数あるブランデーの中でも、アルマニャック等と比べ、コニャックは年数表記のある所謂「ヴィンテージもの」のラインナップは少ないです。例えば「1988 Vintage」「1976 Millesime」など。
理由としては、厳格な管理が必要となりコストも上がるから、というのが大きいでしょう。
厳格な管理が必要
コニャックではヴィンテージの正確性と品質を担保するため、単一年度のコニャックであることを示す年数表記を行う場合は、コニャックAOCを管理しているBNIC(フランスコニャック協会)による厳格な管理下でしか生産することができません。ヴィンテージコニャックとして販売をする場合は「樽に蝋封をする」か「鍵付きでヴィンテージ専用の熟成室を作る」という2つの選択肢のうち、いずれかの方法で樽の管理を行う必要があります。
1.樽に蝋封をする
この写真のように、紐と蝋を使って樽に封をかけます。BNIC立ち会いのものでしか蝋を開けることはできません。BNICの立ち会いの下以外で蝋を開けてしまうと、ヴィンテージコニャックとして販売することができなくなってしまいます。
2.鍵付きでヴィンテージ専用の熟成室を作る
熟成庫内にヴィンテージとして販売する樽を置く専用の部屋を用意します。この部屋には鍵をかけて、その鍵をBNICが保管します。こちらも同じくBNIC立ち会いの下でしか鍵を開けることができません。
後者の方はスペースや設置コストがかかりすぎるので、割合としては前者の蝋封だけで済ますところが多いように見受けられます。
コストも上がる
ヴィンテージのコニャックもずっとほったらかしというわけにはいかないので、何かしら作業を行う場合にはBNICの立ち会いが必要となります。その分、立ち会いのコストや管理コストが発生します。そのコストは最終的にコニャックの価格に跳ね返ります。
従って同じブランドで同じ程度の熟成年数でも、年数表記のあるヴィンテージものとそうではないコニャックではヴィンテージコニャックの方が最終的な商品価格が高くなる傾向にあります。そのため、飲み手の解釈にもよるのですが、必ずしも「高価なヴィンテージコニャック=良いコニャック」というわけではない場合があります。
抜け道的な表記方法
とは言っても、これはあくまでも例えば「1976」や「1980」といった具体的な単一年度の年数表記を行う場合の決まり事です。
消費者として知りたいのは
「結局だいたい何年くらいの熟成なの?」
というところ。
そのために各社様々な表記方法が見られます。
もちろんVSOPやXOといった基準もありますが、それよりも更に具体的かつヴィンテージ表記の決まりに抵触しないようにするための表記として「Lot.94」や「No.35」といった表記を見かけます。
この数字はメーカーによっても意味が異なりますが、「最低でも19○○年以前の原酒がブレンドされていますよ」だったり「この熟成年数のコニャックがブレンドされていますよ」といった意味合いです。コニャックを手に取る際に、このような数字を見かけたら注目してみて下さい。
それでもヴィンテージコニャックは面白い
様々な制約があるコニャックの熟成年数ですが、何だかんだで年数表記のあるヴィンテージコニャックには惹かれてしまいますし、私もついつい手にとってしまいます。それは明確にその年々の出来を反映させた唯一無二のコニャックだからかもしれません。そして自分が「これだ!」と思う作品に出合えるかどうかは飲んでみるまで分かりません。そのボトルに出合うまでのステップもコニャックの楽しみの一つと言えるでしょう。