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ジンとカブト釜蒸留器

ジンの蒸留には、通常ハイブリッド式蒸留器を含むポットスティルが用いられる。しかし、日本で明治時代まで用いていたカブト釜蒸留器を、現在でも用いている蒸留所がある。それが岐阜県郡上八幡に蒸留所を構える辰巳蒸留所だ。そのスピリッツの質の高さや、辰巳蒸留所のディスティラーである辰巳祥平さんがたった一人で蒸留を行う点が注目されているが、原酒の一部をカブト釜蒸留器で蒸留している点も大きな特徴だろう。

辰巳蒸留所のカブト釜蒸留器

カブト釜蒸留とは、杉でできた樽にもろみやベーススピリッツを注ぎ、蒸気などで加熱する蒸留法である。樽の上に逆円錐型のカブトと呼ばれる蓋を乗せ、その上に水を張る。加熱されて気化したアルコールは、蓋で冷やされて液体に戻る。その液体は蓋を伝って逆円錐の先端から垂れ、その直下に置かれた受け皿で回収する。蒸留器に杉を用いているため、やわらかい、ほんのりと杉の香りがする蒸留酒ができるのが特徴だ。しかし、蒸留器の容量が200L程度と小さく1回の蒸留で得られる収量が少ないため、大きな手間がかかる。それを乗り越えることで辰巳蒸留所の、自然を感じるやさしくハーバルなジンが出来上がっている。

カブトを逆向きに設置した様子。 蒸留はこの形で行われる。
カブト釜蒸留器内部の受け皿

辰巳蒸留所のカブト釜蒸留器は、辰巳さんが修行をしていた鹿児島県の大石酒造から譲り受けたものだ。カブト釜蒸留器で焼酎を蒸留する場合、通常の蒸留器に比べて通常の2倍の時間がかかるためさらなる手間が伴う。しかし、大石酒造は、施行錯誤を経て一度すたれていたカブト釜蒸留器を現代に蘇らせ、現在となっては数少ないカブト釜蒸留器を用いた焼酎「カブト釜鶴見」、「カブト釜莫祢氏」を蒸留している。また、辰巳蒸留所のジンのベースとなるスピリッツは福岡県の酒蔵「杜の蔵」が作る粕取焼酎「吟香露」だが、この酒蔵もカブト釜蒸留器を持つ。吟香露の製造にはカブト釜蒸留器は用いられないものの、杜の蔵はカブト釜蒸留器で粕取焼酎「弥久」を蒸留しており、ここもカブト釜蒸留器を用いる数少ない酒造の一つだ。 吟香露を蒸留した辰巳蒸留所のジンは海外でも高い評価を受け、昨年からイタリアなど、西洋にも旅立っている。この3社の日本の伝統への尊敬、努力が新しいジンとして実を結んだ。日本伝統のカブト釜蒸留器は現代に蘇り、洋酒に新たな息吹を吹き込んで日本の蒸留を海外へ知らしめようとしている。

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この記事を書いた人

ろっき
ろっき
1991年東京都生まれ。ジン研究家、医師。千葉大学医学部卒業。大学在学中からジンに傾倒し、サークル「アセトアルデヒド症候群」を主宰。ジンを総説する書籍がない当時、2013年から同人誌「もっとジンをおいしく飲む本」シリーズを自費出版。日本初の「ジン本」として各地のバーテンダーなどプロからも高い評価を受けた。医師として勤務する傍ら、非定期的なジンテイスティングイベント開催やイベントへの出演などジンの普及に努めている。著書「All about Gin ジンのすべて」(旭屋出版)。
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1991年東京都生まれ。ジン研究家、医師。千葉大学医学部卒業。大学在学中からジンに傾倒し、サークル「アセトアルデヒド症候群」を主宰。ジンを総説する書籍がない当時、2013年から同人誌「もっとジンをおいしく飲む本」シリーズを自費出版。日本初の「ジン本」として各地のバーテンダーなどプロからも高い評価を受けた。医師として勤務する傍ら、非定期的なジンテイスティングイベント開催やイベントへの出演などジンの普及に努めている。著書「All about Gin ジンのすべて」(旭屋出版)。