運営:酒育の会

LIQULはより良いお酒ライフをサポートする団体「酒育の会」のWEBメディアです

コラムウイスキーコラム母なる大地スコットランド・...

母なる大地スコットランド・スペイサイドを往く:スペイサイドモルトの魅力

モルトウイスキーの「モルト」とは何?

スコッチウイスキーや、それを手本とした日本のウイスキーは大きく次の3つに分けることができます。

モルトウイスキー     

大麦麦芽100%で造られ、しっかりとした個性のあるウイスキー

グレーンウイスキー    

小麦やトウモロコシなどを主原料として造られ、すっきり軽やかなウイスキー

ブレンデッドウイスキー  

上の2種類のウイスキーをブレンドした、バランスよく飲みやすいウイスキー


モルトとは、大麦麦芽のことです。大麦barleyを発芽・乾燥させたものが大麦麦芽maltで、これを原料として100%使用して造ったウイスキーがモルトウイスキーです。

また「シングルモルト」という言葉もよく聞きますね。

「シングル」とは、「ひとつの蒸溜所から造られた」という意味です。これに対して、複数の蒸溜所のモルトウイスキーを混ぜたものはブレンデッドモルト(以前はヴァッテッドモルト)といいます。

また「カスク」という言葉もよく使われますが、もともとは熟成で使う「樽」のことです。つまり「シングルカスク」とは、ひとつの樽のみを瓶詰したウイスキーのことを言います。

また「カスク・ストレングス」という場合は、樽出しのままのアルコール度数で瓶詰めされたウイスキーのことを指します。ちょっと紛らわしいですが、これを略して単にカスクという場合もあります。

スコットランド蒸溜所の分類

スコットランドには、現在100以上の蒸溜所があります。これらを地域によって6つのカテゴリーに分けるのが一般的です。これは香味の特徴による分類というわけではありませんが、その区分ごとに香味の傾向は多少みられます。

※クリックで拡大

スペイサイド

華やかでバランスが良いウイスキーが多い。

グレンリベット・マッカラン・グレンファークラスなど。

ハイランド

エリアが広いため共通した特徴は少ないが、全体的に穏やかなウイスキーが多い。

グレンモーレンジ・オーバン・アバフェルディ・ダルモアなど。

ローランド

穏やかでやや穀物様の香味のウイスキーが多い。

オーヘントッシャン・グレンキンチー・アイルサベイなど。

キャンベルタウン

ややクラシカルな個性のウイスキーが多い。

スプリングバンク・グレンスコシア・グレンガイルなど。

アイラ

スモーキーや消毒薬のような個性的な香味のものが多い。

ボウモア・アードベック・ブナハーブン・キルホーマンなど。

アイランズ

南北に長く共通した特徴は少ないが、個性豊かなものが多い。

ハイランドパーク・タリスカー・アイルオブアランなど。

スペイサイドモルトの特徴は?

ハイランド地方東部を流れるスペイ川の流域で造られるモルトウイスキーをスペイサイドモルトと言います。このエリアには約50の蒸溜所が集中しており、スコッチウイスキーのメッカと言えるエリアです。

車を走らせていると、次から次へと蒸溜所が現れるので気を許せません。まさに「スコッチの母なる大地」といった印象です。

この地域の蒸溜所には「グレンGlen」で始まるところが多いですが、これはゲール語で「谷」を表す言葉で、まさに川の流れる谷間でウイスキーが造られていることを示していると言えます。

