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Tasting101 タイトル:<サワー>Part 2 その他の「酸っぱい」表現

英語で「酸っぱい」と表現するとき、”sour”(サワー)以外でまず思い浮かぶ単語が”tart”だ。語源は異なるが、焼き菓子の「タルト」と同じ綴り。発音も英語だと両者とも「タート」になる。

前回も書いたとおり、サワーは感覚器としての舌が感じる生理的な刺激である「五原味」の一つ、酸味を表現しているためその守備範囲はとても広い。一方、tartはどちらかというと「爽やかな酸味」とか「柑橘系の酸味」というような「味わい」としての酸っぱさを表現した単語だ。

例えば、リンゴ酢の原液を口に含めば、「sooooouuuurrr!!!(すっぱーーーい!)」となるけど、水で薄めたり、炭酸で割って飲めば、和らいだ酸味はりんご特有の風味を持つようになり、爽やかな清涼飲料水に早変わりする。その酸っぱさはもちろん「sour」と表現してもいいが、「tart」と言えば色々な味わいの中の一つとしての酸味を表現できる。

米国ではここ10年ぐらい野生酵母やブレタノマイセス、乳酸菌などビール酵母以外による発酵によってできたビールが流行りとなっている。欧州ではそれぞれの地域で独自に育まれてきた伝統的なビールなので、製造手法や味わいの特徴などをひとくくりにすることは難しいのだが、米国ではその名もズバリ「サワービール」として知られているように、大方の場合、普段のビールに慣れ親しんだヒトにとっては衝撃の酸っぱさ。とっつきにくいことこの上ない。

そう、誰しも第一印象は「sooouuurrrr!!」となる。ところが面白いことに、ここをぐっとこらえて飲み込んでいくと、やがて酸味の背景にいろいろな味わいが見え隠れしてくる。多様な発酵が織りなす味わいの複雑さは普通のビールとは別次元。こうなってくるとサワービールは単に「酸っぱいだけ」の飲み物から、ワインのような多面的で立体的な飲み物へと豹変する。そこでの酸味は単にsourと表現するよりも、tartと表したほうがしっくり来るというわけだ。

刺激としての酸味表現:タンギー(tangy)

「酸っぱい」を意味するもう一つの英単語が「タンギー(tangy)」。こちらはtartよりもさらに使い道が限定されてくるが、刺激としての酸味を表現するのによく使われる。こう書くとなかなか理解しづらいかもしれないが、酸味を時間的に捉えてみるとわかりやすいかもしれない。

例えば折り詰めの寿司に練りわさびがべっとりとついていたら、頬張った瞬間からしばらくは鼻に抜ける辛味ばかり。ネタがマグロだろうとイカだろうと、ホタテだろうと関係ない。でも、ほどよくわさびがのっていたら、ツンとした刺激が一瞬広がった後は、ネタ本来の味わいを愉しめるだろう。

わさびはその本来の役目どおり、他の味わいを引き立たせるアクセントとして活躍しているというわけだ。タンギーはその酸味バージョン。よほど大量でもない限り酸味のきいたドレッシングをサラダにかければ、その味わいは酸味がアクセントとして効く程度で、「酸っぱいサラダ」とは言わないだろう。

そんなサラダは「タンギーなサラダ」と表現できる。そしてそのドレッシングはサワーとも言えるだろうけど、おそらく他の色々な味わいが感じられるだろうから、「タートなドレッシング」になるわけだ。

この記事を書いた人

ジミー山内
ジミー山内
ウイスキーアドバイザー。米カリフォルニア在住。アメリカン・ウィスキー及びクラフト・ビール関連業界に深く携わる一方、日本で気鋭のクラフト・ブルワリーであるTokyo Aleworksを創設。スコットランド在住時はScotch Malt Whisky Society本部で樽選定員として数多くのモルト・ウィスキーを世に送り出している。
ジミー山内
ジミー山内
ウイスキーアドバイザー。米カリフォルニア在住。アメリカン・ウィスキー及びクラフト・ビール関連業界に深く携わる一方、日本で気鋭のクラフト・ブルワリーであるTokyo Aleworksを創設。スコットランド在住時はScotch Malt Whisky Society本部で樽選定員として数多くのモルト・ウィスキーを世に送り出している。