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コラム ウイスキーコラム 幻のボトルを求めて 第2回...

幻のボトルを求めて 第2回・グレンモーレンジィ

この蒸留器の写真を見たウイスキーファンの多くが、グレンモーレンジィ蒸溜所と答えられるだろう。それだけ特徴的で有名な蒸留所といえる。その華やかな香味は万人を魅了しており、スコットランドで最も飲まれているシングルモルトといわれている。

風光明媚な北ハイランドの蒸留所

スコットランド北部観光の玄関口といえばインバネス。その名の通り「ネス川の河口」にあり、歴史を感じさせる趣のある街並みが印象的だ。

ネス川沿いの小高い丘の上にインバネス城があり、その傍らにはフローラ・マクドナルド女史の像が、スカイ島へ向かうボニー・プリンス・チャーリーを心配そうに見送っている。程よくこじんまりした地方都市ではあるが、ネス湖観光の起点となっているためか人通りや観光バスは多い。ネッシーを見たい人はいまだに多いようだ。またオークニー諸島への日帰りツアーもここから出発しており、世界遺産の古代文明遺跡目当ての観光客も集まってくる。お土産屋さんも多く、スコットランドのアーティストの作品なども置いている。フリーマーケットや小洒落たカフェなどもあり、一日ゆっくり過ごしても飽きない魅力がある町である。特に早朝の川沿いの散歩は何とも言えない心地よさがある。やや石造りで北国独特の暗い雰囲気はあるが、個人的にはスコットランドで一番好きな町である(そんなにあちこち行ってはいないが……)。

この町から北ハイランドへの主要道路A9は海岸線を走る風光明媚なルート。ついつい車を停めて写真を撮りたくなってしまうようなポイント「クイーンズ・ビュー」が立て続けに現れる。特に湾にかかる長い鉄橋からの景色は一見の価値がある。ドライブ好きには堪えられないルートといえる。これをインバネスから1時間ほど北上すると、テインの町はずれに古い石組みの建物であるグレンモーレンジィ蒸溜所が現れる。

黄土色の石をくみ上げた昔ながらの建物だが、ビジターセンター内部はモダンで、蒸留所の特徴がよく理解できるアトラクションとなっている。以前はそれほどではなかったが、LVMH傘下になってからだいぶ投資されたようである。フラッグシップであるとともに、やはり観光客が多い土地柄ということもあるのだろうか。

片田舎の素朴な蒸留所から、ラグジュアリーな蒸留所へ

グレンモーレンジィ蒸溜所は、1843年にバルブレア蒸溜所の共同経営者だったウィリアム・マセソンによって創業、1847年から蒸留を開始している。古いビール工場を改造し、もともとジン用の背の高い中古蒸留器を導入したことで有名だ。ネックが5.14メートルと長い蒸留器だったが、これが華やかな風味の源となった。これまではスコットランドで一番背が高い蒸留器だったが、2019年に創業したエディンバラのホリールード蒸溜所の7メートルに抜かれてしまった。まぁ、背が高ければよいというわけではないのだが。

グレンモーレンジィ外観

その後1918年にマクドナルド&ミュアー社の所有となり、1996年にグレンモーレンジィ社に社名変更。2004年にルイヴィトン・モエ・ヘネシー社の所有となり、現在に至る。世界的なブランドの傘下となって、蒸留所はより洗練された。特にボトルはよりラグジュアリーな印象に。生産量を上げるため蒸留器も増設され、ビジター用の見学ルートもより整備された。ショップも華やかになった気がする。様々なグッズも作られ、蒸留所限定ボトルも販売されている(だいぶ高額で購入するにはなかなか勇気がいるが……)。

グレンモーレンジィとは、ゲール語で「大いなる静寂の谷」ということらしい。テインの町はずれでドーノッホ湾に面した斜面に佇んでいるロケーションからそう名付けたのだろう。テインは人口1000人程度の静かな町で、周辺は豊かな穀倉地帯である。