スペイサイドの代表的な地区と蒸溜所

スペイサイドの代表的な地区と蒸溜所をまとめてみましょう。

エルギン地区:リンクウッド、グレンマレイ、ミルトンダフなど

ローゼス地区:グレングラント、グレンロセスなど

ダフタウン地区:グレンフィディック、モートラック、バルヴェニーなど

スペイ川地区:マッカラン、アベラワー、ダルユーインなど

キース地区:ストラスアイラ、オルトモアなど

※クリックで拡大


  1. ベンローマックBENROMACH

2. ダラスドゥー DALLAS DHU

3. ローズアイル ROSEISLE

4. グレンバーギ GLENBURGIE

5. ミルトンダフ MILTONDUFF

6. グレンマレイ GLEN MORAY

7. リンクウッド LINKWOOD

8. グレンロッシー GLENLOSSIE

9. ベンリアック BENRIACH

10. マノックモア MANNOCHMORE

11. マッカラン MACALLAN

12. グレンエルギン GLEN ELGIN

13. コールバーン COLEBURN

14. グレングラント GLEN GRANT

15. スペイバーン SPEYBURN

16. キャパドニック CAPERDONICH

17. グレンロセス GLENROTHES

18. グレンスペイ GLENSPEY

19. クライゲラヒ CRAIGELLACHIE

20. オスロスク AUCHROISK

21. グレントファース GLENTAUCHERS

22. インチガワー INCHGOWER

23. オルトモーア AULTMORE

24. ストラスミル STRATHMILL

25. ストラスアイラ STRATHISLA

26. グレンキース GLENKEITH

27. コンバルモア CONVALMORE

28. バルヴィニー BALVENIE

29. グレンフィディック GLENFIDDICH

30. グレンダラン GLENDULLAN

31. モートラック MORTLACH

32. マッカラン MACALLAN

33. グレンアラヒー GLENALLACHIE

34. アベラワー ABERLOUR

35. キニンヴィ KININVIE

36. アルタベーン ALLT-A-BHAINNE

37. ダフタウン DUFFTOWN

38. ピティヴェアック PITTYVAICH

39. ベンリネス BENRINNES

40. インペリアル IMPERIAL

41. ダルユーイン DAILUAINE

42. グレンファークラス GLENFARCLAS

43. カードゥ CARDHU

44. ノックドゥー KNOCKDHU

45. タムドゥー TAMDHU

46. クラガンモア CRAGGANMORE

47. トーモア TORMORE

48. バルミニック BALMENACH

49. トミントゥール TOMINTOUL

50. ザ・グレンリベット THE GLENLIVET

51. タムナヴーリン TAMNAVULIN

52. ブレイヴァル BRAEVAL

一度は訪ねてみたい!スペイサイドの代表的な蒸溜所

※頭の番号は上記地図上の場所を表します

50. ザ・グレンリベット The Glenlivet

所在地バリンダルロッホ、バンフ・シャー
所有社シーバス・ブラザーズ(ペルノ・リカール社)
創業年1824年
名前の意味静かな流れの川がある谷
ブレンデッドシーバスリーガル、ロイヤルサルートなど
年間生産量1050万リットル
特徴1824年、政府公認の第1号蒸溜所。
見学OK、カフェもGood! ちょっとしたミュージアムも。
蒸溜所限定ハンドフィルボトルもある。
輸入代理店ペルノ・リカール・ジャパン
WEBtheglenlivet.com

29. グレンフィディック Glenfiddich

所在地ダフタウン、バンフ・シャー
所有社ウィリアム・グラント&サンズ社
創業年1886年
名前の意味鹿の谷
ブレンデッドグランツ、モンキーショルダー
年間生産量1370万リットル
特徴現在も続く数少ない家族経営の蒸溜所。
生産量は多いが、手造り感のあるこだわった造りをしている。
見学・撮影OK、カフェやバーカウンターもありレアなウイスキーも楽しめる。
蒸溜所限定ハンドフィルボトルもあり、グッズも充実。
輸入代理店サントリー・スピリッツ
WEBglenfiddich.com

34. グレングラント Glen Grant

所在地ローゼス、バンフ・シャー
所有社カンパリ社
創業年1840年
名前の意味グラント家の谷
ブレンデッドシーバスリーガル、100パイパーズなど
年間生産量620万リットル
特徴イタリアでの人気No.1。
仕込にピート色の濃いグレングラント川(通称ブラックバーン)の水を使用。
蒸溜所の裏に素晴らしいガーデンがあり、散策に最適。
見学・撮影OK、年1回蒸溜所限定ボトルの販売も
輸入代理店アサヒビール
WEBglengrant.com

42. グレンファークラス Glenfarclas

所在地バリンダルロッホ、バンフ・シャー
所有社J&G・グラント社
創業年1836年
名前の意味緑の草原の谷
ブレンデッドトップ10など
年間生産量350万リットル
特徴現在も続く数少ない家族経営の蒸溜所。
ファミリーカスク・シリーズでは1952年からすべてのビンテージが揃う。
見学・撮影OK、蒸溜所限定ボトルもある。
輸入代理店ミリオン商事
WEBglenfarclas.co.uk

32. マッカラン Macallan

所在地クレイゲラヒー、マレイ・シャー
所有社エドリントン・グループ社
創業年1824年
名前の意味聖フィランの野原
ブレンデッドカティサーク、フェイマスグラウスなど
年間生産量1100万リットル
特徴ロンドン・ハロッズより「シングルモルトのロールスロイス」と絶賛。
2017年末完成の生産棟はスコッチ最大級になる予定。
見学OK、グッズが充実、マッカラン入りアイスが人気。
輸入代理店サントリー・スピリッツ
WEBthemacallan.com

25. ストラスアイラ Strathisla

所在地キース、バンフ・シャー
所有社シーバス・ブラザーズ
創業年1786年
名前の意味アイラ川が流れる広い谷間
ブレンデッドシーバスリーガル、ロイヤルサルートなど
年間生産量220万リットル
特徴ケルトの水の妖精ケルピーによって守られている「フォン・ブイエン(泡立つ泉)」の泉の水を仕込に使用。
コンパクトでかわいらしく、フォトジェニックな外観。
見学OK、蒸溜所限定ハンドフィルボトルもある。
輸入代理店ペルノ・リカール・ジャパン
WEBmaltwhiskydistilleries.com

