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国内蒸留所特集!「嘉之助蒸留所」「安積蒸溜所」「TUGUMI」

小正醸造「嘉之助蒸溜所」
~モダン・ディスティラリー、邁進する~

鹿児島県の薩摩半島西海岸・吹上浜に面した広大な土地にあるコの字型の美しい建物が小正醸造「嘉之助蒸溜所」です。

小正醸造は創業136年を迎えた焼酎メーカーで、樽熟成米焼酎「メローコヅル」が代表銘柄です。焼酎メーカーではありますが、樽での熟成についてのノウハウを有しているのがウイスキー造りにも活かされています。2017年より始動したモルトウイスキー蒸溜所・嘉之助蒸溜所ですが、この名前はメローコヅルを開発した2代目小正嘉之助氏の精神を受け継ぐものとして名づけられました。

蒸溜所の糖化・発酵室はフローリングでクリーンな印象、見学もガラス越しではなく設備を間近に見ることができます。全ての設備は三宅製作所製です。

糖化槽はステンレス製で容量6000ℓ、発酵槽もステンレス製で容量約7000ℓが5基あり、焼酎蔵でよく見る仕込み甕が床から顔を出しているかのような光景が印象的です。

蒸留器は大中小と大きさの異なる3基があるのも興味深い点です。マンホールがガラス製で、中の様子がしっかりと目視できるので、蒸留中の釜内の繊細な動きが確認できます。それぞれの容量は6000ℓ・3000ℓ・1600ℓですが、現在のところ複数パターンの2回蒸留や、3回蒸留にも挑戦し、酒質の異なる原酒を得るようにしています。

この建物には4段ラックの熟成庫があり、その他にも元々メローコヅルを熟成させているドーム状の熟成庫にも保管されています。

この建物内には蒸溜所見学者専用のテイスティングルームとして、一面ガラス張りで東シナ海を望むことができる「THE MELLOW BAR」があります。素晴らしい1枚板のカウンターなど、さながら高級ホテルのバーのような雰囲気です。ここでは貯蔵中の未発売ウイスキーなども楽しむことができます。

小正醸造ではウイスキー以外にジンも製造していますが、このベースは米焼酎で、ジュニパーベリーのほか、桜島小みかん、ほうじ茶などの地元のボタニカルを使用しています。

ショップでは、蒸溜所限定のボトルなども購入できます。現在は200mlのボトルでのリリースですが、2021年春には3年熟成のフルボトルがリリースされる予定で、今からとても楽しみです。

笹の川醸造「安積蒸溜所」~風の蒸溜所・再び~

笹の川酒造は1765年創業、250年以上続く日本蔵です。

敷地内には日本酒の神様である松尾様が祀られています。ウイスキーの製造免許を取得したのは戦後間もない1946年で、その直後からウイスキー「チェリーCherry」などをリリースしています。1980年代の地ウイスキーブームの際には大変人気を博しましたが、その後の酒税改正などによりウイスキー製造は縮小することになります。

敷地内にひときわ背の高い緑色の建物がありますが、これは戦前から導入された原料用アルコール製造用のアロスパス式連続式蒸留機が入っています。現在稼動を休止しておりますが、歴史的な価値があります。       

本格的にウイスキー製造を再開したのは、ベンチャーウイスキー秩父蒸溜所の肥土氏との出会いがきっかけでした。笹の川酒造は、肥土氏の羽生蒸溜所時代のウイスキー樽を預かったことでも有名ですが、氏の強い勧めによりウイスキー事業の再開を決意しました。

2015年に創業250周年事業の一環として新たに設備を導入して、2016年11月より生産を開始します。蒸溜所を始動させるにあたり「安積・あさか」という古来よりの地名を蒸溜所名に。日本酒蔵におけるウイスキー製造は、日本酒製造の閑散期である夏場にのみ行うことが多いですが、安積蒸溜所では夏場を除いて通年蒸留、仕込を行っています。

