ウイスキーやブランデーを楽しむ際に、ちょっとしたおつまみがあると嬉しいものです。そのおつまみが味わっているお酒に「合う」ものであれば尚のこと。
では「合う」とはどういうことなのでしょうか。私は「共通の香気成分の重なり方と味の強弱のバランスがとれている」ことだと考えています。
近年、アルコールに限らずコーヒーや紅茶など「◯○とチョコレートのマリアージュ」という言葉をよく目にします。チョコレートはカカオの種子(カカオ豆)が原料ですが、その製造工程が複雑で香りを構成する化合物(香気成分)は600種類以上にものぼると言われています。その構成比はカカオの産地や品種による違い、発酵の仕方や焙煎の程度などで大きく変わってきます。
香気成分の種類が多いということは、他の食材や飲料が持つ香りと重なる可能性が高くなるわけで、なるほど「合う」相手としてチョコレートがひっぱりだこになるのもわかる気がします。
しかし、ここで気をつけなければいけないのは「味の強弱のバランス」のこと。これには味覚としての強弱はもちろん、香りの強弱も含まれます。チョコレートはただでさえ味も香りも強い食材なので、単に香りが似ているという理由で合わせようとすると繊細な味わいのワインやコーヒーなどではたちまち塗りつぶされてしまいます。やはり蒸留酒くらいのパワーを持つものでなければバランスがとれません。
ただしこれは基本的な話なので「共通の香気成分の重なり方と味の強弱のバランス」さえとれていれば、ワインやコーヒーでもチョコレートと合わせることは可能ですし、他の食材と飲料のマリアージュも実現させることができます。そのような実践的な内容はまた次回に。