今回のペアリング
素材を置き換えるペアリングの考え方
「シシリアン・パッション」
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「凝縮させた鶏肉と新じゃがのピュレ なめこのエキス・ジュレ」
今回のペアリングは、もともと相性の良い素材を同類の成分や植物の属性などから考えて、別の素材に置き変えることによって意外な組み合わせとなるケースについて、その考え方を説明いたします。
植物や野菜が様々な属性や科に分けられているのは、みなさんご存知かと思います。この属性や科を調べてみると、同じもの同士はその成分などが多く類似していることに気付かれるはずです。その視点から、普段薬味やソースに使うスパイスやハーブの属性を調べることで、意外な組み合わせが見えてくることがあります。
今回の例は【ラベンダー】です。
前回カツオの時にもラベンダーを使いましたが、それも含めた上で考えをまとめる順番を示します。
ラベンダーはシソ科 → シソ科ならば、醤油や刺身、キノコ類とも相性がいいはず → 膨らみをもたらせる酒のベースを考える → まとめ役を考える → 料理との色合いのコントラストを考える → 料理とカクテルの舌触りを合わせる → フィニッシュを考える
といった順番で考えていきました。
カクテルと料理双方の中心となるものの味を決めた上で、そこから肉付けしながらペアリングを組み立ててみるのも面白いのではないかと思います。
カクテル:「シシリアン・パッション」
- バカルディ・カルタ・ブランカ:30ml
- ブラッドオレンジ:40ml
- ラベンダー・ウォーター:10ml
- アガベシロップ:1tsp
- ブラー・グランソラージュ:5ml → グラスリンス
- ガーニッシュ:ドライ・ブラッドオレンジ
技法:シェイク
☆料理
「凝縮させた鴨肉と新じゃがのピュレ なめこのエキス・ジュレ」
レシピ:10人分
「凝縮させた鴨肉」
鴨胸肉 1枚
塩10g、ジンジャーパウダー小さじ1/4、ガーリックパウダー1/4、カルダモンパウダー1/4、ブラックペッパー少々
鴨胸肉に香辛料と塩、ブラックペッパーを刷り込み、ジップロックに入れて2日間冷蔵庫で寝かせる。その後、流水で4時間塩抜きをしてから、冷蔵庫で一晩乾燥させる(脱水シートがあればなおよし)。油をひかずに熱したフライパンで皮目から焼き、両面がほどよくきつね色になったらアルミ箔に包んで30分寝かせる。
「新じゃがのピュレ」
- 新じゃが:3個
- 牛乳:200ml
- 塩:ひとつまみ
- ヘーゼルナッツオイル:10ml
新じゃがの皮をむいて茹でる。竹櫛が通るくらいになったらざるにあけて、裏ごしする。
牛乳と塩、ヘーゼルナッツオイルを混ぜて粗熱を取った後に、冷蔵庫で冷やしておく。
「なめこのエキス・ジュレ」
- なめこ:100g
- 水:300ml
- 塩:ひとつまみ
なめこと水200mlを鍋に入れて、弱火で煮込む。水分が半分になりとろみが出てきたら、残りの水100mlを加えて、さらに半分になるまで煮込む。なめこをざるにあけて、煮込み汁はボールにとっておく。なめこを適当な大きさに刻み、煮込み汁と合わせて塩で味わいを整える。
*盛り付け
新じゃがのピュレをグラスに詰めて、鴨肉を3mm角に切ったものを乗せる。上からなめこのエキス・ジュレをかけて、季節のハーブを飾る。
効果
今回は、カクテルが料理を美味しく楽しむためのソースがわりにもなっております。なめこを煮込むと特有の苦味が出てきますが、これがラベンダーと反応して苦味を相殺し、料理に深みを与えます。またカクテルにも旨みとキレが出てくることにより、口の中がフラットになって繰り返し楽しみたくなるペアリングとなっております。