スコットランド本土最北の地サーソーに、ウルフバーン蒸留所が誕生したのは2013年のこと。そのウルフバーンのスピリッツが3年間の熟成を経て、このたび“ウイスキー”としてリリースされた。
かつてサーソーでは同名の蒸留所が操業していたが、1877年に閉鎖されている。この地でウイスキーが生産されるのは、136年ぶりのことだ。本土でもっとも北にある蒸留所といえば、これまでウィックのプルトニーだったが、サーソーはウィックの町よりも10km以上も北にある。すなわち「本土最北の蒸留所」の座は、ウルフバーンに移ったことになる。
現在の敷地は旧蒸留所の跡地から350mほど離れているが、仕込み水は当時と同じウルフバーン川から引いている。建物の外観は、蒸留所らしさを誇示する装飾などは一切なく、実用本位な考え方が見て取れる。ウイスキー評論家の故マイケル・ジャクソンさんなら、風情がないと嘆くだろうか。
工場長のシェーン・フレイザーさんは、かつてグレンファークラス蒸留所で生産マネージャーを努めていた人物。「私たちが目指しているウイスキーは、風味が軽やかでフルーティなタイプ。ですが決して軽すぎず、しっかりとしたボディを感じる酒質が理想です。」と、フレイザーさんは話す。サンプルを試飲したが、確かに彼らが目指すウイスキーの方向性を感じる。若さゆえの不快なフレーバーがほとんどなく、ほのかな麦の甘みの中にエステリーな熟成感も感じる。
なお別バージョンとして、ピーティなタイプのウルフバーンもつくられている。ただしフェノール値が10ppmの、ライトピーテッドウイスキーだ。ウルフバーン本来のデリケートな風味が隠れてしまわないよう、ピーティさを加減しているのだという。「私個人は、ピーティなウイスキーのファンではないのですが・・」と、フレイザーさんは笑う。こちらも試飲したが、とてもバランスがいい。長熟のウルフバーンを想像するだけで、わくわくが止まらない。