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お酒のある風景

今まで何度、乾杯しただろう。家族と、友人と、仕事仲間と。たとえ初対面のひととでも、グラスを軽く合わせて喜びとともにお酒を流し込めば少し心が通い合う。その先は、酔いがぎこちなさをほぐしてくれる。

加えて日本には、差しつ差されつ、のお酌文化がある。酌をするのは下っ端、上席から勧められた酒は断れないが、窮屈なことばかりではない。議論が過熱して険悪な雰囲気になった時には、「まあまあ」とお酌で一呼吸……という便利な使い方もできる。

私自身は、お酌は苦手だ。困るのが瓶ビールのお酌攻め。一口飲むと「さあどうぞ」とつぎ足され、ビールはいつまでも減らず、まずくなっていく。つぎ足していいのは焼き鳥屋のタレだけ! なんて言えないしなあ。

立食パーティも困りものだ。乾杯! の後グラスを置いて拍手して、さて、と見回すとどれが自分のだか分からない。名刺交換の間、グラスをテーブルに置いてひとしきりおしゃべりしているうちに、グラスが下げられたりする。

ずらりと並ぶご馳走も悩みのタネ。食べ物を盛った皿とグラスで両手がふさがるし、せっかくの料理もおしゃべりの間に冷めてしまう。食べる、飲む、しゃべる、どれか一つに集中できないから、終わった時にはなんだか不完全燃焼。

その点、西洋は合理的だ。カクテルパーティというと、基本的に食事は出ない。出席者は軽く腹ごしらえして参加する。酒はつぎ足さず、1杯ずつ飲みきる。グラス片手に会話を楽しみ、大皿に載せられたピンチョス(串に刺した一口大の軽食)が回ってくればそれをつまむ。スマートである。大量の残飯を廃棄する罪悪感とも無縁だ。 座敷に座って差しつ差されつ……の日本式を立食パーティに持ち込むのは、無理があると思うのだがどうだろう。

この記事を書いた人

檀稚希(だん・わかき)
檀稚希(だん・わかき)
1966年福岡県生まれ。東京在住。ライター。趣味は読書、山歩き、温泉、居酒屋。独り呑 みは得意なほうで、自称「日本手酌連盟」会長。ありあわせの材料で何か作って家で飲む のも好き。
檀稚希(だん・わかき)
檀稚希(だん・わかき)
1966年福岡県生まれ。東京在住。ライター。趣味は読書、山歩き、温泉、居酒屋。独り呑 みは得意なほうで、自称「日本手酌連盟」会長。ありあわせの材料で何か作って家で飲む のも好き。