日本におけるマラスキーノ・リキュールといえば、カクテルに重きを置く。Barでは絶対に置いてあるイタリアの名産「ルクサルド・マラスキーノ・リキュール」(Girolamo Luxardo S.P.A蒸留所)。
しかし、ルクサルド家及びマラスキーノ・リキュールの歴史はイタリアではなくクロアチアが発祥。ダルマチア地方のザダル(ZADAR)の街だ。このダルマチア地方のオリジナルのチェリーが、マラスキーノ・リキュールの原料となる学名Prunus cerasus バラ科サクラ属サクラ亜属マラスカ種のチェリーだ。これを破砕し発酵、蒸留し、糖分を加えたリキュールがマラスキーノ・リキュールとなる。
クロアチアにあるザダルの街は、ヴェネツィア共和国の時代から歴史的に多くのイタリア人が住んでいた。第一次世界大戦以降、イタリアは戦勝国としてザダルを地中海を挟んでの飛び地領土としていたが、第二次世界大戦にて敗戦国となるとザダルの街は旧ユーゴスラビアを建国したチトー将軍率いるパルチザンにより占領(奪還)された。ルクサルド家も例に漏れずイタリア本土へ亡命する。ルクサルド家以外にも多くのマラスキーノ・リキュールの蒸留所はイタリア人が経営していた為に、イタリアへと本拠地を移したのだ。
第二次世界大戦後、イタリア人が去ったザダルでは現地の人達によってマラスキーノ・リキュールの蒸留所が再建。日本には正規輸入されてないが、マラスカ社のマラスキーノ・リキュールがある。同蒸留所はルクサルド家がザダルの街で興したルクサルド・マラスキーノ・リキュールの跡地に建てられている。
だから歴史は面白い。