ウイスキーやブランデーなどの蒸留酒と相性が良いと言われているチョコレート。
バーではちょっとしたおつまみとして提供されたり、自宅飲みのシーンでも少し洒落たお酒のお供として準備する方も多いのではないだろうか。
近年では、カカオ豆の焙煎から板チョコになるまでを一貫して手掛ける「Bean(カカオ豆) to (から)bar(板チョコへ)」というスタイルの小規模クラフトチョコレートメーカーも国内外問わず数多く出来ている。
一般小売されている比較的安価なチョコレートや製菓用のクーベルチュールと呼ばれるもの、百貨店などにて箱入りで売られているボンボンショコラや今流行りのBean to barの違いについて、今回はまとめてみようと思う。
そもそもチョコレートとは
まず大前提として、チョコレートとは原料であるカカオを発酵、乾燥させたあと種子を焙煎してすりつぶし、そこに砂糖や香料などを加えて固めたものの総称である。
焙煎したカカオの種子はカカオニブと呼ばれ、すりつぶすと55%ほど含まれる油脂、カカオバターが解放されドロドロになっていく。これをカカオマスという。
このカカオバターが砂糖や香料、カカオニブの残りの成分などもまとめて固まり、チョコレートと呼ばれる食べ物に精錬される。
カカオニブからカカオバターだけを圧搾することも可能で、圧搾した無色のカカオバターに粉乳、砂糖、香料などを加えたものがホワイトチョコレートである。
逆に言うとカカオバターが無ければチョコレートは固まらず、固形にはなれない。
カカオマスからカカオバターを抜いたものはパサパサの固まりになり、アルカリ処理などを経てココアパウダーに加工される。
比較的安価なチョコレート
同じチョコレートでありながらスーパーやコンビニなどで売られているものは驚くほど安価である。
これは大手ならではのスケールメリットによるところはもちろんだが、原価の高いカカオバターを価格の安い植物油脂(シア、イリッペ、パームなど)に代替えしていることが大きい。
したがって製品中のカカオマス、カカオバターの含有率は低く、カカオ本来の味というよりは香料由来の風味が強い傾向になる。
製菓用のクーベルチュール
クーベルチュールと聞くと高価なチョコレートのことだと想像する方も多いのではないだろうか。この名称は「コーティング、上掛け用の」ということを意味しており、製菓で使用する際にのびが良く作業性を向上させるために、カカオバターが多めに配合されている。
したがって植物油脂などの代用油脂を多く配合している市販のチョコレートに比べると価格帯が高く、洋菓子店などで原料として使用されることを想定して作られるものが多いため、風味も本格的なものが多い。大抵の場合、バニラ香料やレシチンなどの乳化剤も使用されている。
ボンボンショコラ
多くの方がボンボンショコラはウイスキーボンボンなどのお酒シロップが閉じ込められたチョコのことだと認識しているが、これは間違いである。
「ボンボン」というのはフランス語で「一口大の」という意味で、様々な香り付けをした中身のフィリングをクーベルチュールでコーティングし、一口大にまとめたものだ。
中身のフィリングにアルコールで香り付けをすることも多いが、お酒シロップではなく生チョコのようなものがほとんどである。
原価に加えてチョコレートの加工職人「ショコラティエ」の専門技術も価格に上乗せされるため、箱入りの高級品として贈答用などで利用されることが多い。
Bean to bar(クラフトチョコレート)
近年多くなってきたスタイルのチョコレート。カカオ豆は南国の様々な国、地域により味わいに違いがあり、その原因はカカオの品種や発酵させる環境により生成される成分の違いによるところが大きい。
クラフトチョコレートメーカーではカカオの産地やカカオ豆の品質にこだわり、コーヒーのように焙煎の程度を自分たちでコントロールしながらシンプルな配合でチョコレートを作る。
場合によっては香料やレシチンを加えたりすることもあるが、カカオそのものの味わいや発酵により生まれた風味の違いを前面に出したい場合が多いので、香料などはあまり使用せずに自家製のカカオマスと砂糖のみで仕上げるメーカーが多い。
適切に発酵された品質の良いカカオ豆は仕入れ値が高く、高価格帯での販売がほとんどだが葉巻やウイスキーのように産地ごと、メーカーごとの味わいの違いを嗜好品として楽しむ需要が多い。
一口にチョコレートといっても製法、材料構成、価格帯は様々である。
市販の安価なチョコレートが悪いというわけでは無いし、クラフトチョコレートが一番偉いという事でもない。
チョコレートに少し詳しくなることでみなさまの求める特徴、価格帯を正しく判断し、選択肢の幅が広がれば幸いである。 今後はチョコレート中の香気成分などについても紹介していきたい。