テインの16人の男たち

グレンモーレンジィは「テインの16人の男たち」というキャッチコピーでPRをしていたが、実際100年以上もそのような人員だったようだ。

グレンモーレンジィ テインの16人の男

1920年に撮られた白黒写真が有名だが、確かにそこにはフロアモルティング用のショベルを持った人や上等なスーツを着た人まで16名の男が映っている。生産規模が大きくなり、一時その人員は増えたようだが、現在は16名のスタッフで運営されているようだ。蒸留所に最近飾られた1996年の写真も16名が写っている。ちなみに2004年2月には、蒸留所所長、副所長、stillman 4名、mashman 4名、warehouseman 6名で16名となっている。フロアモルティングがなくなり、コンピュータ管理などが進むことで、ワンオペのような蒸留所も増えている中ではむしろスタッフが多い蒸留所といえるのかもしれない。

硬水仕込み

仕込み水は「ターロギーの泉」、スコッチとしては珍しい硬水(硬度190)だ。特にカルシウムが多く含まれているそうだが、これが酵母の働きを安定化させる効果があるとのことだ。

一般的には、硬水は糖化・発酵がうまくいかないことがあるといわれているが、エディンバラのヘリオット・ワット大学にて醸造学の博士課程を修了したビル・ラムズデン博士が言うのだから、恐らく間違いはないのだろう。博士は統括責任者として世界中を駆け巡り、セミナーを開催されていて、私も数回お会いしたことがある。とてもフレンドリーで偉ぶらない素朴な印象で説明もわかりやすく、質問にも丁寧にお答えいただいた。グレンモーレンジィといえばこの人、といってもよいだろう。1996年の集合写真でも中央に写っている。

デザイナーカスク

グレンモーレンジィを語る上で欠かせないのが、樽へのこだわりだ。特にメインに使用するバーボン樽については、他のどの蒸留所よりも強いこだわりを持って調達している。

グレンモーレンジィ 熟成庫

バーボン樽とはアメリカンホワイトオークで新樽を作り、バーボンウイスキーで一度熟成を行った樽のことで、これを払い出した後にスコットランドや日本、ラムなどの生産地に運ばれ、それぞれの酒類が詰められることとなる。基本的にスコッチでは新樽をあまり使わないが、これは樽材成分が強く出てしまい酒質とのバランスが合わないことが多いためである。

グレンモーレンジィでは、樽材の選定から行っている。アメリカはミズーリー州オーザック丘陵などで良質のアメリカンホワイトオークを選び、製材・長期間の天日干しを経て、製樽される。バーボンでは樽の内側を焦がす“チャーリング”が必須で、ここにもこだわりが。遠赤外線による樽内部への加熱 “トースティング”を施し、その後チャーリングを行う際、それぞれの加熱強度や時間などを細かく指定している。その樽を、指定したバーボンやテネシーウイスキーの蒸留所に預けて熟成を施してもらうのである。基本的には4~6年の熟成後にバーボンは払い出され、樽がグレンモーレンジィ蒸溜所へとやってくることになる。このこだわりの樽のことを特に「デザイナーカスク」と呼んでいる。

そのほか、通常スコッチでは行わない新樽での熟成も検討している。実際、今までに以下のような製品もリリースされている。

ミズーリー・オーク・リザーヴ1991-2002(1000本)
バー・オーク・リザーヴ1993-2004(1152本)

ミズーリー・オーク・リザーヴはいわゆるアメリカンホワイトオーク(クエルクス・アルバ)だが、バー・オークは亜種のようなもので、これ以外にチンカピン・オークなどもリリースされている。また、これらは新樽熟成100%だが、原酒の一部に使用した製品もリリースされている。新樽熟成の効果も把握したうえで、バーボン樽原酒とのブレンドにより、さらにふくよかな香味を具現化しているのだ。

ウッドフィニッシュのパイオニア

グレンモーレンジィは、他メーカーに先駆けて、様々な樽で数年程度の後熟・フィニッシュをかけた製品をリリースしてきた。これまでは、バーボン樽やシェリー樽で熟成したものをそのままリリースする、もしくはこれらをブレンドしてリリースするのが主だった。つまり熟成中に他の種類の樽に移すということはあまりなされていなかったのだ。

グレンモーレンジィ初のフィニッシュ製品は「1963」といわれている。1963年に蒸留して22年熟成した後、スパニッシュオロロソシェリー樽で1年ほど後熟を行い、1987年にリリースされたものである。その後、1990年代初頭にリリースされた18年も同様にシェリー樽で後熟を行った原酒も使用していたようだ。

