冷却器のコンデンサー(右)、ワイン予熱器であるショーフヴァン(中央)の3パーツからなり、容量は3000ℓ程度です。通常、2回蒸留を行います。

➁アルマニャック式アランビック蒸留器(半連続式蒸留器)

高品質のアルマニャックにて用いられる蒸留器。単式のスチルの上部に数段のプレートを組み込んだ蒸留塔)(左)と冷却器(右)からなります。

各棚板の部分でアルコール分が高められるため、1回の蒸留でアルコール度数を50度から70度程度まで上げられ、希望の度数で取り出すことができます。通常1~2週間は連続して稼動させます。そのため得られる留液は①よりふくよかになる傾向にあります。

➂湯煎式蒸留器

モロミを入れた釜に、スチームや熱湯が流れるジャケットを取り付けた二重構造のボディを有する蒸留器。

ゆっくりと比較的低温にて加熱するため、モロミの香味をそのまま取り出すことができます。もろみを蒸留する場合は2回蒸留を、アルコールに浸漬する場合は1回蒸留するのが一般的です。フルーツブランデーやグラッパで多く用いられています。

➃ハイブリット蒸留器

単式蒸留器と数段の棚板を有する精製塔を組み合わせた蒸留器。1回の蒸留で、留液のアルコール度数を幅広く設定できることが特徴です。主としてクラフトジンの製造に使われています。

フランスが世界に誇るブランデー

ブランデーを語る上で、その品質と多様性、生産量などからフランスを外すことはできません。ブランデーの代名詞といえるコニャックをはじめ、各地で素晴らしいブランデーを造りだしています。

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中でもコニャック、アルマニャク、カルバドスは原産地統制呼称法AOC(Appellation d’Origin Contrôlée) によって、生産地域や品種、蒸留法などが厳しく規定されており、その品質は他のブランデーを圧倒しています。

これ以外にも、産地規制法(Appellation Reglementée Par Decret)によって規定されたワインの特産地で造られるブランデーがあります。

ワインを蒸留したオー・ド・ヴィー・ド・ヴァン Eau de Vie de Vin(一般にフィーヌ fine )、ワインの搾りカスから造られるオー・ド・ヴィー・ド・マール Eau de Vie de Marc(略してマール Marc)がこれにあたります。

フィーヌは、元のワインの香味を濃縮した印象を受けます。マールは、元のワインの風味に、ブドウの果皮由来の干し藁や日なたのような独特の香味をプラスした複雑な印象を受けます。特にブルゴーニュ、シャンパーニュ、アルザス地方では、素晴らしいブランデーが造られています。基本的に、黒ブドウから造られた場合は樽で熟成をし、白ブドウの場合は樽熟成ではなくステンレスタンクでの熟成が一般的です。白ブドウはそのものにふくよかな香りを有しており、その個性を活かすためです。

またブドウ以外の果実原料のブランデー Eau de Vie de Fruit も多く造られています。特に良質なものはアルザス地方で生産されています。

洋ナシのポワール・ウィリアムス、サクランボのキルシュ、ラスベリーのフランボワーズなど、様々な果実を原料として、ジャン・ポール・メッテ(Jean Paul Metté)社をはじめとして、多くのメーカーが素晴らしいフルーツブランデーをリリースしています。

①コニャック(Cognac)

フランス南西部の中心都市・ボルドーから北へ100㎞ほど、コニャック町を中心に広がるエリアで造られています。コニャックは100年以上の熟成が可能な唯一無二の蒸留酒で、その高貴なアロマは人々を魅了してやみません。

コニャック6つの生産区分

生産クリュは下図のように6つに分けられており、それぞれAOCで規定されています。中心部のグランド・シャンパーニュからは極上のコニャックが造られ、このエリアは石灰質中心の土壌です。周りに行くほど粘土質や砂質などの割合が増え、穏やかな印象のコニャックになります。また、ボルドリはスミレのような高貴なアロマが特徴で、他のエリアとは異なる個性的な印象を受けます。

大手生産者の製品は、複数のクリュの原酒をブレンドしてバランスの良いコニャックを造っています。このうち、グランド・シャンパーニュとプティット・シャンパーニュのみをブレンド(グランド・シャンパーニュを半分以上)したものを、フィーヌ・シャンパーニュ(Fine Champagne)といい、より高品質なものとして、これもAOCで規定されています。また、グランド・シャンパーニュやボルドリなど、各クリュのみのコニャックもリリースされており、それぞれの特性を楽しむこともできます。

プロプリエテール

大手生産者の多くはブドウ農家と契約してブドウやワイン、原酒を入手して製品をリリースしていますが、ブドウ栽培から発酵・蒸溜・熟成・瓶詰・販売までを自社のみで行っている小規模生産者もいます。これらの生産者をプロプリエテール(propriétaire)といい、大手生産者とは一味違う個性とテロワールを体感することができます。

生産量は少ないのですが、ポール・ジロー(Paul Giraud)、ジャン・フィユー(Jean Fillioux)、レロー (Lheraud) など、いくつかの生産者のものが日本でも手に入ります。

