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グレンフィディック12年スペシャルリザーブ 平凡にして非凡な1本:Re-オフィシャルスタンダードテイスティング Vol.10

スコッチシングルモルトの中で、定番の熟成年数表記と言えば、10年か12年でしょう。古くは5年や8年がスタンダードで、12年はデラックス扱いでしたが、時代と共に熟成年数表記が伸びて現在に至っています。

そうした定番品の中で、価格と味のバランスが優れていると感じる銘柄の一つが、スコットランド最大規模の蒸留所・グレンフィディックの12年スペシャルリザーブです。

熟成に使われたアメリカンオーク樽に由来する、洋梨や王林等の青りんごを思わせる華やかなフルーティーさ。微かなレモンピールの爽やかさとほろ苦さ。グレンフィディックの酒質由来の柔らかい麦芽風味も、樽由来のフレーバーに馴染んでおり、コストパフォーマンスの高い1本だと思います。

酒屋でこうしたフレーバー構成を持つボトルを選ぶなら、グレングラント、アバフェルディ、グレンマレイあたりの10~12年も候補となりますが、国内のどこでも安定して手に入るという点では、グレンフィディックが間違いなく頭一つ以上抜け出ています。

シングルモルト・グレンフィディックとしての年間出荷量は100万ケース以上。ジョニーウォーカー等のブレンデッドウイスキーには及びませんが、シングルモルトとしてはマッカランと並んで世界トップの出荷量でありながら、これだけのクオリティを維持しているというのは凄いことです。

(グレンフィディック蒸溜所のポットスチルの一部。28基のポットスチルは、形状の違いに加え、加熱方法に蒸気と直火蒸留がある。Photo by K67)

(グレンフィディック1970年代流通品(左)と、現行品の12年(右)。香味のベクトルはどちらも同じで、ハウススタイルに大きな転換は見られないが、華やかさは現行品のほうが強く感じられる一方、麦芽風味はオールドボトルのほうが厚く、味わい深い。)

グレンフィディック蒸溜所は、1886年に建設され、1887年のクリスマスに創業を開始。1903年からウィリアム・グラント&サンズ社の傘下となり、ブレンデッドウイスキーの構成原酒として活用され、1963年にはシングルモルトの輸出を開始。1970年代の洋酒輸入自由化以降は、日本でも広く輸入・販売されて今日に至っています。

酒質やハウススタイルとしては、1960年代に生じた不可解な事象が、愛好家の間でしばしば語り草となりますが、以降は現行品に至るまで連綿と続く、ソフトでフルーティーなハウススタイルを維持しています。

余談ですが、1963年~のくだりは、世界で初めてシングルモルトを発売したかのように語られるケースが散見されますが、これには誤解があります。

現在のシングルモルト表記に分類される商品を、大々的に海外に輸出したという整理では、同ブランドが世界で最初のようです。ですが、国内外問わずとなると、さらに古い蒸留所はいくつも出てきます。 また、当時のグレンフィディックはシングルモルト表記ではなく、STRAIGHT MALT表記であり、その後すぐにPURE MALT表記へと変わります。決してシングルモルトと銘打って販売していたわけでもないため、情報が独り歩きしているようにも……と、文字数もあるのでここらで閑話休題。

グレンフィディック12年の飲み方で、オススメはハイボールです。

同銘柄は2019年にラベルチェンジを実施。スタイリッシュなボトルと合わせ、ブランドの原点となる発売初期のラベルをモチーフにしたような、白地のラベルデザインへと変更されています。

中身の変化としては、香味とも旧ボトルから見て多少硬さが感じられるようになりましたが、若さが強調されず、むしろよりハイボールに合いやすくなったと感じています。

そしてこのハイボールですが、油で揚げた肉類、あるいはスパイシーで濃い味のB級料理との相性が良いのです。単に料理の味を引き算してさっぱりとさせるだけではない、モルト100%故にフレーバーが残ることで、相乗効果があるように感じています。

グレンフィディック12年スペシャルリザーブは、前述のように流通量の多さか、あるいはピートやシェリー樽といった目を引く個性がないためか、「飲んだことはあるけど、ちゃんとテイスティングしたことはない」と言う愛好家も少なくないように思います。決して軽視はしていないけれど、平凡さから後回しにされがちな定番メニュー……と言ったところでしょうか。ですが、改めて飲んでみると気が付く非凡さが、このウイスキーにはあります。

本コラム“Re-オフィシャルスタンダードテイスティング”の狙いは、原点回帰。各ブランドのスタンダードクラスを振り返って、良いと感じる要素やハウススタイルを紹介していくことにあります。ならば2021年最初のコラムに、グレンフィディック12年は適任と言えます。諸々の事情から外飲みをしづらい状況が続いておりますが、だからこそ自宅で気兼ねなく楽しめる、世界で一番売れているスタンダードなモルトはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

くりりん
くりりんhttp://whiskywarehouse.blog.jp/
1984年生まれ、東京都出身。22歳の頃にウイスキーに惹かれ、以来琥珀の世界の住人となる。2015年、ウイスキーレビューを主としたブログ「くりりんのウイスキー置場」を開設、レビュー数1500本、月間約30万PV の媒体に成長。現在も日々レビューを更新する傍ら、ニューリリースやカスクサンプルの評価に関わることも。
くりりん
くりりんhttp://whiskywarehouse.blog.jp/
1984年生まれ、東京都出身。22歳の頃にウイスキーに惹かれ、以来琥珀の世界の住人となる。2015年、ウイスキーレビューを主としたブログ「くりりんのウイスキー置場」を開設、レビュー数1500本、月間約30万PV の媒体に成長。現在も日々レビューを更新する傍ら、ニューリリースやカスクサンプルの評価に関わることも。