ワンショット蒸溜って何?
クラフトジンの商品説明を読んでいると、しばしば「ワンショット蒸溜」という言葉を見かける。今現在、これは「蒸溜後の原酒をブレンドして完成した」ジンと比較して「一発蒸溜でブレンドせずに完成したジン」という意味で使われていることが多いように思う。ただ、もともとは違う使い方をされていた言葉で、ジンの蒸溜法を考える上でも大事な言葉だ。
「ワンショット蒸溜(one-shot distillation)」は、もともと「ツーショット蒸溜(two-shot distillation)」という言葉に対比して使われていた。ツーショット蒸溜ではまず、ベーススピリッツに通常の2倍量のボタニカルを入れて蒸溜し、2倍の濃さの原酒を作る。そして蒸溜後にアルコールを加えることで2倍量の狙った酒質のジンを得るという方法だ。3倍であればスリーショット蒸溜……となっていき、これらを総称して「マルチショット蒸溜(multi-shot distillation)」という。1回の蒸溜でより多くのジンを得ることができるため、低コストでジンを作ることができる利点がある。しかし、蒸溜後にアルコールを加えることでメタノールなどの不純物が多く含まれてしまうため、質はワンショット蒸溜に比べると落ちてしまう。そのため、ワンショット蒸溜という言葉は「コストはかかるけれども、いいものを作っていますよ」というような意味で用いていたのだ。
時代が変われば言葉の意味も変わっていく。これからの時代「ワンショット蒸溜」は「ブレンドジン」と対比した意味で使われていくのかもしれない。でも、まだまだ過渡期であるジンの世界、もともとの意味も知っておいて損はないと思うのだ。