Tasting Vocabulary 101
塩
ウィスキー・テイスティングにおいてとかく意見が別れるのが「塩っぽさ」だ。海沿いの蒸溜所、例えばアイラのウィスキーなど「島もの」に感じられることが多いと言われている。
海水を含んだピートのせいだとか、海辺の熟成庫に漂う潮風が原因だとか言われるが、ドライな話をすれば多くのピーテッド・モルトは内地で製麦されているし、99%以上のスピリッツは海から遠く離れたスコットランド内陸部の集中熟成庫の樽の中で眠っている。もといウィスキーそのものを分析してもNaClが検出されることもない。でも人は純粋にNaClを塩味として経験するわけではないことも事実。
ほら日本語でもよく「塩分」と言うでしょう?
それは塩に付随した香りや旨味が一体となって引き起こす感覚だ。
ピートが仄かに効いたウィスキーなら、牡蠣や昆布などの海産物を連想して唇に塩っぽさを感じるかもしれない。もし塩を含まないうま味調味料、例えば酵母エキス等が手に入れば、ウィスキーにちょと混ぜてみるといい。
驚くほど塩っぽくなるはずだ。
High Gravity
LHBS
ホームブリューィングの世界ではやたらにアクロニム、つまり略語が多い。RIMSにHERMS、そしてBIAB。これらに敷居の高さを感じてホームブリューィングの世界から足を遠ざける人もいるぐらいだ。
でもご安心を。LHBSに行きさえすれば、そんな不安も解消されるはず。
Local Home Brew Store、すなわち地元のホームブリューィング用品店はアメリカの中規模以上の街なら1軒や2軒、必ずあるはずだ。連休直前の金曜午後ともなれば、大の大人達が目を輝かせてお店にやってくる。週末に友人達と仕込むビールの原材料の入手はもちろん、レシピの相談、スタックスパージ等のトラブル・シューティング、はたまた店主催のブリューィング・スクールや地元同好会の集まりまで、LHBSは地域のブリューィング・コミュニティーの気さくな憩いの場となっている。
時代の証人
John Glaser
Edinburghにいた頃、スコッチのマーケティングについて相談を受けたことがある。30年以上の長熟スコッチのセールスにふさわしい人物をキャスティングしてほしいということだった。
あなたなら誰を選ぶだろうか?ショーン・コネリー?それとも竹中直人?チョイスは百人百様だろうが、これだけは言える。おそらく高梨沙羅を真っ先に思い浮かべたは人いないはずだ。
でもなぜだろう?なぜ食品CM好感度バツグンの高梨沙羅はこのウィスキーの看板になれないのだろうか?彼女の笑顔はウィスキーのオーセンティックなイメージにそぐわないから?しかしもっと本質的な問いはこうだ。
「そもそもなぜウィスキーは伝統や重厚といったイメージを纏わなくてはいけないのか?」
ボトル然り、ラベル然り、それを売る人然り。世に出回るウィスキーのほとんどはこれらのイメージに凝り固まっている。これに切り込んだのがJohn Glaserだった。
Johnnie Walkerのセールスマネージャーだった彼は2001年、自身のブレンデッド・ウィスキー・ブランド、Compass Boxを立ち上げる。新世界ワインばりのボトルデザインは、スコッチの既成概念を打ち破る洗練されたものだった。
しかし彼が打破しようとしたのは上辺のイメージだけではない。グレーン100%やモルトとグレーンを一種類ずつだけ混ぜたブレンデッドなどを通して、多くの人々が何の疑いもなく抱く「ウィスキー観」に対して野心的に挑み続けていった。
そしてその矛先は業界そのものにも向けられる。ブレンドされた全てのウィスキーの名前と熟成年数を公表する彼のスタイルは、スコッチ業界が定めた「最低年数のみの表記」に抵触するというのだ。消費者への透明性を武器に業界に立ち向かう彼の姿はダビデに見えなくもない。さてゴライアスは誰だろうか?スコッチ業界か、それともあなたの既成概念か?