History in a glass No22
骨董のお皿や猪口が好きで、骨董市やお店で気に入ったものがあると、ついつい手を伸ばしてしまう。「骨董の蒐集はお猪口から」とよく言われるように、さまざまな種類があり、年代や絵付け、染め付けに至るまで,幅広い器があるので、集めてしまいたくなるのは性であろうか。「ちょこ」とは言わず「ちょく」と言うと、いささか玄人っぽい。用語にもこだわりたい。
バーを営んでいるので、専らグラスに接しているわけだが、たまには古い和器にてのおもてなしも遊びがあってよいのではないだろうか。
日本酒は置いていないので、リキュールやフォーティファイドワインを注いで出すこともある。初めての方には驚かれるが、慣れてくると乙なもの。磁器の温もりが、やさしい甘さを引き立ててくれる。
今回は初めてグラスではなく、磁器を取り上げてみた。写真の器は1700年代後半の江戸時代に作られたもの。
可愛らしい手書きの絵付けで竹と梅と山が描かれている。本来ならば松を加えて松竹梅文、川もあれば山水文となるのだが、何故か描かれていないので、風景文となる。
当時は向付として食べ物を入れていたようだが、時代の移り変わりとともにお酒を楽しむ器としても使われるようになった。
磁器の特徴は陶器に比べガラス質を多く含むため、滑らかな肌触りや、指で弾くと高い金属音がすることだ。透光性があるので、強い光を中からかざすと、全体が透けて見えてとても綺麗である。
グラスに比べ、小さく持ち運びやすいので、馴染みのお店に持ち込み、お酒を楽しむこともある。使い慣れた器でも場面が変われば、よりおいしく感じるのはなぜだろうか。