History in a glass No13
ケンブリッジグラス
ケンブリッジと聞くとイギリスの大学を思い浮かべる人もいるだろうが、このグラスが作られたアメリカオハイオ州のガーンジ郡ケンブリッジシティの名に由来する。
ケンブリッジ社は同州の天然資源(鉱産物)を基に新しい産業に着手するべく、1901年に創業した。当時様々なガラスメーカーが軒を連ね、最盛期は100社以上に上った。
オハイオ州の北部には自動車産業で有名なデトロイト市があり、フロントガラスやウインドーガラス等、ガラス産業の発展に大きく寄与することとなる。
しかしながら1920年代後半のアメリカの大不況による煽りで、あっという間にガラスメーカーは衰退していく。生産コストを下げるため、デザイン性を下げ、同じパターンの安価な製品が世に出回った。そんな中でもエレガントグラスと呼ばれる手作業で作られたグラスがある。装飾やカラーを施した芸術性のあるグラスだ。アメリカの一番美しいグラスはこの時代につくられたと言っても過言ではない。
ケンブリッジグラスの代表作「ローズポイント」はその名の通り、バラの花、葉、茎をあしらい、メダリオン(徽章)を囲うように描かれたものだ。カクテルグラスの他にもティーカップ等もある、禁酒法の時代と時を同じくするので、お茶を入れたり、食材をのせたりといった使い方もされていたと推察できる。
カクテルグラスとして使用する際、グラスは冷凍庫には入れないで使用したい。せっかくのエッチングが曇って見えにくくなってしまうからだ。それと、グラスの縁まで注がず、グラスのなかほどまで注ぐと綺麗に見える。そもそもケンブリッジグラスは大振りで、容量があるのでエッヂ部分は残しておきたい。日本のカクテル「雪国」をアメリカのヴィンテージグラスに注いでみるのも一興である。