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ブルックラディ “アイラバーレイ&ポートシャーロット10年”:Re-オフィシャルスタンダードテイスティング Vol.5

アイラモルトと言えば、ピーティーでスモーキー、一度飲んだら忘れないと言われる癖のあるキャラクターで知られています。もちろん、アイラモルトはピーティーなものだけではないのですが、ピートフレーバーの有無だけでなく、ピートそのものについてもアイラ島のものと異なる特徴を備えた蒸留所がブルックラディです。

ブルックラディ蒸留所は1995年から閉鎖状態にありましたが、2001年に再稼働。この経緯は書籍『ウイスキー・ドリーム』にまとめられ、現在のブランドに繋がる詳しい話を知ることができます。

閉鎖前のブルックラディはノンピートまたはライトピートで仕込まれており、プレーンな麦芽風味主体の個性でしたが、現在のスタンダード銘柄であるクラシックラディもまた、閉鎖前のキャラクターを踏襲しています。

柔らかく素朴で、微かにハーバル。麦芽由来の甘みと、どこか垢抜けないような……例えば同じノンピートでもカリラのようにクリアな味わいにならないのは、鉄製のマッシュタンなど、独特な蒸留所設備が関係しているのかもしれません。

ブルックラディ アイラバーレイ2011(写真左)、ベアバーレイ2010。
それぞれ蒸留所と契約する農家が栽培した麦芽によって仕込まれている。

一方、再稼働後の同蒸留所では、テロワールを重視するという観点から、麦の作り手や品種に拘ったリリースを行っています。今回紹介するアイラバーレイ、ベアバーレイシリーズでは、ワインにおける葡萄と同じように、ラベルに畑や品種等の関連する情報を明記するなど、『ウイスキー・ドリーム』でも書かれた、独自のブランド作りが進められています。

こうした麦に注目するウイスキー造りは、ブルックラディに限ったことではなく、最近のトレンドのひとつになりつつあります。麦の違いが香味に影響することは間違いないとしても、蒸留酒であるウイスキーでテロワール(例えば麦の生産地域の風土、気候の違いなど)がどこまで影響するのかは未知数です。しかし、素材の個性を活かそうとする狙いがあるからこその仕込みや樽使い、あるいは原酒の選定が、通常のブルックラディ(クラシックラディ)とは異なる骨格のしっかりとした香ばしくほろ苦いモルティーさ、麦芽由来の柑橘を思わせるようなフレーバーに繋がっているとも考えられます。

比較してみると、プレーン寄りの香味であるクラシックラディに対して、アイラバーレイのほうは麦芽風味が香ばしくビター、ベアバーレイのほうが柑橘系のフルーティーさに厚みが感じられ、品種による違いとして認識することも出来ます。

さて、ここまでブルックラディ蒸留所の原点とも言える、ノンピートのリリースを紹介してきましたが、続いては冒頭に述べた“アイラ島のそれと異なるピートフレーバー”について触れていきます。同蒸留所では再稼働後からピーテッド原酒の仕込みが行われ、これまでも様々な意欲作がリリースされてきました。中でも世界最強のピーテッドモルトであるオクトモアは最たるものと言えますが、最近美味しくなったと評判なのが、オフィシャルスタンダードのポートシャーロットです。

ポートシャーロット10年、2018年にリリースされた現行品。このほか、アイラ島の麦芽のみで仕込んだ、アイラバーレイもリリースされている

これまでのリリースは若さが強く、まだまだこれからという味わいでしたが、2018年にリリースされた写真のパッケージの10年から香味のバランスが向上し、熟成したモルトのコクのある味わいと麦芽風味に、焚火の後のような焦げた木材、微かにタールや燻製香を伴うスモーキーさが程よく馴染んでいる。度数も50%と高いため、個性をさらに強く楽しむことが出来ますね。

ピートの強さを示すフェノール値はボウモアより高く、アードベッグよりも低い40ppmですが、それ以上に同蒸留所のピーテッドモルトには、アイラ島のものではなくスコットランド内陸産のピートが使われているため、強さだけでなく香味の傾向が異なるのも特徴です。

アイラらしさと言えば、ヨードや正露丸等の薬品香に、あるいは海を連想させるような香りで知られています。この香味については、海辺で熟成させるから……というような説明が見られることがありますが、これらはピートを構成する成分に由来するところが大きく、熟成中に外気から取り込まれる比率は限りなく少ないと整理できます。

ブルックラディが使うピートは、主として内陸の植物が堆積したものです。同蒸留所が表現しようとする個性に、麦のテロワールがあることは先に述べた通りですが、アイラ島のテロワールに、アイラ島で取れるピートが使われていない点は若干違和感を覚えます。これは推測ですが、ポートシャーロットは元々“フローラルでエレガントなブルックラディとヘビーピートのマッチング”を狙ったリリースです。主張の強い薬品香ではなく、麦芽由来の風味を主役とするようなスモーキーさのほうが好ましかったのかもしれません。

実際、ポートシャーロット10年もアイラバーレイも、ストレートではスモーキーフレーバーが強く感じられますが、加水していくと麦系の風味が強くなり、まさに麦の酒として楽しむことが出来る個性を持っています。こうした風味のアイラモルトは現時点ではブルックラディがリリースするものに限られており、熱狂的な愛好家を生み出すまでにも至っています。 今も昔も変わらない蒸留所の個性を体現しつつ、新しいスタイルを次々と生み出すブルックラディ蒸留所。古典的な味わいのクラシックラディから、こだわりの麦芽が醸し出すテロワールと新しいスタイルであるピーティーなフレーバー。個々の味わいを楽しむだけでなく、是非クラシックラディ → ブルックラディ・アイラバーレイ → ポートシャーロットと、それぞれの違いと特徴を意識して楽しんでみてください。

ブルックラディ蒸留所外観 Photo by T.Ishihara

この記事を書いた人

くりりん
くりりんhttp://whiskywarehouse.blog.jp/
1984年生まれ、東京都出身。22歳の頃にウイスキーに惹かれ、以来琥珀の世界の住人となる。2015年、ウイスキーレビューを主としたブログ「くりりんのウイスキー置場」を開設、レビュー数1500本、月間約30万PV の媒体に成長。現在も日々レビューを更新する傍ら、ニューリリースやカスクサンプルの評価に関わることも。
くりりん
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1984年生まれ、東京都出身。22歳の頃にウイスキーに惹かれ、以来琥珀の世界の住人となる。2015年、ウイスキーレビューを主としたブログ「くりりんのウイスキー置場」を開設、レビュー数1500本、月間約30万PV の媒体に成長。現在も日々レビューを更新する傍ら、ニューリリースやカスクサンプルの評価に関わることも。