34. アベラワー Aberlour

所在地アベラワー、バンフ・シャー
所有社シーバス・ブラザーズ(ペルノ・リカール社)
創業年1879年
名前の意味ラワー川の落合い
ブレンデッドハウスオブローズ、キングスランサムなど
年間生産量380万リットル
特徴フランス資本初の所有蒸溜所(1974年から)。
どことなく端々にフランスのエスプリが感じられる。
見学OK、かわいらしいショップにはグッズが充実。
蒸溜所限定ハンドフィルボトルが購入できるツアーもある。
輸入代理店ペルノ・リカール・ジャパン
WEBaberlour.com

1.ベンローマック Benromach

所在地フォレス、マレイ・シャー
所有社ゴードン&マクファイル社
創業年1898年
名前の意味ギザギザの(シャギーな)山
ブレンデッドスペイキャストなど
年間生産量70万リットル
特徴1950年代のスペイサイドモルトの香味を再現。
スペイサイドモルトとしては珍しくピートを感じる香味。
見学・撮影OK、ショップにはグッズが充実し、蒸溜所限定ボトルも。
輸入代理店ジャパン・インポート・システム
WEBbenromach.com

46. クラガンモア Cragganmore

所在地バリンダルロッホ、バンフ・シャー
所有社ディアジオ社
創業年1869年
名前の意味突き出た大岩のある丘
ブレンデッドオールドパー、ホワイトホースなど
年間生産量220万リットル
特徴ディアジオ・クラシックモルトシリーズのスペイサイド代表。
再留釜のネックが他ではあまりないT字シェイプ。
ゲートの飾りが印象的。
見学は4~10月。
輸入代理店MHDモエ・ヘネシー・ディアジオ
WEBmalts.com

28. バルヴェニー Balvenie

所在地ダフタウン、バンフ・シャー
所有社ウィリアム・グラント&サンズ社
創業年1892年
名前の意味山のふもとの集落
ブレンデッドグランツ、モンキーショルダーなど
年間生産量700万リットル
特徴グレンフィディックの姉妹蒸溜所。
現在もフロアモルティングを行っている。
見学2018年1月より1日2組各8名までOK。
蒸溜所限定ハンドフィルボトルが購入できるツアーもある。
輸入代理店サントリー・スピリッツ
WEBthebalvenie.com

WHISKY SHOP:Gordon & MacPhail

エルギン、サウスストリート58-60

エルギン市内の繁華街にあり、買い物に便利
WEBサイト

  • 1895年創業の老舗、愛称GM
  • ボトラーズとしてGMオリジナルのボトルを多数リリース・販売
  • スコットランド随一の品揃え・800種類を超えるウイスキー
  • 蒸溜所詰めボトルのほか、このショップ限定のボトルも多数
  • 1950年代など激レアボトルやオールドボトルも
  • グラスやマップなどのグッズ、お菓子やジャムなどのお土産も充実
  • 元々デリカテッセンなので、サンドイッチやハムなどの軽食も

HOTEL & BAR

お勧めのホテルはクレイゲラヒーの町にある2軒

Highlander Inn(ハイランダー・イン)

  • 本誌にも寄稿している皆川さんがオーナー(P. 参照)
  • 最高のフィッシュ&チップスのほか、美味しい料理が楽しめる
  • 地下のパブには、垂涎のボトルが並ぶ
  • ここでしか味わえないオリジナルのボトルも多数

Craigellachie Hotel of Speyside(クレイゲラヒー・ホテル)

  • 1893年に建てられたビクトリア朝の建物
  • 700ものウイスキーが並ぶQuaich Barは落ち着いてスタイリッシュ
  • パブCopper Dog Grillでは地元の食材を使った家庭料理が楽しめる
  • 朝食は、フルBFから、キッパー、パンケーキなど種類が豊富

スペイサイドモルトの香味の特徴は?

香味の特徴としては、全体的に香りが高く、穏やかで洗練された味わいのものが多いと言えます。香味ともにバランスがよく、まとまりのある印象です。

分類方法はいろいろとありますが、ここでは酒質の重さ・飲み口のボディー感と使用する樽のニュアンスで、チャートを作ってみました。

ご参考まで!

※クリックで拡大

この記事を書いた人

谷嶋 元宏
谷嶋 元宏https://shuiku.jp/
1966年京都府生まれ。早稲田大学理工学部在学中よりカクテルや日本酒、モルトウイスキーに興味を持ち、バーや酒屋、蒸留所などを巡る。化粧品メーカー研究員、高校教員を経て、東京・神楽坂にバー「Fingal」を開店。2016年、日本の洋酒文化・バーライフの普及・啓蒙を推進する「酒育の会」を設立、現在に至る。JSA日本ソムリエ協会認定ソムリエ。
谷嶋 元宏
谷嶋 元宏https://shuiku.jp/
1966年京都府生まれ。早稲田大学理工学部在学中よりカクテルや日本酒、モルトウイスキーに興味を持ち、バーや酒屋、蒸留所などを巡る。化粧品メーカー研究員、高校教員を経て、東京・神楽坂にバー「Fingal」を開店。2016年、日本の洋酒文化・バーライフの普及・啓蒙を推進する「酒育の会」を設立、現在に至る。JSA日本ソムリエ協会認定ソムリエ。