History in a glass No7
ドイツ・レーマーグラス
ドイツのレストランや居酒屋で、今なお使われ続けている、ワイングラス「レーマー杯」。
その歴史は古く、15~16世紀からドイツで作りだされ、次第にオランダに伝わり、方々の工房で作られたワイングラスである。
レーマーという名の由来は諸説あり、「ローマ的」とか、ドイツに葡萄をもたらした人物の名前とか、「祝杯」を意味する言葉であるとか、様々である。
レーマーグラスの特徴はいくつもあるが、何といってもステム部分の装飾にある。螺旋状になった台座や、木苺を模った突起状の飾りを融着させてあるものが数多くみられる。これらは食物を鷲掴みし、油まみれの手でもグラスが持てるようにと工夫されたものであるという。真意は解らないが、滑り止めというのは確かなようだ。
もう一つ、アンティークレーマーの多くは透明だが、薄い緑色のものある。制作時に木炭を原料にすると、その中に含まれる鉄分が色を与えてしまうそうだ。この発色が独特の雰囲気を醸し出して重宝されていたが、現在では環境の問題もあり、着色したものが世に出回っている。
ドイツで誕生し、オランダで大量に生産されたため、17世紀のオランダ絵画の中にレーマーグラスを描いたものがしばしば登場する。ヘダ・ウィレム・クラースの静物画には酒杯が多く描かれ、そのほとんどがレーマーグラスである。
写真のレーマーグラス3脚はアンティークで、おおよそ120年くらい前のグラスになる、(ドイツ製)。本来はワイングラスなのだが、小振りなため、カクテルグラスとして利用している。
そういえば、あまりバーでレーマーグラスを見かけたことはない。