このプロプリエテールはコニャックのみではなく、アルマニャックなど他のブランデーでも存在し、ラベルに書かれている場合もありますので、覚えておいて損はないでしょう。

コニャックの製法

現在、コニャックの原料となるブドウの90%以上はユニ・ブラン(ugni blanc) と呼ばれる白ブドウです。9月下旬から10月下旬まで収穫を行い、その後3週間ほど発酵を行います。アルコール度数8~9%程度と、他のワインより低く、やや酸味の強いのが特徴です。

コニャック「カミュ」の畑の様子

これをシャラント式アランビック蒸留器で丁寧に2回蒸留を行い、アルコール度数70%程度の留液を得ます。この蒸留器は独特のフォルムをしており、容量は3000ℓ程度ですが、ワインの張り込み量は2500ℓまでと規定されています。容量の違いこそありますが、ほとんどの蒸留所で同じ形状のものを使用しています。

シャラント式アランビック蒸留器

熟成は、フランス産オーク(主としてリムーザンやトロンセ)の樽にて行います。容量350ℓ程度のバリック( barrique)と呼ばれる樽が主として使われます。最初は新樽にて一定期間熟成し、タンニンを含ませ、その後古樽に移してじっくりと熟成に入ります。

熟成が進んだ原酒はその後、数千ℓのトノー(tonneau)と呼ばれる大樽や20ℓ程度のガラス瓶、ボンボンヌ (bonbonne)やデミジョン(demijohn)に移すこともあります。また、1年以内であればフランス産以外の樽材での追熟成も可能となっています。

コニャック熟成期間の表示

コニャックではVSOPやナポレオンなど独特の表示がなされていますが、これにもちゃんとした規定があります。

熟成期間をコント(Compte)という単位を用いて管理しており、蒸留したてはコント00、最初に4月1日を過ぎるとコント0に、その後4月1日を過ぎるたびに1ずつ増えていきます。

コント2にならないと、つまり最低でも2年熟成を経ないとコニャックとは名乗れません。コント2になるとVSやスリースター、コント4でVSOP、コント6でナポレオン、コント10でXOと表示できることになります。ただ実際のところ、XOで平均20年くらいの熟成を経た原酒が使われていますので、あくまで目安と考えてください。

コニャックでは、アルマニャックやカルバドスのように、あまり単一年蒸留品・ヴィンテージの表記はありません。これは、樽のダボ穴を蝋封するなど、さまざまな厳しい条件をクリアしなければならないためです。

コニャックの楽しみ方

熟成中の加水方法についてもこだわるメーカーが多いので、そのままストレートで楽しみましょう。この高貴なアロマが、加水によって石けん様の香り(加水香)に支配されることもあります。

カクテルとしては、「サイドカー」や「フレンチコネクション」が有名ですが、ジンジャーエールやブドウジュース、紅茶などで割ったものも手軽でふくよかな香味を楽しむことができます。

②アルマニャック(Armagnac)

フランス南西部の中心都市・ボルドーから南東へ100㎞ほど、「ガスコーニュ」の中心部でアルマニャックは造られています。コニャックが洗練されて高貴な印象なのに対して、やや武骨で力強く、ふくよかな印象なのがアルマニャックの特徴です。

この地の英雄『三銃士』に描かれるダルダニアンの勇猛果敢で礼節を重んじ忠誠を尽くす姿勢は、まさにアルマニャックの個性と重なります。

アルマニャック3つの生産区分

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生産区分は左図のように3つに分けられていますが、これはほぼ土壌によるものです。このうち、特に高品質のアルマニャックが造られるのが、サーブル・フォーヴと呼ばれる黄土色の砂質土壌が中心のバ・アルマニャック Bas-Armagnac です。この土壌にはフォル・ブランシュやバコなどのブドウ品種が適しており、繊細でフルーティーなアルマニャックが造られています。

中部のテナレーズ Tenarèze は粘土石灰質土壌であり、ユニ・ブランやコロンバールなどのブドウ品種から、力強くコクのあるアルマニャックが造られています。また、このエリアにはしっかりとしたタンニンを有するガスコン・オーク(別名ブラック・オーク)の森林があり、この材から作られる樽もアルマニャックの熟成に使われています。

オー・アルマニャック Haut-Armagnac からは、あまり生産されていません。また、複数のエリアの原酒をブレンドしたものはAOCアルマニャックとして認められています。

アルマニャックの製法

アルマニャックの原料となるブドウは、現在10品種が認められています。すべて白ブドウで、主としてユニ・ブラン(全体の60%)、バコ(30%)、フォル・ブランシュ(4~5%)、コロンバール(数%)が使われています。

発酵は、コニャックとほぼ同じ。

蒸留は、伝統的なアルマニャック式アランビック蒸留器が使われ、コニャックよりややアルコール度数の低い留液が得られます。また、一部の蒸留所ではコニャックと同じシャラント型で2回行うメーカーもありますが、この場合はより軽やかですっきりとしたアルマニャックが得られます。

