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ベンロマック10年&15年 ラベルチェンジ後の変化を探る:Re-オフィシャルスタンダードテイスティング Vol.7

近年、ウイスキー愛好家の間で評価急上昇中の蒸留所、ベンロマック。そのオフィシャルラインナップが先日大幅なラベルチェンジを行い、更なる注目を集めています。

ベンロマック蒸留所の創業は1898年と1世紀以上を遡りますが、市場で認知されるようになってきたのは、ボトラーズ業界最大手のGordon & Macphail社の傘下となり、シングルモルトのリリースが強化された2000年代以降のこと。特にスタンダードリリースの10年が登場したのが2009年ということもあり、歴史に反して新鋭の蒸留所という印象すらあります。

左から10年新ラベル、15年新ラベル。写真右のボトルは旧ラベルとなる2019年流通の10年。新ラベルのデザインは、1990年代に流通していた初期のオフィシャルボトルを連想させるクラシックな要素を含んでいるようにも感じられる。

今回のピックアップは、そのオフィシャル10年。同蒸留所のハウススタイルは、旧ラベルの「The Classic Speyside Single Malt」表記にあるように、ピートレベル10PPM 程度のスモーキーな酒質で、1960年代以前に主流だった古典的なスコッチモルトを目指したものです。

樽構成はシェリー樽とバーボン樽、そして熟成した原酒をオロロソシェリー樽でフィニッシュ。この際、原酒の一部を次のロットに混ぜるソレラ方式が用いられ、品質の安定と熟成感を増す工夫もあります。そのため、香りはしっかりとスモーキーながら、シェリー系の樽由来のねっとりとしたフレーバーに、麦芽風味とピートスモークが余韻にかけて広がってくる。ライトでフルーティーなタイプが主流の近年のスペイサイドモルトには見られない、個性的なキャラクターが特徴にもなっています。

ベンロマック10年新ラベル(左)、旧ラベル(右)の色合いの違い。旧ラベルのほうが微かに濃いように見える。その違いは香味の樽感の差に表れているのかもしれない。

さて、冒頭で触れたように、そのベンロマックのオフィシャルリリースが大幅なラベルチェンジを行い、日本市場の流通も新ラベルに置き換わりつつあります。

比較してみると、新旧とも方向性は同系統と言えますが、新ラベルの10年はシェリー感が若干ドライになり、その分ピーティーなフレーバーが際立っているように感じます。上位グレードの15年は熟成した原酒由来のフルーティーさが感じられ、多彩な香味構成が魅力的ですが、新ラベルの2本に共通するのが燃え尽きたマッチのような焦げ感で、使われている原酒や樽の系統に多少変化があったことも伺えます。

この点は飲み手の感じ方によって、評価が分かれるかもしれません。

ベンロマックはオフィシャルスタンダードリリースの発表後、ラベルチェンジだけでなくロット違いでも徐々に香味を変化させ、完成度を高めてきたとする評価があります。

ともすれば、今回のラベルチェンジはゴールではなく、新しい世代の始まりと言えるもの。この香味がどのように成長していくのか、楽しんでいければと思います。

この記事を書いた人

くりりん
くりりんhttp://whiskywarehouse.blog.jp/
1984年生まれ、東京都出身。22歳の頃にウイスキーに惹かれ、以来琥珀の世界の住人となる。2015年、ウイスキーレビューを主としたブログ「くりりんのウイスキー置場」を開設、レビュー数1500本、月間約30万PV の媒体に成長。現在も日々レビューを更新する傍ら、ニューリリースやカスクサンプルの評価に関わることも。
くりりん
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1984年生まれ、東京都出身。22歳の頃にウイスキーに惹かれ、以来琥珀の世界の住人となる。2015年、ウイスキーレビューを主としたブログ「くりりんのウイスキー置場」を開設、レビュー数1500本、月間約30万PV の媒体に成長。現在も日々レビューを更新する傍ら、ニューリリースやカスクサンプルの評価に関わることも。