日本でクラフトジンブームが始まって数年。ジンの製造法には大きく変わった点がある。その中で、特に日本のジンの特徴について考えてみたい。
伝統的なドライジンとは?
そもそも、伝統的なドライジンは、度数が高く無味無臭の「ニュートラルスピリッツ」を作り、ジュニパーベリーなどのボタニカルとともに再蒸留することで完成する。
ボタニカルの多様化がジンの香りの多様化をもたらしたが、それ以外に、特に日本ではジンを蒸留するベースが多様化している。海外でもブドウをベースとした「G’ Vine」、リンゴをベースとした「Le gin」など珍しい原料が使用されたジンがある。
国産クラフトジンの代表格「季の美」は「米」ベースのニュートラルスピリッツを用いて日本という特徴を出している。
日本伝統の蒸留酒と国産ジン
しかし、その他に国産ジンならではの特徴がある。
焼酎蔵や泡盛蔵が作るジンにはベースに「精留していない」焼酎や泡盛がそのまま用いられているものがある。すると原酒の香りが強く残った独特なジンが出来上がる。そこには、日本伝統の蒸留酒をジンに活かして多くの人に飲んでもらいたいという蔵の想いがある。
この、「原酒の香りを残しつつ、さらにボタニカルの香りを加えてジンを作る」という作り方は日本の蒸留技術の高さがあって初めてなせる技だ。原酒の香りが残ることについては好みもあるが、日本の焼酎や泡盛を知らない海外の人には個性的な香りのジンとして斬新に映る。
細かいことを言えばEUのDistilled Ginの定義では96%以上のニュートラルスピリッツを再蒸留することが必要である。このような日本のジンはその定義からは外れてしまう。しかし、現在のクラフトジンにはEUの定義を満たさない高品質なジンも多く、この定義がもはや現状に見合っていないと指摘する意見もある。現にGin Guildでは昨今のクラフトジンブームに合わせた定義を作ろうとする動きが見られている。
日本伝統の高い蒸留技術がもたらすジンは今後のジンの定義を変えていくきっかけの一つになるかもしれない。