History in a glass No16
創吉オリジナル EDO止メ切子
グラスの中で優雅に泳ぐランチュウ。その姿を見ながら飲むお酒はまた一興である。
写実的に描かれた金魚は絵付け作家、本郷裕一郎氏の作品だ。グラス底には氏のサイン。‟Hand painted by Hongo Y ‘03 #1”がある。おそらく2003年、最初に描かれた金魚のだろう。水泡眼が描かれたグラスも所有しているが、こちらは#6となっていて、いったい何匹の金魚がグラスの中を泳いでいるのかは知る由もない。
ベースとなっているグラスは、浅草にあるグラスファクトリー「創吉」のオリジナルEDO止メ切子。グラス下部にカットが施されており、持ちやすく、滑りにくい。とても薄いグラスだが、丈夫で長持ちするので、私のお店ではビールを注いだり、ジントニックなどのカクテルグラスとしても使用頻度が高い。時折、お客様からご所望されるので、ストックからお譲りすることもある。
この金魚タンブラー、氷を岩に見立て、ソーダの泡が水流の様な雰囲気を作り出すので透明なスピリッツのソーダ割りを遊びで作ってみた。グラスを左右に少しずつ動かすと金魚が生きているようにも見える。(生々しくて嫌だと言う声も聞いたが)。 金魚は日本の夏の風物詩、江戸時代には暑い夏に金魚を鑑賞して涼むという粋な文化もあったとか、私もこのタンブラーを使用するのは夏の間だけ。季節に合わせてグラスを使い分ける、これもまた一興。