こんなちっぽけな会社でもバーのスタッフやシェフ、ハウスキーピングやオフィスのお姉さんを合わせると約20人という数になる。勿論出来る者もいれば、もっともっと精進が必要な人もいる。そして小さな会社だからこそ個々がしっかりと自分の持ち場をこなしていかなければ『Highlander Inn』として機能していかない。
幸いこの業界では珍しくHighlander Innのスタッフはそんなに入れ替わりが激しくない。居心地が良いのか、社長が素晴らしい人格者なのか???
お給料は他と比べて決して高くはないと付け加えておこう。それでも長い人では勤続10年以上になる。毎年足を運ぶ常連客からも『彼はもういないの?』と訊かれれば『明日来ますよ!』となって『彼も長いねぇ~』と続く。
しかし、この年末に各部署から主要(?)なスタッフがHighlander Innを去っていく事になった。
正直、『彼はまだ当分うちで頑張ってくれるだろう』や『彼女は本当に天職やな、うちの仕事!』と思っていた人達だっただけに、非常に驚きガックリした。
その理由は個人的な理由でどうする事も出来ず、本人達も『できれば辞めたくない!』と言ってくれたので僕はなおさら歯がゆかった。これには柄にもなくかなりガックリしてしまい、そのガックリ加減には妻もびっくりしていた。
今後の計画を僕なりに進めていて『彼女にもうちょっとホテルサイドを任せてみようかな?』や『キッチンを拡張するなら、ヤツ! 頑張ってるし、一つ昇格させてその下にもう一人見習いを?』などと想像を膨らませていた時期でもある。そして『もし、一人でやっている店やったらこんな気持ちにはならへんのになぁ……』と馬鹿な発想にもなり、10日ほどそのモヤモヤは続いた。
しかしそのモヤモヤが何故か『パッ』と消えた夜があった。
たぶん仕事が終わって自宅でウィスキーを飲んでいた時に『ハッ』とした様な気がする。
仕事とは全く関係のない昔からの友人に『実はこんなんでジメジメしてたんや!でも今気づいたわ!前見て進むしかないんやなって!』とメッセージを送信すると『そう!』と返事が返ってきた。
もう一杯だけウィスキーを飲んで寝室にむかい床に入ると『決してこれが初めてではない、そして最後でもない。これからも「え! で? いつ辞めんの……」は繰り返されるだろう、こんな歳になって何をナイーブに考えてんやろ』と思い目覚ましをセットした。
今回もまた「雨ニモマケズ、風ニモマケズ」である。