前回、台湾から持ち帰ったものを使用して発酵実験を行ったカカオ豆。柑橘と一緒に発酵させることで、チョコレートにとってポジティブな香気成分と言われているリナロールの多いものになるのかを試したのですが、そもそも少量のために発酵による昇温がうまくいかなかったことと、私の出張が重なり乾燥工程で撹拌ができなかったことが原因で、外見としては褐色の部分と白の部分がまだらな、お粗末なカカオ豆になってしまいました。
豆そのものの香りとしては、本来アルコール発酵後の酢酸発酵により生まれる独特な酸はほぼ感じられませんでしたが、発酵の終盤で起きたメイラード反応由来の甘くて芳醇な香りなどは意外にもしっかりと発生していました。
焙煎前の生豆を実際に試食してみます。発酵工程で酸が上手く発生していればカカオ豆中の渋みのもと、カカオポリフェノールに干渉して味がマイルドになっているはずでしたが、残念ながら渋みや苦みは残っていました。苦みの種類はベルモットやビターズのそれに似ていて、顔をしかめるほどでは無いにせよ、じんわりと長く後を引きます。
柑橘と一緒に発酵させたことが要因だったと断定はできませんが、後味には確かに柑橘系、また浅煎りのコーヒーのような風味が感じられます。ポジティブ要素である華やかでトーンの高い香りがしっかり残っているので、チョコレートに加工すると美味しく面白い味わいができるのではと期待できます。ただ、リナロールが多く含まれているかどうかまでは専門的な機械で測定してみないとわかりません。 弊社では、そう遠く無いうちにチョコレートの香気成分の分析などに力を入れていく予定ですので、そこで得た情報をお酒とチョコレートのマリアージュに活かしていければと思っています。