コニャックは①グランド・シャンパーニュ、②プティット・シャンパーニュ、③ボルドリ、④ファン・ボア、⑤ボン・ボア、⑥ボワ・ゾルディネールといった6つの生産地域(クリュ)に分けられています。これらのクリュは地質学者のアンリ=コカン氏により調査された土壌の質に基づいて地域指定され、1938年の法令で認可されました。
それぞれの土壌は特徴が異なり、例えば一般的に取引価格も高くなるグランド・シャンパーニュの土壌は白亜紀後期の石灰質土壌が多く存在します。このような土壌では、糖度が低く酸度が高い葡萄が栽培可能となり、発酵時にアルコール度数が高くなりすぎるのを抑え、凝縮されたオードヴィーを作り出し、より長期の熟成が可能となります。
しかしながら土壌は自然の産物です。実際の土壌は地図上の行政区のように明確に「ここまでがグランド・シャンパーニュの土!」と線が引かれているわけではありません。土壌の質は面というより点によって異なり、同じグランド・シャンパーニュの中でも場所によって微妙に異なります。更に面白いのが、グランド・シャンパーニュ以外の土地でも同質の土壌が存在するということです。例えば赤い粘土質の多い土壌で有名なファン・ボアですが、実はここにも一部石灰質の多い土壌が存在し、土壌の質としては実質グランド・シャンパーニュとほぼ同じという場所も存在します。 各クリュだけの葡萄で作られたコニャックも多くリリースされており、それぞれの土壌の特性を楽しむことができますが、それらのコニャックがどの「点」の葡萄であるのかを調べながら飲むのも大変面白いものです。土壌・品種・作り手・熟成場所・年数……これら無限大ともいえる組み合わせを検証していく楽しみは尽きません。