以前も書きましたが、ときおり富士山方面の山荘に仲間と集まり、夜中に火を囲んで酒を飲む「火飲み」という趣向があります。直近の開催は10月末。標高1000メートルの木立の中は、既に晩秋の冷気に包まれていました。
「火飲み」のメンバーに、女性ハンターのKさんがいます。Kさんは狩猟免許をとり、猟期になると北海道はじめ各地の山に入り、獣を仕留めて来る猛者です。そのKさんがお仲間のハンターから頂いたというヒグマの肉を持って登場。
「ヒ、ヒグマ?!」「えぇ~」「なにそれ!」 騒ぐ仲間たち。
そう、ヒグマの肉。おりしも、私が一年ほどかけて作り上げたピザ釜がデビューしたタイミングでしたので、ヒグマの肉もその石釜で焼いてみることにしました。獣肉は寄生虫に注意が必要ですが、遠赤外線でしっかりと焼いて。
焼きあがった肉は、熊脂がジュウジュウとしみ出し、えもいわれぬ味。夜中に石釜の赤い炎を見ながら、仲間で食らいつくヒグマの肉。そんな野趣あふれる場にフィットする酒といえば……私の頭にはアードベッグしか浮かびませんでした。 燃える炎、煙の匂い、初めて食べる獣の肉。それらのすべてを包み込んで、口の中から鼻腔に抜けるアードベッグの香り。相手にするものが野生にあふれるほど、アードベッグもまた真価を発揮するのだと実感。野外活動に手放せない一本ですね。