フランスの北西部ノルマンディー地方は、ブドウ栽培の北限より北に位置するため、質の良いワインは造ることができません。そのため、この地では古よりリンゴからお酒を造るようになりました。シードルやアップルブランデーなどがそれです。
アップルブランデーの中で、特に厳しい条件をクリアしたものがカルバドスです。カルバドスはその深遠なアロマによって飲み手を魅了します。そのアロマをもたらすのは、この地ならではの選ばれしリンゴです。
そもそもノルマンディーには800種類以上ともいわれるリンゴがありますが、その中から48種類のみがカルバドスに使われます。リンゴの収穫は、まず木を揺すって実を地面に落とし、それを手もしくは機械で拾い集めます。その後、風通しの良い場所で数週間程度、追熟させます。これらのリンゴは果汁の酸とタンニンの量で、「苦味種」「甘苦味種」「甘味種」「酸味種」の4種類に分けられます。リンゴ果汁の甘味はその後のお酒のアルコールを、酸味は香味の鮮烈さを、苦味はボディー感をもたらします。カルバドスの中で最も規格が厳しく上等な産地であるACペイ・ドージュでは、使用されるリンゴの割合は「苦味種」「甘苦味種」が70%以上、「酸味種」は15%以下と決められています。
ちなみにカルバドスでは、リンゴのほかに数種類の洋ナシの使用も許可されており、エリアによってその割合も決められています。洋ナシはリンゴと比べて、穏やか・軽やかで甘味が強く、独特の芳香を持っています。
カルバドスは、この選び抜かれたリンゴと洋ナシのブレンドによって、この上ない香味を有し、フランスが世界に誇るブランデーのひとつとなっています。