以前掲載したセガン・モロー社に引き続き、タランソー社に行ってきました!
セガン・モローと目と鼻の先のMerpins(メルパン)という町に位置しており、こちらも世界的に有名な製樽会社の一つです。
コニャックという町は、その名の通りコニャック(酒)に支えられている町で、樽やガラス、タンクなどコニャック製造に関する様々な会社が周辺にあるのも特徴です。
コニャックに住んでいる人で、全くコニャックに関わらない仕事をしている人はいないのでは? と思えるほど。
まずは受付に。基本的に予約をしてから生産者の訪問をしますが、受付の画面に自分の名前(日本語)が書かれていたのは初めてで驚きました!
メールの署名を引用したのだと思いますが、この心遣いがとても嬉しい。
受付では、見学用の黄色いベスト、目を守る眼鏡、耳栓、靴を守るプロテクターを渡され装着します。眼鏡と耳栓は必要な時に付けました。
製樽会社に行くと、火や刃物などを使う危険な仕事だからか、黄色いベストを渡されることがとても多いです。
まずは外に出て、樽の元となる木材を乾燥させている場所に行きました。
タランソーでは100%フレンチオークの樽しか造っていないとのこと!
どこかでアメリカンオークのタランソーを見つけたらもれなく偽物です。とはいえアメリカにはアメリカンオークのみを使ったCanton社、ハンガリーにはハンガリーとその近郊のオークの身を使うKádár社という会社も親会社が所有しています。興味深いのが、それぞれの製樽会社がそれぞれの技術を持っているので、アメリカンオークを輸入するときは組みあがった樽を輸入するとのこと。自社で樽を作ることは可能ですし、輸送コストもかかるのですが、タランソーにはタランソーの、カントンにはカントンの技術があるので、完成品のみ輸出するそうです。
タランソーでは樽を作るにあたってトレサビリティをかなり大切にしています。それは樽に使う樹から始まります。樹の原産地、粒子、納品業者などが分かる状態で、パレットにて樽板製造社から送られてきます。
この樽板生産業者もタランソーが自社で所有していて、フランスの中央の森の近くにあるそうです。さらに他の樽板製造業者にも頼んでいるので、その時はトレサビリティに納品業者も書かれます。
到着した板はすぐに外気にさらされて乾燥する……という訳にはいきません。
まずは木の状態をチェックします。もちろん送られてくる前にも検査されていますが、ここでの品質は樽の品質になるために、再度確認をします。
そしてその時欠陥があれば、削ったり、短くしたりすることで再利用可能かを試します。
認められた木の板は再度パレットに並べられて乾燥させます。
この木の熟成はかなり大切な段階の一つです。
タランソーは水を与えたりせず、自然のままで熟成を行います!
前回のセガン・モローでは2時間に1度水を与えていたので大きな違いです。
最初70%程度の湿度があった木も、熟成を終えるときには18%まで下がります。
とはいえ地球温暖化、気になりますよね。急に乾燥された木は割れてしまわないのでしょうか。
納品、検査を終えて乾燥を始めた1か月が一番亀裂の入る可能性が高いとのこと。
雨の多い時期はもちろん問題ないそうですが、例えば夏の暑い時期に並べられた木は亀裂が入る可能性が高くなります。
一か月で湿度が30~40%まで下がることもあるとのこと。
そこで最初の三か月は植え付けられた樹の近くで熟成させます。これは空気中の湿度を高くするため、気温を低くするために植えられました。
熟成期間はワイン用の粒子の細かいものは24か月、コニャックやスピリッツなどの粒子の大きいものは36か月行います。
しかし、特別な注文があればそれに沿って熟成期間を変えることももちろんあります。
例えば限定シリーズで48か月熟成したもの、もつくられているとのこと。
樽を形作る作業は伝統的な方法です。訪問時に行程を沢山見せてもらいました。
とても面白かったのが、焼きを入れた直後の樽の香り。
樽を形作るためではなく、2度目の将来お酒の香りづけとなる焼きです。
大抵ワイン用の樽は中くらいの焼き、コニャック用は強い焼きをしていますが、それぞれの焼きを入れた直後の香りを嗅がせてもらいました。
中くらいの焼きは寒い朝、暖かいパン屋さんに入った時の香りと表現するととてもわかりやすいと思います。ブリオッシュや甘みのある柔らかい香り、バニラやケーキの香りもしました。
強い焼きはコーヒーや焙煎香、アーモンドを焼いたような力強い、でもパンデピスの様な柔らかさも感じる香りでした。
焼きを入れた樽は上下の蓋をし、漏れがないか検査をして、ロゴを彫り、出荷されます。
そしてタランソーでは大樽やタンクも造っています。
こちらは完全オーダーメイド。
同じ容量のタンクでも高さや大きさ、形を変えたものを要望によってつくるとのことです。
訪問時、事前にお知らせを受けていましたが、スピリッツ用樽の担当者がいませんでした。また近いうちにお話を聞きに伺っても良いとのことなので、次回訪問してきます。