初めてラベルにフィニッシュと明記してリリースされたのは、「グレンモーレンジィ ポートウッドフィニッシュ1975」といわれている。1975年に蒸留してアメリカンオーク樽に詰め、1990年にポート樽に移し、1994年に瓶詰したものだ。1995年にも同スペックのものがリリースされた。その後、アメリカンオークで12年熟成した後に2年間ポート樽で後熟したものが定番品としてリリースされた。

定番品としては、1996年頃からポート樽のほかにシェリー樽とマデイラ樽の計3種類の樽で後熟を行ったものがリリースされるようになった。現在はマデイラ樽の代わりにソーテルヌ樽後熟がリリースされている。

また、限定品もこれまでに多くの製品がリリースされている。コニャックやラムのほか、多くの著名なワイン樽でも後熟が行われている。ワイナリー名は明かされていないが、シャトー・ムートン・ロートシルトやロマネ・コンティ、シャプティエ社エルミタージュ、シャトー・ディケムなどなど、ワイン好きが聞いたらびっくりするようなラインナップだ。ワイン樽後熟については、2003年から数年間、定番品としてフランス・ブルゴーニュ樽で後熟したものもリリースされた。

製造工程について

2019年11月見学時の製造工程を以下に示す。

仕込水

ターロギーの泉 硬水(硬度190) 

麦芽

品種 13バレイ種
インバネス35マイル周辺から収穫
1バッチ 10トン  週320トン
Boortmalt社製(ポールズ・モルト製麦工場など)
1977年までフロアモルティング
フェノール値 ノンピーテッド   

麦芽搬入

ミル

ポーティアス社製

グリスト比 ハスク:グリッツ:フラワー = 20:70:10

仕込糖化

糖化槽 ステンレス製 フルロイタータン(2008年導入)
5時間/バッチ 32バッチ/週
1st 63.5℃ 38000ℓ
2nd  84℃   15000ℓ ⇒ 一番・二番麦汁48000ℓを発酵槽へ
3rd 96℃   25000ℓ   18℃まで冷却

グレンモーレンジィ 糖化槽

発酵

ステンレス製 12基 48500ℓ
イースト マウリ社リキッドタイプ 250ℓ
発酵時間 52~54時間
8%alc.のモロミ生成

グレンモーレンジィ 発酵槽

初溜

11400ℓ 6基 11000ℓ張り込み(発酵槽1つ分を4分割)  
バルジ型 ラインアームほぼ水平 高さ16フィート(5.14m) 
間接加熱 4時間
冷却器 シェル&チューブ
24%alc.の初留液

再溜

8200ℓ 6基
バルジ型 ラインアームほぼ水平
69%alc.のニューポット

ミドルカット
前溜 30min  80~72%alc.
本溜  3.5hr   72~60%alc.
後溜  2hr   60~ %alc.

*2020年5~9月に2基追加工事中

新しい蒸留塔

熟成

樽詰め度数 63.5%alc.
加水は仕込水で行う!
バーボン樽ファーストフィル+セカンドフィルがベース
ジャック・ダニエル、ヘブンヒル
エクストラマチュアード 1994年から先駆け
現在、シェリー樽(ラサンタ)、ポート樽(キンタルバン)、
ソーテルヌワイン樽(ネクタードール)
プライベートエディション  2009年ソルタナPXから、毎年リリース

蒸留所熟成庫 14棟 多くはダンネージ式+11樽詰みのラック式
現在45万樽貯蔵
鏡板色 赤→1stフィル 黒→2ndフィル

年間生産量 650万PAℓ

グレンモーレンジィ 熟成庫2

ティースプーンモルト

グレンモーレンジィの特徴の一つとして、ボトラーズに樽を供給しないことが挙げられる。したがって、ボトラーズからは「グレンモーレンジィ」はリリースされていない。とはいえ、生産したものすべてをグレンモーレンジィとして販売しているのかというとそうではない。実際は、他蒸留所のモルトを少量加えたブレンデッドモルト(tea spoon maltともいわれている)「WESTPORT」として、他社に供給している。以前は傘下にあったグレンマレイ蒸溜所の原酒が使われていたが、今は不明だ。

蒸留所詰め以外で「グレンモーレンジィ」がシングルモルトとしてリリースされたのは、スコッチモルトウイスキーソサエティSMWSくらいであろうか。2004年にSMWSの共同経営者となったので、シングルカスク・カスクストレングスでそれなりの樽がリリースされた。現在は共同経営から外れたと聞いているので、今後はあまりリリースされないのではないだろうか。

