ビールは瓶、缶、樽、どれもごく普通に流通しています。
大手メーカーでは、同じビールをこれらすべてのパッケージで提供していることもめずらしくありません。
同じ製品を全く異なるパッケージで出荷するのは、他の醸造酒には見られないビール独特の特徴です。
液体の容器であるCask(カスク)、Barrel(バレル)、Keg(ケグ)という英語は日本語に訳すと全部「樽」になるので区別がつきませんが、普通、ビールを入れて販売されている樽はケグです。まれにカスクの場合もありますが、それは別の回でお話しましょう。
ケグは20世紀になって普及した、外部から圧力(ほとんどの場合炭酸ガス)をかけて、ビールを押し出す容器で、現在、ほとんどのケグはガスの入り口とビールの出口が一体になっているSankey Keg(サンキー ケグ)と呼ばれるタイプのものです。
かつてはケグといえばステンレスでしたが、今やプラスチックのものも多く、基本的には使い捨てです。空っぽのケグを遠くまで送り返すのは不安ですが、輸入ビールはプラスチックケグが多いです。
ケグからビールを取り出すには、カプラーという器具をケグの出入り口に取り付けます。ケグの出入り口の形状には主なものでもD・S・A・G・U・Mと6種類もあって、まったく互換性はないのでカプラーもそれぞれのものを用意しなくてはなりません。
国産ビールはキリンが使っているGとそれ以外が使っているSですが、ヨーロッパからの輸入ビールはAが多く、アメリカからの輸入ビールはDがほとんどです。
つまり、たくさんクラフトビールを出す店では、いろんな種類のカプラーを用意しなくてはならないので大変なのです。