『禁制前のアブサン』という言葉を耳にしたことがあると思う。基本的に、フランスでアブサンが製造禁止になった1915年以前のアブサンのことを指す。世界中に点在するアブサンコレクターの間では禁制前のアブサンのロマンを含め、当時実在した蒸留所やブランド、所在地など情報を共有している。私も含め、ネット上で当時に想いを馳せながら、お互いに会話に花を咲かせる。
では実際、味わいはどうなのか?
100年以上の月日を経たアブサンはとてもまろやかだ。もちろんある程度の年月を経ているので、アルコールは抜けることがあるだろう。ただ、その当時のボトルに詰めた段階で70度前後あるので、多少気化してしまったとしても50度以上はあるだろうから、ストレートで飲むのに丁度いい按配なのだ。色合いも琥珀色になっている。度数が下がると、ハーブで色付けした緑色が色素保持出来なくなり褐色化するのだ。
そして、アブサンの主原料であるニガヨモギが強く使われている場合が多い。ニガヨモギが多く使われているアブサンはとてもハーバルで、アニスの味わいがとても良質なケースが多い。良質なアニスはチョコレートのニュアンスがある。良質なニガヨモギとアニス・・・・・・僕はいつもこう感じる、『草チョコレートの味わいだ』。 もちろん現代もたくさん素晴らしいアブサンはある。しかし、ベルエポック期、今から100年前の琥珀色になったアブサンの味わいとロマンは歴史の賜物といえるだろう。