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躍動するジャパニーズスピリッツ

ここ数年、数多くの蒸留所が新設・再開され、さまざまなスピリッツが新たにリリースされています。

スコットランドやアイルランドはじめヨーロッパ諸国、アメリカやオセアニアなど世界中でみられ、日本でも同様の動きがあります。

その背景としては、ウイスキーブームがあり、さらにクラフトと呼ばれるマイクロディスティラリーの台頭、キャッシュフローの面でウイスキーよりも有利で独自性を謳えるジンの多様化などが挙げられます。

*日本の酒税法での分類で「スピリッツ」は、ジンやラム、ウォッカ(本誌ではウォッカと表記を統一にしておりますが、ウオツカ・ウオッカとしている商品もあります)などが入り、ウイスキーやブランデーはそれぞれ独立したカテゴリーになっています。本誌では広義の分類である「蒸留酒=スピリッツ」として表記しております。

日本のウイスキー

日本のウイスキーは、各メーカーが積み重ねてきた技術や知見によってより高い品質に至り、これが世界的な評価の向上へと繋がり、海外からのニーズが過激なまでに高まっています。国内でも、ハイボールブームなどで気軽にウイスキーを楽しめるようになったことなどにより、現在では入手が大変困難な状況になっています。

この背景の中、新規の蒸留所が数多く設立されています。その多くは焼酎や日本酒など、元々酒類製造にかかわっており、ノウハウを有しているメーカーによるものです。

その設備は、主に三宅製作所やスコットランド・フォーサイス社製です。基本的に各社ともスコットランドの製法を周到して、モルトウイスキーを製造しています。

日本のジン

世界的なジンブームを踏まえて、ジンを製造するメーカーも急増しています。

ウイスキーも造りながら、並行してジンを造るメーカーもあります。各メーカーとも、その土地のローカルなボタニカルや日本ならではのものを使用して個性豊かなジンをリリースしています。

ボタニカルに注目が集まりますが、ベーススピリッツによっても特徴づけられています。多くの場合、焼酎メーカーは焼酎を、泡盛メーカーは泡盛を、日本酒メーカーはライススピリッツを使用しています。そのベーススピリッツの個性も活かして、より日本らしいジンをリリースしています。

これらの多くはハイブリットスチルにより製造されています。ウイスキーの単式蒸留器と比べて小規模で、単式蒸留器と連続式のカラムが合わさった構造をしています。

単式のみを使う、アルコール度数をより高めるなど選択肢が多く、またボタニカルを入れるバスケットなどを組み込むこともでき、使い勝手が良いスチルといえます。

新しいスピリッツ

焼酎メーカーでは、従来(通常25%)よりも高アルコール度数の商品(40~45%)もリリースしています。

元々、本格焼酎(単式蒸留焼酎)は、麹を使用して糖化・発酵を行い、単式蒸留器を用いてアルコール度数45%以下で製品化されたものをいいます。

日本らしい麹由来の風味を活かしながら、よりジンやウォッカなどのスピリッツに近い用途に対応できるものとなっています。

また、焼酎のカテゴリーを超えた商品もリリースされています。柑橘類やハーブ、スパイスなどのボタニカルを使用したもので、三和酒類「TUMUGI」や佐多宗二商店「AKAYANE クラフトスピリッツ」などです。また、アブサンなど個性的なスピリッツもリリースされています。これらは酒税法上「スピリッツ」となります。

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この記事を書いた人

谷嶋 元宏
谷嶋 元宏https://shuiku.jp/
1966年京都府生まれ。早稲田大学理工学部在学中よりカクテルや日本酒、モルトウイスキーに興味を持ち、バーや酒屋、蒸留所などを巡る。化粧品メーカー研究員、高校教員を経て、東京・神楽坂にバー「Fingal」を開店。2016年、日本の洋酒文化・バーライフの普及・啓蒙を推進する「酒育の会」を設立、現在に至る。JSA日本ソムリエ協会認定ソムリエ。
谷嶋 元宏
谷嶋 元宏https://shuiku.jp/
1966年京都府生まれ。早稲田大学理工学部在学中よりカクテルや日本酒、モルトウイスキーに興味を持ち、バーや酒屋、蒸留所などを巡る。化粧品メーカー研究員、高校教員を経て、東京・神楽坂にバー「Fingal」を開店。2016年、日本の洋酒文化・バーライフの普及・啓蒙を推進する「酒育の会」を設立、現在に至る。JSA日本ソムリエ協会認定ソムリエ。