「サングリータ」という飲み物をご存じだろうか?
語源はスペイン語で「血」を表す「sangre(サングレ)」。直訳すれば「小さな血」を意味する。その名の通り、小さなグラスに注がれた、血のように赤いノンアルコールの飲み物。メキシコ・ハリスコ州のメキシコ料理店で60年以上前に誕生したと言われ、テキーラを飲むときの「チェイサー」と定義づけられている。
サングリータの中身・レシピは?
その液体の中身は?
レシピは多様なれど、一般的にはトマトジュース、オレンジジュース、ライム、チリなど。ウスターソースやグレナデンシロップが加わることもある。スパイシーで塩気のある濃いめの味なので、ジュースというよりガスパチョのような冷たいスープを想像していただいたほうが近いかもしれない。
お店で注文すると、だいたい60mlほどで、一杯100~200円程度。このサングリータとテキーラを交互に飲むと良いとされる。メキシコでは、既成のサングリータがスーパーでボトル売りされているほど、メジャーな飲み物だそうだ。
私が最初にサングリータを味わったのは、日本テキーラ協会の「テキーラ・マエストロ」の講座だった。酸味、辛み、甘み、旨みが合わさる、初めての味。ただ、単体の美味しさには感動したものの、テキーラの「チェイサー」としての役割については、自分の中でどうも腑に落ちない部分があった。
その理由は2つあって、1つは、サングリータの味が強くて舌に残るので、ものによってはテキーラの持つ繊細な風味を殺してしまいかねない、という懸念。2つめは、チェイサーの「強いお酒の合間に飲むことで体内のアルコールを薄める」という役割を果たすには、液体の量が少なすぎること。
よって、当店ではこれまでチェイサーとしてサングリータの提供はしておらず、メキシコ通の方からは「サングリータないの?」と不思議がられることもしばしば。そのたびに、この伝統ある小さな飲み物について、テキーラバーとしてどう扱うべきか、考えあぐねていたのだ。
そんな逡巡を経て、2020年になってから、ようやく、希望する方へのみ「自家製サングリータ」の提供を始めるようになった。その心境の変化はというと、サングリータは「チェイサー」ではなく「飲むおつまみ」という位置づけに変えたこと。そもそも辛味や酸味、トマトの旨みはテキーラのアテとしては定番の組み合わせなので、相性は抜群。熟成のない若いテキーラや、辛みや苦みのしっかりしたテキーラに合わせて飲むと、テキーラの持つ甘さがグッと引き出されて、とても楽しい。チェイサーとしては、別にミネラルウォーターをお出しするようにしている。
サングリータに興味を持たれた方は、メキシコ料理屋さんや、テキーラ・マエストロのいるバーでお願いすれば、きっと味わうことができるはず。
ちなみに、サングリータと同じ語源をもつ「サングリア」は赤ワインにフルーツなどを漬けこんだカクテル。間違えがちなのでご注意を!