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ワンショット蒸溜って何?

ワンショット蒸溜を用いている中国醸造「桜尾ジン」のハイブリッド蒸溜器

クラフトジンの商品説明を読んでいると、しばしば「ワンショット蒸溜」という言葉を見かける。今現在、これは「蒸溜後の原酒をブレンドして完成した」ジンと比較して「一発蒸溜でブレンドせずに完成したジン」という意味で使われていることが多いように思う。ただ、もともとは違う使い方をされていた言葉で、ジンの蒸溜法を考える上でも大事な言葉だ。

「ワンショット蒸溜(one-shot distillation)」は、もともと「ツーショット蒸溜(two-shot distillation)」という言葉に対比して使われていた。ツーショット蒸溜ではまず、ベーススピリッツに通常の2倍量のボタニカルを入れて蒸溜し、2倍の濃さの原酒を作る。そして蒸溜後にアルコールを加えることで2倍量の狙った酒質のジンを得るという方法だ。3倍であればスリーショット蒸溜……となっていき、これらを総称して「マルチショット蒸溜(multi-shot distillation)」という。1回の蒸溜でより多くのジンを得ることができるため、低コストでジンを作ることができる利点がある。しかし、蒸溜後にアルコールを加えることでメタノールなどの不純物が多く含まれてしまうため、質はワンショット蒸溜に比べると落ちてしまう。そのため、ワンショット蒸溜という言葉は「コストはかかるけれども、いいものを作っていますよ」というような意味で用いていたのだ。

時代が変われば言葉の意味も変わっていく。これからの時代「ワンショット蒸溜」は「ブレンドジン」と対比した意味で使われていくのかもしれない。でも、まだまだ過渡期であるジンの世界、もともとの意味も知っておいて損はないと思うのだ。

この記事を書いた人

ろっき
ろっき
1991年東京都生まれ。ジン研究家、医師。千葉大学医学部卒業。大学在学中からジンに傾倒し、サークル「アセトアルデヒド症候群」を主宰。ジンを総説する書籍がない当時、2013年から同人誌「もっとジンをおいしく飲む本」シリーズを自費出版。日本初の「ジン本」として各地のバーテンダーなどプロからも高い評価を受けた。医師として勤務する傍ら、非定期的なジンテイスティングイベント開催やイベントへの出演などジンの普及に努めている。著書「All about Gin ジンのすべて」(旭屋出版)。
ろっき
ろっき
1991年東京都生まれ。ジン研究家、医師。千葉大学医学部卒業。大学在学中からジンに傾倒し、サークル「アセトアルデヒド症候群」を主宰。ジンを総説する書籍がない当時、2013年から同人誌「もっとジンをおいしく飲む本」シリーズを自費出版。日本初の「ジン本」として各地のバーテンダーなどプロからも高い評価を受けた。医師として勤務する傍ら、非定期的なジンテイスティングイベント開催やイベントへの出演などジンの普及に努めている。著書「All about Gin ジンのすべて」(旭屋出版)。