スタンダードボトル「オリジナル10年」をテイスティング

グレンモーレンジィ オリジナル10年

グレンモーレンジィらしさが詰まっている「オリジナル10年(アルコール度数40%)」。スコットランドで最も飲まれているモルトウイスキーであり、日本でも愛飲者が多いボトルである。バーボン樽熟成の特徴が余すことなく感じられ、ある意味究極のボトルといえる。

外観

輝き、透明感のあるイエロー

アロマ

穏やかにやさしく語りかけてくる印象。香り立ちはやや良い。フレッシュな柑橘(ライム・オレンジ)、白桃、バナナ、洋ナシ、ドライアプリコット、オレンジピールバニラ、シナモン、白いパウダースパイス、上白糖、優しいハチミツ、フレッシュミント
様々な甘い香りが複雑に絡み合っている

フレーバー

アタックで優しい果実の甘味、心地よい渋味を感じ、その後やわらかい酸がバランスよく広がる。余韻はやや長め、心地よい果実や樽の風味がしっかりと残る。

総合

全体的に華やかでバランスがよい。心地よい甘さがしっかりと楽しめる。

コレクターズ・ガイド

グレンモーレンジィの蒸留所詰めボトルについては、この上ない本がある。『GLENMORANGIE Collector’s Guide』だ。

グレンモーレンジィ コレクターズブック

著者はウイスキー愛好家でコレクターでもあるRalf BernhardtとHans Georg Würsching。彼らは「Keepers of the Quaich」にも選ばれている。出版当時の蒸留所所長だったGraham Eunsonが前書きを寄稿しており、ある意味お墨付きを与えられたものである。2005年に本書はリリースされたが、限定品を含めて、ほぼすべてのボトルが掲載されている。文字どおりコレクターや愛好家にとっては、大変参考になる本である。

定番である10年物のボトルについても、その変遷が分かるように掲載されている。様々な樽で後熟を行ったウッドフィニッシュシリーズについても網羅されている。その他、限定品や蒸留所スタッフ向けのボトルまでまとめられていて、これ以上の本はないだろう。

幻のボトルを求めて

限定ボトルを数多くリリースしているグレンモーレンジィ。各ボトルに特徴があり、こだわりも強く感じられるため、どのボトルを幻として選べばよいのか判断に大変困る。今回は、私の独断で4本選んでみたが、もちろんそれ以外にも幻というにふさわしいボトルがあることも承知しているので、ご了承いただきたい。先の『コレクターズ・ガイド』を見直しても、幻だなと思うボトルは10本以上挙げられるのだから。

まずは、先にも挙げた「1963」。グレンモーレンジィ・フリークなら必ず飲んでみたい、ボトルを持っていたいと願うものだろう。残念ながら私の手元にボトルはなく、2回ほど飲んだ程度の経験しかない。現在のハウススタイルであるエレガントで綺麗かつ都会的なウイスキーというよりは、しっかりと穀物や樽のニュアンスが効いた飲みごたえのある印象だったよう記憶している。20年以上前なので、外れていたらご容赦いただきたい。

再度スペックを記すが、グレンモーレンジィ最初のフィニッシュ製品であり、1963年蒸留・22年熟成後、スパニッシュオロロソシェリー樽で1年ほど後熟、1987年にリリースされたものだ(アルコール度数43%)。

次は「ELEGANCE」。21年熟成で、1998年頃に限定でリリースされた(アルコール度数43%)。その名前の通り穏やかな香味もさることながら、このウイスキーの幻たる所以はグレンモーレンジィの特徴的な蒸留器を模したデキャンターに入っていることだ。もちろん実際の割合よりネックは長くないが、それとわかる特徴をとらえた形をしている。バーでは難しいのだが、ご自宅であればスタンダード品を入れて楽しんでいただいても良いだろう。

中身がなくなった後も、しばらくは店内に飾っていたが、グレンモーレンジィを愛するお客様に差し上げることにした。そのためこちらも写真がなく申し訳ないが、ご了承いただきたい。検索すればすぐに見つけられると思う。

