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コラムバーコラムアジアにおけるBar文化の...

アジアにおけるBar文化の隆盛と世界から見た日本のBar文化

近年Bar文化が世界各国で盛り上がりを見せている。

有り難くも筆者もその流れに乗じて、海外でのBarイベント等のお話しを頂き、2019年は数えてみたら18回海外へ渡航していた。そこで見てきたもの、感じたものを書きたい。

<イタリアでのセミナー>
イタリアでは銀座のBARテンダーの上田さんのハードシェイク理論が神格化されている。

アジアにおけるBarカルチャーの隆盛

とりわけ、ここ数年アジアにおけるBarカルチャーが隆盛を極めている。ただ、まだ10年は経過していない。シンガポールや香港あたりから端を発し、それから後に続くように中国本土、バンコク、クアラルンプール、ジャカルタ、マニラ、そして今ではベトナム、カンボジア、ミャンマー、インド各メイン都市に新進気鋭の新しいBarがこぞって誕生している。

ご存知のとおり、ここ10年のアジア圏における経済成長率、発展を鑑みれば、そこから付属してくるものは嗜好品文化の流入と向上。中間上位層の母数が増えれば、Barが増えるのは至極当然の流れ。チャンスを求め、アジア各国に拠点を移す西洋のバーテンダー、投資目的でBarを開業する人々、西洋で研鑽を積んでアジアの自国へ戻りBarを開業する者、はたまた自国で経験を積み、投資家を集めて開業する者……そう、まさにアジア圏の各国はBarに置き換えた三国志を想起させる群雄割拠の時代!

若い世代が牽引するアジアのバーテンダー

この『群雄割拠の時代』という言葉を拝借した理由は、アジア圏全体におけるBar文化の歴史が実は長くはないからだ。誤解を招くといけないので補足するが、全くなかったわけではない。ただ、その証拠にアジア圏のその国を代表するリーダーのようなバーテンダーは皆若い。36歳の私と同世代が多く、その上の年代の現役バーテンダーはなかなかアジアでは出会わない。若い世代が牽引しているのだ。

日本と違い、バーテンダー歴40年、50年、60年選手に会うことはないだろう。Barのお客様の層も若い。20代、30代が中心となる。日本とは真逆だ。これは良い意味である。アジア圏のBarはお客様層の若さとバーテンダーの若さとが相まって新しい時代を創り上げており、とてもエネルギッシュでエキサイティングだ。とても楽しい。行けばわかる。

世界から見た日本のBarカルチャー

日本はどうだろうか。筆者から見て世界的Barカルチャーが盛り上がる中、大きくは変わっていない。これは悪い意味じゃない。日本にはBarの歴史が昔からあったから。

歴史があるから伝統に固執する人も多くいる。その固執が近年目覚ましく変わる飲料文化において流されない者が多いが故、幸か不幸か日本のBar文化はある種、他国にはない固有のものとなり得ていると感じる。それをガラパコス的と捉える者もいるが……それも個性である。SNSが発達したいま、世界の流行りを皆が皆、人差し指のスマホで捉えていたら世界の飲料文化は平坦化で面白くもないだろう。

故に、日本のBarカルチャーは一種独特として海外からも注目を集めている。誇って良いと思う。

ではどんな風に日本は捉えられているのか?

色々な海外の料飲媒体が日本のBarを紹介しているが、何と言っても漫画『バーテンダー』の影響が特に強い。カザフスタンのアルマトイにてBenFiddichのセミナーを開催した時も、 カザフスタンのバーテンダーは皆、漫画『バーテンダー』が大好きだった。そして日本に行ったことがないけど、日本のBAR文化を熟知していたりする。

カザフスタンでのBenFiddichセミナー
みんな日本のBar文化に興味を持っていて、みんな漫画バーテンダーの愛読者。

漫画『バーテンダー』は銀座の世界観が中心なので、影響を受けた海外のバーテンダーはいわゆる銀座の世界観を持っているのだ。

筆者がバーテンダーを始めた16年前と比べると、SNSの発達によって遠い海外が近くなった。人差し指で情報がとれる。情報の加速化だ。その影響がアジアのBar文化の隆盛を急スピードに進めている。数年後が楽しみである。

この記事を書いた人

鹿山 博康
鹿山 博康https://ameblo.jp/kayama0927/
1983年生まれ。20歳の時にバーテンダーを志す。2013年7月独立し、アブサン・ジン など薬草酒を中心としたバー、Bar BenFiddichを開業する。自身の畑を外秩父の麓・ときがわ町に所有し、そこで採取したボタニカルをカクテルに使う。2015年ボタニスト・ジン・フォリッジ・カクテルコンペティション 優勝。2016年『drink nternational』より、「AsiaBest Bar 50」にて21位に選出される。
鹿山 博康
鹿山 博康https://ameblo.jp/kayama0927/
1983年生まれ。20歳の時にバーテンダーを志す。2013年7月独立し、アブサン・ジン など薬草酒を中心としたバー、Bar BenFiddichを開業する。自身の畑を外秩父の麓・ときがわ町に所有し、そこで採取したボタニカルをカクテルに使う。2015年ボタニスト・ジン・フォリッジ・カクテルコンペティション 優勝。2016年『drink nternational』より、「AsiaBest Bar 50」にて21位に選出される。