コニャックの蒸溜時のカット方法は、大きく分類するとレミーマルタン・タイプとマーテル・タイプの2タイプがあります。今回はその違いについて考えてみます。
レミーマルタン・タイプは、細かなカットと、ワインにオリを残したまま蒸溜することがポイントです。コニャックはガス直火加熱のため、オリがコゲつかないように手間と時間がかかります。ただこのオリによって、豊かな香り・厚みのあるふくよかな味わいの溜液が得られます。レミーマルタンではグランドシャンパーニュとプティトシャンパーニュの高品質なブドウを使用しているため、そのポテンシャルを引き出すように、よりしっかりとした酒質の溜液が得られるカット方法になっています。グランドシャンパーニュの小さな造り手の多くもこの方法を用いています。
これに対して、マーテル・タイプはオリをフィルターで除去し、さらにカットもテットを多めにとり、スゴンドをブルイではなくワインに戻すことよってクリアな酒質の溜液となります。マーテルのスチルにはショーフヴァンがありませんが、これもワインやブルイを温めると熱化学変化が生じ、芳香も強くなる傾向にあるため、よりすっきりとした溜液を得るためと考えられます。
この2つのほかにヘネシー・タイプもありますが、基本的なカットはレミーマルタン・タイプとほぼ同じで、オリの量を少なくするなどして、レミーマルタン・タイプより軽やかな酒質の溜液が得られるようにしています。 今回の図はあくまで基本形です。原料がブドウであるため、毎年そのポテンシャルが異なります。蒸溜のカットの方法・条件なども、年や畑などによって変えられています。コニャック特有の人を魅了してやまない優雅な香味は、このキメ細かい蒸溜によってもたらされているのです。