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〜共通の香気成分があってもマリアージュが難しいケース〜

アルコールと食べ物のマリアージュを考えるのに重要なのは共通の香気成分の重なり具合、つまり似たような香りをもつもの同士だと相性が良いというだけではなく、味の強弱のバランスが大切であると私は考えています。

例えばカレーに使用されるスパイスのひとつ『フェヌグリーク』、これには「ソトロン」という香気成分が重要な香りとして存在しています。このソトロンは濃度が濃いとカレーの香りに感じるのですが、濃度が薄くなるとメープルシロップのように感じます。そしてアルコールではオロロソシェリーに多く含まれています。

私が作成しているチョコレートの中にもフェヌグリークを混ぜたものがあり、これをオロロソシェリーとマリアージュさせてみようと試みたことがありました。しかし結果としては可もなく不可もなくといったところで、香りとしてはお互いの邪魔はしないのですが、どうしてもチョコレートの味の強さ(甘味、タンニン感)が目立ってしまい相乗効果とまではいきませんでした。

これは共通の香気成分をもっていながら味の強弱のバランスが取れていなかったためであると私は考えています。試行錯誤の末、フェヌグリーク・チョコはオロロソ樽で熟成させたウイスキー、マッカランとの相性が良いことに気づきました。

ウイスキーの高いアルコール度数がチョコレートのタンニンや油脂感に負けず、その上でお互いの甘さ及びソトロンを含むいくつかの香気成分がバランス良く調和し、見事なマリアージュになっていました。

このように「似たような香りを持っている=マリアージュが成立する」と単純ではないのがマリアージュの難しさですが、その分良い組み合わせを発見できた時の感動は大きいもの。

今後もこちらに情報共有していけたらと思います。

この記事を書いた人

須藤 銀雅
須藤 銀雅https://atelier-airgead.amebaownd.com/
洋菓子専門学校を卒業後、国内の洋菓子店、フレンチレストラン、ショコラトリー等で修行。2016年に「アトリエAirgead」を開業。食材や飲料の香気成分を研究し、アルコールとのマリアージュに特化した“BAR 専用チョコレート”という独自のジャンルを一般販売せずに国内のオーセンティックバーにのみ販売している。2018 年から自家焙煎カカオを使用した一般販売用ブランド「ロマンスチョコレート」も手がける。
須藤 銀雅
須藤 銀雅https://atelier-airgead.amebaownd.com/
洋菓子専門学校を卒業後、国内の洋菓子店、フレンチレストラン、ショコラトリー等で修行。2016年に「アトリエAirgead」を開業。食材や飲料の香気成分を研究し、アルコールとのマリアージュに特化した“BAR 専用チョコレート”という独自のジャンルを一般販売せずに国内のオーセンティックバーにのみ販売している。2018 年から自家焙煎カカオを使用した一般販売用ブランド「ロマンスチョコレート」も手がける。