前回はウイスキーのテイスティングについてふれたが、今回も同じテーマでまた別の角度から話をしてみたい。
前回のコラムでは「皆さんもぜひ、ご自身に合ったテイスティング方法を見つけていただけたらと思う。」と締めくくったが、とまどっているビギナーもいらっしゃるだろう。まず最初は、メーカーやウイスキー団体の奨励するやり方をぜひ参考にしてほしい。昨今は詳しい教本もあるし、ウェブで検索すればいくらでも見つかる。便利な時代になったものだ。
私がウイスキーに興味を持ち始めた90年代初頭は、ウイスキーのテイスティングはワインほど一般的ではなかった。日本国内ではもちろんのこと、海外でも一部の好事家の趣味のレベルで、蒸留所のブレンダーを別にすればウイスキーのテイスターはマイケル・ジャクソンさんをはじめ、数えるほどしかいなかった。そんな時代であったから、私のウイスキー道はまさしく「けもの道」だったといえるだろう(笑)。
インターネットもない時代だ、頼りになるのは己の五感と限られた書物だけ。私にはウイスキーテイスティングの先生はいない。強いて挙げるなら故マイケル・ジャクソンさんだが、「吉村流テイスティング法」は独自で考案したものだ。
「テイスティングの香味表現が難しくて・・」という相談をよく受ける。
最初は、「好きか嫌いか、甘いか苦いか、濃いか薄いか」くらいの判断で、まったく問題ない。スキルについては徐々にステップアップしていけばいいのであって、何より「テイスティングを楽しむ」ことが第一。そうでなければ、きっと長続きしない。 またテイスティングの目的も各々が自由に決めればよく、飲んだウイスキーの記録を残すためでもよければ、好みのウイスキーを見つけるためでもいい。
まずはいろんなウイスキーを飲んでみて、感じたことをなるべくたくさんアウトプットするのがいいだろう。そうすれば、次第に「量」は「質」へと変化していく。以上拙いアドバイスではあるが、皆さんのウイスキーライフ研鑽の一助となれば望外の喜びだ。