次は「THE CULLODEN BOTTLE」。

グレンモーレンジィ カロ―デン

カローデンはインバネス郊外の地名で、1746年4月16日にスコットランド士族を中心としたジャコバイト軍とイングランド軍との間で「カローデンの戦いTHE BATTLE OF CULLODEN」が起こった場所である。この時の中心人物は、スコットランド国王ジェームズ7世の孫であるチャールズ・エドワード・ステュアートと、カンバーランド公ウィリアム・オーガスタス。チャールズはボニー・プリンス・チャーリーと呼ばれ、その通り紅顔の美少年だったとのこと。カンバーランド公は、その後の残虐な残党狩りから屠殺者ブッチャーと呼ばれた。この後のイングランドによる弾圧(キルトやタータンの着用禁止や氏族制度の解体など)はスコットランド人にとってこの上ない仕打ちとして記憶に刻まれることとなった。

このボトルは1971年蒸留、1995年10月25日にボトリングされた2500本限定品(アルコール度数43%)。古めかしいハンドメイドのボトルで、蝋封がなされている。このボトルも数回飲んだだけだが、やや枯れて落ち着き、心地よい樽のニュアンスが印象的であった。「カローデンの戦い」の250年後にボトリングされたが、なんとなく語呂合わせ感が否めない……BOTTLE、BATTLE……ちょっと不謹慎な感じもする。

ちなみにこのボトルは私がスコットランドで最初に買ったもの。まだウイスキーについてあまりよく分かっていない時期だったが、それなりの金額だったのでとりあえず買っておこうと……旅先では財布のひもが緩むものだ。

最後は「DISTILLERY MANAGER’S CHOICE」。第3弾までリリースされたこのシリーズの最初のボトルである。

グレンモーレンジィ マネージャーズチョイス

1981年5月14日蒸留、1998年3月24日ボトリング、320本限定のシングルカスクである(アルコール度数54.5%)。ラベル一枚一枚にデータが手書きされており、濡れた布巾で拭いたときににじんでしまったのが残念。バーボン樽で16年熟成された、前出のラムズデン氏お勧めのボトルである(氏のサイン入り)。ウッドフィニッシュなど様々な手法で工夫を凝らした商品をリリースするグレンモーレンジィだが、やはりそのベースとなっているのは良質のバーボン樽での熟成だと、改めて感じさせてくれる素晴らしいボトルである。華やかな果実や花の甘さ、樽の心地よい甘苦み、熟成感も相まって、ある意味バーボン樽熟成の頂点ともいえる印象である。

このボトルはツアーで蒸留所を訪れた直前のリリースで、運よく購入することができた。ツアー参加者のほとんどが購入したためか店頭のボトルがなくなり、ラムズデン氏自ら倉庫から段ボール箱を抱えて補充されていたのが印象深い。また、そのためなのか、全員がお土産としてクエイクをいただいたのもしっかりと覚えている。1998年当時は、まだ蒸留所を訪れる人も少なく、蒸留所側も見学者ウェルカムな時期で、所長自ら案内をしてくれるようないい時代だった。

最後に

様々なボトルがリリースされ続けているグレンモーレンジィ。コレクター泣かせともいえるが、どれもハイクオリティなので仕方ない。昨今は毎年リリースされる限定ボトルですら入手が困難になっている。 ベースとしてのバーボン樽熟成が妥協なきこだわりをもってなされているのだから、その後の処理次第でいくらでも面白いボトルができてしまう。今後も幻のボトルといえるようなものが数多くリリースされることだろう。

この記事を書いた人

谷嶋 元宏
谷嶋 元宏https://shuiku.jp/
1966年京都府生まれ。早稲田大学理工学部在学中よりカクテルや日本酒、モルトウイスキーに興味を持ち、バーや酒屋、蒸留所などを巡る。化粧品メーカー研究員、高校教員を経て、東京・神楽坂にバー「Fingal」を開店。2016年、日本の洋酒文化・バーライフの普及・啓蒙を推進する「酒育の会」を設立、現在に至る。JSA日本ソムリエ協会認定ソムリエ。
谷嶋 元宏
谷嶋 元宏https://shuiku.jp/
1966年京都府生まれ。早稲田大学理工学部在学中よりカクテルや日本酒、モルトウイスキーに興味を持ち、バーや酒屋、蒸留所などを巡る。化粧品メーカー研究員、高校教員を経て、東京・神楽坂にバー「Fingal」を開店。2016年、日本の洋酒文化・バーライフの普及・啓蒙を推進する「酒育の会」を設立、現在に至る。JSA日本ソムリエ協会認定ソムリエ。