製造については、スコットランドの標準的な方法を踏襲し、1仕込は麦芽400㎏です。

現在発酵槽はステンレスタンク4基ですが、今後木桶発酵槽5基を追加し、酒質の異なるもろみを得る計画です。

蒸留器は、初留釜が2000ℓと再留釜1000ℓの2基で、70%程度のニューポットを得ています。一日の生産量は200ℓ程度、ちょうどバレル樽1つ分です。

熟成には、バーボンバレルを主として使用しており、シェリー樽やミズナラ樽、山桜材の樽なども用いています。この地は、夏は37℃、冬場は-10℃にもなり、年間の寒暖差が激しいのが特徴です。また、冬場は磐梯山からのからっ風が吹き付け、これが「風の蒸溜所」といわれる所以です。

現在ニューポットや数か月から18ヵ月程度熟成させたニューボーンなどを販売していますが、2019年12月頃から念願の3年熟成モルトウイスキーがリリースされる予定です。今から大変楽しみですね。

三和酒類「TUMUGI」
~麹文化の伝承・そして新たなスタイルへ~

ジャパニーズ・スピリッツとは本来どのような蒸留酒のことをいうのだろうか? もちろん日本で蒸留されたお酒であればこれに当てはまり、日本らしい穀物やボタニカルなどを使用すれば、よりそのニュアンスが強まることにはなるのだが……。

この問いに確固たるポリシーを持って明確な答えを出したのが、三和酒類が造る「TUMUGI」である。

ウイスキーやジンの多くが穀物中の糖化酵素によって糖化、酵母によって発酵させるのに対して「TUMUGI」では日本の国菌である麹により糖化・発酵を行う、日本の伝統的な酒造りの方法に則っている。

三和酒類は本格麦焼酎のトップブランドである「いいちこ」の製造元であり、もともと日本酒蔵4社が一緒になってできたメーカーであるため、お酒を醸す麹に対する思い入れが強いという背景がある。

「TUMUGI」のベーススピリッツは地元大分県宇佐市産「ニシノホシ」種を含む大麦麹のみで造られており、果皮等の原料を使用する為、焼酎のカテゴリーではなくスピリッツに分類されることになる。麹によってもたらされる風味を活かすため、ボタニカルにジュニパーベリーは使わず、選び抜かれた4種類の柑橘類と地元・大山町でハウス栽培されるスペアミントのみを使用している。それぞれのボタニカルを個別にベーススピリッツに浸漬し、最適のタイミングで取り出し、蒸留して原酒を得ている。

蒸留にはステンレス製単式蒸留器を使用しているが、焼酎で一般的に用いられている低温での蒸留を行うため、より華やかな原酒も得られる。また、常圧蒸留と併用することで、より複雑でふくよかな原酒となる。これらの原酒をブレンドして「TUMUGI」は造りだされているのである。

「TUMUGI」は日本の焼酎文化とボタニカルを融合させたもので、今流行のジンとは一線を画す新しいスタイルのスピリッツといえる。カクテルベースとしてウォッカやジンの代わりに使用することで、日本らしい繊細なカクテルを楽しむことができるだろう。

通常の「TUMUGI」のほか、ボタニカルとしてより日本らしさを感じられる土佐文旦のみを使用した「BUNTAN」や、ホワイトオークの新樽で90~120日ほど貯蔵した「NEW OAK CASK STORAGE」がリリースされており、さまざまな和のスピリッツを楽しむことができる。

この記事を書いた人

谷嶋 元宏
谷嶋 元宏https://shuiku.jp/
1966年京都府生まれ。早稲田大学理工学部在学中よりカクテルや日本酒、モルトウイスキーに興味を持ち、バーや酒屋、蒸留所などを巡る。化粧品メーカー研究員、高校教員を経て、東京・神楽坂にバー「Fingal」を開店。2016年、日本の洋酒文化・バーライフの普及・啓蒙を推進する「酒育の会」を設立、現在に至る。JSA日本ソムリエ協会認定ソムリエ。
谷嶋 元宏
谷嶋 元宏https://shuiku.jp/
1966年京都府生まれ。早稲田大学理工学部在学中よりカクテルや日本酒、モルトウイスキーに興味を持ち、バーや酒屋、蒸留所などを巡る。化粧品メーカー研究員、高校教員を経て、東京・神楽坂にバー「Fingal」を開店。2016年、日本の洋酒文化・バーライフの普及・啓蒙を推進する「酒育の会」を設立、現在に至る。JSA日本ソムリエ協会認定ソムリエ。