アルマニャック式アランビック蒸留器

熟成は主としてリムーザンオークの樽が使われ、ガスコンオークは全体の10%程度となっています。容量は400ℓ程度でピエス(pièce)と呼ばれる樽です。1年以上熟成させると、アルマニャックと名乗ることができます。

楽しみ方

コニャックと比べて力強くしっかりとした香味が特徴ですので、ストレートはもちろん、ロックなどでも楽しんでいただけます。

コニャックベースのカクテルをアルマニャックに変えると、また一味違った風味が楽しめます。

③カルバドス(Calvados)

フランス北西部ノルマンディー地方でリンゴから造られるブランデーをカルバドスといいます。この地はフランスのブドウ栽培北限より北にありますので、ブドウではなくリンゴを栽培しています。

800ものリンゴ品種の中でカルバドスに使用できるのは48種類のみで、その果汁中に含まれる酸とタンニンにより「甘味」「甘苦味」「苦味」「酸味」の4タイプに区分けされています。また、洋ナシについても一定量の使用が認められています。

カルバドス3つの生産区分・クリュ

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生産区分は以下のように3つに分けられ、それぞれAOCで規定されています。

(1)カルバドス・ペイ・ドージュ Calvados Pays d’Auge
3つのクリュの中で一番高品質で、その深遠なアロマは人を魅了してやみません。

  • 洋ナシワイン(ポワレ)30%以下使用
  • シャラント式アランビック蒸留器にて2回蒸留
  • オーク樽にて2年以上の熟成必須

(2)カルバドス・ドムフロンテ Calvados Domfrontais
このエリアは高品質の洋ナシが多く栽培され、よりまろやかな印象をもたらします。

  • 洋ナシワイン(ポワレ)30%以上使用
  • アルマニャック式アランビック蒸留器にて1回蒸留
  • オーク樽にて3年以上の熟成必須

(3)カルバドス Calvados
全エリアで造られ、(1)(2)をブレンドしたものも含まれます。

  • 蒸留器については規定なし(多くはアルマニャック式アランビック蒸留器での1回蒸留)
  • オーク樽にて2年以上の熟成必須

カルバドスの製法

リンゴを発酵させたものをシードル(cidre) 、洋ナシを発酵させたものをポワレ(poiré)といいます。これらを規定された条件で混ぜ合わせ、蒸留を行います。その後、オークの樽にて熟成を行います。

カルバドスの楽しみ方

この深遠なアロマは、ぜひストレートで。

若いものはソーダ割りにすると、その爽やかなアロマがより心地よく楽しめます。

その他の国のブランデー

イタリアのブランデー

イタリアでブランデーといえば、グラッパ(grappa)。フランスのマール同様、香り高い白ワインや高品質の赤ワインの搾りカスを蒸留して造られます。特に、モスカート(moscato)種からは、マスカット様の華やかなアロマが心地よく感じられます。

また、北部ではカポヴィッラ(Capovilla)社に代表される高品質のフルーツブランデーも多く造られています。

スペインのブランデー

スペインでは、シェリーの産地として有名なヘレスでもシェリー・ブランデー、ブランデー・デ・ヘレスが造られています。

そのブドウや蒸留生産はラ・マンチャで行っていますが、主としてシェリーの酒精強化用として用いられ、シェリーの空き樽(主としてオロロソ樽)にてソレラ熟成を行います。このうち、高品質なものについてはそのまま瓶詰されています。

ソレラ熟成ですので継ぎ足しにはなりますが、50年以上前の原酒が含まれているものもあり、まろやかでビロードのような優しい味わいを楽しめます。

また、オルーホ orujo というグラッパと同様のブランデーも造られています。

ハンガリーのブランデー

ハンガリーでも素晴らしいフルーツブランデー、パーリンカ pálinkaが造られています。プラムや杏、洋ナシ、チェリーなど様々な果実を原料としています。

その他にも、さまざまなエリアで個性豊かなブランデーが造られていますので、ぜひいろいろと試してみてください。素晴らしい新たな発見があることでしょう!!

この記事を書いた人

谷嶋 元宏
谷嶋 元宏https://shuiku.jp/
1966年京都府生まれ。早稲田大学理工学部在学中よりカクテルや日本酒、モルトウイスキーに興味を持ち、バーや酒屋、蒸留所などを巡る。化粧品メーカー研究員、高校教員を経て、東京・神楽坂にバー「Fingal」を開店。2016年、日本の洋酒文化・バーライフの普及・啓蒙を推進する「酒育の会」を設立、現在に至る。JSA日本ソムリエ協会認定ソムリエ。
谷嶋 元宏
谷嶋 元宏https://shuiku.jp/
1966年京都府生まれ。早稲田大学理工学部在学中よりカクテルや日本酒、モルトウイスキーに興味を持ち、バーや酒屋、蒸留所などを巡る。化粧品メーカー研究員、高校教員を経て、東京・神楽坂にバー「Fingal」を開店。2016年、日本の洋酒文化・バーライフの普及・啓蒙を推進する「酒育の会」を設立、現在に至る。JSA日本ソムリエ協会認定ソムリエ。