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お酒のある風景

酒は酒でも、今回は甘酒のお話。

先日、ホームパーティに招いた友人が大きな箱を抱えてきた。開けてみたらヨーグルトメーカーだった。

「毎日毎日、呑んだり食べたり食べなかったり、忙しそうだから、腸活ぐらいしなさい」

その友人は、ヨーグルトの素になるケフィア菌と、乾燥米麹もプレゼントしてくれた。

プラグを差し込み、スイッチを入れると温度や時間が設定できる。発酵に適した温度で保温できる仕組みだ。レシピ本を見ると、ヨーグルトや甘酒が簡単に作れるとある。次の週末、甘酒に挑戦してみた。

暖かいご飯にお湯を加えておかゆ状にする。55度ぐらいまで冷ましたところへ、米麹を振り入れてよく混ぜる。熱湯消毒したガラス瓶に移して、55度で15時間ほど保温すると甘酒になるという。

55度というのは、麹菌が活動する最適な温度らしい。60度を超えると死んでしまうから甘酒にはならない、と注意書きがあるが、温度計なんて家にない。おっかなびっくり、指を体温計代わりにした。

何しろ初めての甘酒作りだ。どうなっているのか気になって仕方がない。とはいえ、たびたび開けるのも良くないだろう。10時間ぐらい経った真夜中、しびれを切らして瓶を開けてみた。

あれ? まだごはん粒が固形のままだ。そこにまぶした麹菌も10時間前と変わらない。何が足りないのだろう。しばらく考えて、ふと思った。

「麹菌が機嫌よく働いてくれる環境を整えればいいのだ」

そう思って眺めてみると、もう少し水分があった方がよさそうだ。誰だって暖かいお風呂に入ればリラックスする。そしておなかも減るだろう。

水を足し、「たくさん食べてねー」と優しく声をかけつつスプーンで混ぜる。少し多めに時間を設定して寝た。

早朝、タイマー終了の電子音で目が覚めた。瓶を開けると、甘い香りが部屋に広がった。ふわふわとした真っ白な甘酒ができている。さっそくお湯で割って飲んだ。体が内側から温まる感じがいい。ビタミンやブドウ糖をたっぷり含み、疲労回復にもいい。「飲む点滴」とはよく言ったものだ。麹菌さんありがとう。

ところで、甘酒は酒なのか。

米と米麹が出会うと、麹菌が米のデンプンを分解して糖に変える(糖化)。これが甘酒だ。ここに酵母という微生物を加えると、酵母が糖を食べてアルコールを出す(発酵)。これが酒である。つまり、私が作った甘酒はアルコール分ゼロで甘さが特徴の「プレ酒」というわけだ。

ようこそ麹菌。ひとり暮らしの台所で人知れず働いて、おいしい甘酒を作ってくれる憎いやつ。この冬の楽しみが一つ増えた。

この記事を書いた人

檀稚希(だん・わかき)
檀稚希(だん・わかき)
1966年福岡県生まれ。東京在住。ライター。趣味は読書、山歩き、温泉、居酒屋。独り呑 みは得意なほうで、自称「日本手酌連盟」会長。ありあわせの材料で何か作って家で飲む のも好き。
檀稚希(だん・わかき)
檀稚希(だん・わかき)
1966年福岡県生まれ。東京在住。ライター。趣味は読書、山歩き、温泉、居酒屋。独り呑 みは得意なほうで、自称「日本手酌連盟」会長。ありあわせの材料で何か作って家で飲む のも好き。