ふと、タスマニアに来ています。タスマニアン・ウィスキーのことを知りたくて。
今日は、BELGROVEとSULLIVAN’S COVEの2つの蒸留所を訪問して、インタビューをさせて頂きました。交わす言葉の中に、心にしみるメッセージがありました。
「事業として成長させたいが、規模は追わない」
「地元の原料にこだわり、手づくりにこだわる」
「手触り感を維持して、楽しく取り組んでいく」
ご多聞に漏れず、酒造業の世界でも、業務の標準化や機械化による生産性向上は避けて通れない課題です。そうした中で、「手づくりの意味」とは何なのでしょうか。手づくりにこだわれば、当然生産量は落ちます。安定供給は難しく、経営的にも苦しさが続くでしょう。
一方、その不安定さゆえに生じる希少性には、機械では代替できないアナログな価値が潜んでいます。「同じものは二度と出来ない」という一期一会の感慨。そして、作り手側にも現場の面白味や楽しさがあります。そこにある、人間の姿。
人間は、飲み手であれ作り手であれ、そうしたアナログな要素を心の中に持っていたいものです。あらゆる物事のデジタル化が進む時代だからこそ、逆に、手づくりで生み出されるウィスキーの存在意義が高まるのかもしれませんね。
ところで・・・。
手づくりの世界が成り立つためには、その価値に快くお金を払う飲み手の存在も欠かせませんね。茶道に客の作法あり、酒道に飲み手の矜持あり。我々飲み手も、一生懸命働いて稼いで、手づくりの世界を支えようではありませんか。 タスマニアの夜は更けゆく。