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東欧の地酒プラムブランデー『スリヴォヴィッツ』の未来

メキシコの『メスカル』やペルーの『ピスコ』を聞いた事があるだろうか?

十数年前までは、聞いた事もない人がほとんどであったと思う。

この二つは、世界的に影響力のあるニューヨークやロンドンのバーテンダーが当時発掘し世に広め、現在は日本でも定着しつつある。

たくさんのブランドが正規でインポートされ、メスカルは竜舌蘭を燻す行程で付加されるスモーキーな香り、ピスコは一回蒸留由来の芳醇な果実の味わいが特徴だ。

日本において五大スピリッツと言われたジン、ラム、テキーラ、ブランデー、ウォッカ(ウィスキーは日本の酒税法上、固有のカテゴリーがあるので該当しない)。

昔はこれらが定番であったが、現代におけるピスコやメスカルのように当初は国外にあまり出回らない地酒が脚光を浴びる世の中になっているのであれば、僕は是非このスピリッツを紹介したい。

『スリヴォヴィッツ(Slivovitz)』だ。

プラムブランデー『スリヴォヴィッツ』

地酒であったメスカルやピスコがそれなりの地位を確立するのであれば、東欧の地酒であるプラムブランデー『スリヴォヴィッツ』も脚光を浴びて欲しいと僕は願う。

では、以下にプラムブランデーである『スリヴォヴィッツ』について触れていきたいと思う。

①プラム由来のスリヴォヴィッツの味わいは?

  • ブランデーと言えばコニャックやアルマニャック等の葡萄由来のスピリッツを想起してしまいがちだが、スリヴォヴィッツはプラム由来
  • その品種の多くはダムソンプラム
  • 樽で熟成させたものもあるが、基本は樽で熟成せず無色透明
  • 高貴な酸味のある香りと果実味が織り成すハーモニーを楽しめる
  • ストレートもよいが、柑橘を搾らないソーダ割りもお勧め
  • ジントニックのジンの代わりに使っても良い
発酵が進むプラムブランデーの醪

②主産地はどこ?

  • 中欧、東欧が盛んで、チェコ、スロバキア、ルーマニア、ハンガリー、ブルガリア、ドイツ、オーストリア、セルビア、スロベニア、クロアチア、マケドニア、ウクライナ、ポーランドなど
  • 国ごとに言語が違うので呼び方は多少異なるが、世界共通言語に近い英語のスリヴォヴィッツ(Slivovitz)で統一
  • ハンガリーでは果実から造られる蒸留酒全般を指す言葉としてパーリンカがあるが、スリヴォヴィッツはその一種といえる
  • クロアチアやセルビアなどのバルカン半島でも同様でラキアと呼び、スリヴォヴィッツはその一種
  • ルーマニアではツイカ(スリヴォヴィッツでも通じる)
  • 中でもチェコとスロバキアの両国は特に強いアイデンティティを持ち、これらの国々でも高級酒というよりは地酒として多く流通している
  • 田舎の家庭では自前でプラムの木を持ち、季節に余剰プラムを家庭蒸留して近所に振る舞うという文化が今でも残っている
  • 飲み方はショットグラスでストレート
  • このような家では子供が産まれた年にスリヴォヴィッツを仕込み、その子供が成人し結婚する時に生まれ年仕込みのスリヴォヴィッツを結婚式で振る舞うという素敵な文化も残っている

③日本においてのスリヴォヴィッツの未来

  • 地酒に過ぎなかった中欧、東欧のスリヴォヴィッツも近年模様が変わってきた
  • チェコの生産者が日本の様々なインポーターにコンタクトをし、販路を広げようという動きが出ている
  • ピスコやメスカルが受け入れられるなら、スリヴォヴィッツも大いに可能性がある
  • 日本は食用プラムの生産大国であり、プラムが好きな日本人は多い
  • 日本では原料用アルコールにプラムを浸漬させたリキュールは昔からあるが、プラムから醸し蒸留したプラムブランデーはほとんどない

この良さが日本にもいつか定着する事を願う。お客様に多様な選択肢を提供するのは、僕らバーテンダーの役割だ。ぜひみんなでスリヴォヴィッツを楽しんでもらいたい。

この記事を書いた人

鹿山 博康
鹿山 博康https://ameblo.jp/kayama0927/
1983年生まれ。20歳の時にバーテンダーを志す。2013年7月独立し、アブサン・ジン など薬草酒を中心としたバー、Bar BenFiddichを開業する。自身の畑を外秩父の麓・ときがわ町に所有し、そこで採取したボタニカルをカクテルに使う。2015年ボタニスト・ジン・フォリッジ・カクテルコンペティション 優勝。2016年『drink nternational』より、「AsiaBest Bar 50」にて21位に選出される。
鹿山 博康
鹿山 博康https://ameblo.jp/kayama0927/
1983年生まれ。20歳の時にバーテンダーを志す。2013年7月独立し、アブサン・ジン など薬草酒を中心としたバー、Bar BenFiddichを開業する。自身の畑を外秩父の麓・ときがわ町に所有し、そこで採取したボタニカルをカクテルに使う。2015年ボタニスト・ジン・フォリッジ・カクテルコンペティション 優勝。2016年『drink nternational』より、「AsiaBest Bar 50」にて21位に選出される。