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アマーロとは何か?その役割と起源を辿る

Barに通う方であればアマーロ(Amaro)を一度は聞いたことがあるだろう。
もし聞いたことがなくても、カンパリもアマーロの一種だと言えばイメージがわくかもしれない。

例えばフェルネットブランカを代表格に、モンテネグロ、アペロール、アヴェルナ、etc

BenFiddichにあるアマーロ

アマーロの意味はイタリア語で【苦い】。
いわゆる【苦味】を帯びたリキュールの総称だ。
無味無臭の中性アルコールスピリッツに、様々な香味成分を含む草根木皮を浸漬、又は蒸留し糖分を含ませたリキュールだ。日本でいうところの養命酒のような存在の嗜好品である。

アマーロの役割

この【苦味】を主軸とした薬草酒であるアマーロは、イタリアで
食事前の食欲を刺激する(食前酒)
食事後の消化を容易にする(食後酒)

として長きにわたり愛飲されてきた。

イタリアでも十数年前まではおじいちゃん、おばあちゃんが飲む古臭いお酒で、衰退産業であった。
それが2000年代以降における世界的なカクテルカルチャーの復興により、特にアメリカでアマーロが大流行。
その後全世界へ。

このアマーロの【苦味】がベーススピリッツ、例えばウィスキーやジンなどを引き立てる縁の下の力持ち的な存在となり、現代に至っては確固たる地位を得た。
その後、逆輸入型となりイタリアでも需要が増え、アマーロのクラフト的なリキュール製造場が増えている。

イタリア、フィレンツェから程近い場所にあるNunquamアマーロ製造場。草根木皮をアルコールに浸漬させている。

では、そもそもこの様々な草根木皮を浸漬した苦いリキュールはどこからやってきて、どのような生い立ちで、現代において嗜好品として嗜まれているのか?

『良薬口に苦し』という言葉が日本にあるように、アマーロの生い立ちは薬としての目的から生まれている。

アマーロの起源と歴史

アマーロの原型を辿れば、全てが薬。
古代ギリシャにおける医学の父・ヒポクラテスの時代まで遡れる。
それはワインに様々な草根木皮を浸漬し、何かしらの効能を求めた薬である。
そこから時代が下り、アラブ人によるイスラム世界での蒸留技術が合わさり、さらにその後のヨーロッパにおける錬金術により飛躍的進歩を遂げる。

アマーロの素材に不可欠なニガヨモギの一種

ただ、僕らが嗜好品として嗜んでいるアマーロという固有名詞の嗜好品商材が一般化するのは19世紀中期以降の話。

筆者が所有するPierre Duplais氏著『酒類製造マニュアル』(1855年)には、アマーロの記載は一切見受けられない。
1855年の時点では、まだアマーロという固有名詞の商材は存在していないということだ。

ではアマーロという商材名は、いつどこから生まれたのだろう?
紀元前古代ギリシャのヒポクラテスの時代から、その後のアラブ人によるイスラム世界の先端技術が流入する事により生まれた医療目的の薬。それは徐々に薬ではあるが美味しく飲ませようとする嗜好品にも似た、身体にも良く、味も美味しいという一石二鳥のものへと進化してゆく。
その道のりは中世ヨーロッパの修道士に引き継がれる。
筆者の中での見解として、嗜好品としてのアマーロの原型はここから始まる。

①12世紀以降〜

アマーロの原型は、修道会の十八番である薬を目的とした研究の賜物。修道院が研究を重ね、900年以上の時を経た。それは現代に通ずるリキュール同様、身体に良いだけでなく、美味しく飲ませるための試行錯誤を積み重ねたことがアマーロの起点になったと考える。

②15世紀以降〜

大航海時代の始まり。
著しく世界の物流事情が進歩したことにより、様々な国、地域のものが手に入る時代。これによりアマーロ、いわゆるリキュールでの素材の組み合わせの幅が広くなり、修道士による秘薬のレシピがブラッシュアップされてゆく。

③18世紀後期以降〜

フランス革命やナポレオンの台頭、ヨーロッパにおける当時の啓蒙思想の発達による反修道会的風潮がフランスで起こり、修道会は解散させられる。職を失った修道士達は高学歴な為、今さらガテン系や農民になどなるわけもなく、当時修道会の専売特許であった秘薬の知識を糧に民間にて生きる活路を見出す。

④産業革命期〜

フランスの混乱期より、修道士から得た知識を元に多くの起業家が誕生し、フランスからイタリアへ流入。産業革命期という時代も重なり、流通の発や生活の向上が著しく、一般庶民の間でも嗜好品文化が発達し需要が向上する。
この時代より、修道士からレシピを享受し、工業的にアマ―ロを生産する起業家達が台頭した。

⑤19世紀初頭〜中期

修道会から企業化し、飲みやすく洗練された薬草酒はイタリア一般民衆によって嗜好品として定着した。それは、
食事前の食欲を刺激する(食前酒)
食事後の消化を容易にする(食後酒)

この苦味酒文化が、薬である滋養強壮から嗜好品へと変貌してゆき、いつしかそれを総称して『アマーロ(Amaro)』『苦い』と呼ばれるようになった。

これが現代の僕らが飲んでいるアマーロという呼称の生い立ちである。

イタリア人のバーテンダーとともに、Nunquam製造場にて

日本では、まだまだ浸透していない苦味の嗜好品文化。日本においては食中酒としての酒類を嗜む文化であった。

これを機に、
食事前の食欲を刺激する(食前酒)
食事後の消化を容易にする(食後酒)

という苦味の嗜好品の楽しみ方を、是非体験して欲しい。

この記事を書いた人

鹿山 博康
鹿山 博康https://ameblo.jp/kayama0927/
1983年生まれ。20歳の時にバーテンダーを志す。2013年7月独立し、アブサン・ジン など薬草酒を中心としたバー、Bar BenFiddichを開業する。自身の畑を外秩父の麓・ときがわ町に所有し、そこで採取したボタニカルをカクテルに使う。2015年ボタニスト・ジン・フォリッジ・カクテルコンペティション 優勝。2016年『drink nternational』より、「AsiaBest Bar 50」にて21位に選出される。
鹿山 博康
鹿山 博康https://ameblo.jp/kayama0927/
1983年生まれ。20歳の時にバーテンダーを志す。2013年7月独立し、アブサン・ジン など薬草酒を中心としたバー、Bar BenFiddichを開業する。自身の畑を外秩父の麓・ときがわ町に所有し、そこで採取したボタニカルをカクテルに使う。2015年ボタニスト・ジン・フォリッジ・カクテルコンペティション 優勝。2016年『drink nternational』より、「AsiaBest Bar 50」にて21位に選出される。