今回は、コニャックの造りの中で酒質を決めるポイントのひとつについて、お話しさせていただきます。蒸溜するワイン(モロミ)の濁り具合についてです。
この濁りは、ワインの果肉や果皮などによるオリです。多くの蒸溜所ではフィルターリングすることでこのオリを取り除く、つまり清澄度を上げてから蒸溜をしています。この場合、クリアな香味の留液が得られる傾向にあります。熟成に使う樽材も、それに合わせて成分抽出が控えめなトロンセを使うことが多いようです。代表的な造り手としてはマーテルがあり、英国人好みの味わいと言われています。
一方、オリを残して蒸溜する造り手としては、レミー・マルタンやフラパンなどがあります。オリがあると焦げやすくなってしまうため、蒸溜に手間と時間がかかりますが、香味はよりふくよかでリッチな留液となります。この場合は樽材としてリムーザンを使うことが多いようです。
先述のとおり、オリはワインの果皮や果肉などですので、その中には多くの香味成分が含まれています。ワインの搾りかすやオリを主体に造るマールやグラッパを飲むと感じる、ふくよかで独特な香味からも理解できると思います。
同様のことがモルトウイスキーでも言えます。麦汁の濁り具合ですね。清澄麦汁だとすっきりと華やかな留液が得られ、濁りのある麦汁では重厚な酒質の留液になります。とはいえ、完全に透き通った麦汁では、ペランペランな酒質になってしまうので、ほどよい濁り具合がよいようです。
モルトウイスキーとコニャック、大麦とブドウという全く異なる原料から造られる蒸留酒なのに、いろいろと共通点があり興味が尽きません!