ハイボールに合うウイスキーって何でしょうか?
ソーダで割るのだから廉価なものでいいのでは……本当にそうでしょうか?
今回は身近になったハイボールの魅力・可能性について、あらためて見直してみましょう。そこにはもう1歩大人の奥深い楽しみがあります。
そもそも、ハイボールって何?
一般的にはウイスキーのソーダ割りをハイボールと言いますが、広義ではスピリッツやリキュールを、ソーダやトニックウォーターなどの炭酸飲料やフレッシュジュースなどアルコールの入っていない飲料で割ったものを指します。ですので、ジントニックやスクリュードライバーなどのカクテルもハイボールの一種と言えます。
ハイボールの語源については諸説あります。
一つ目は、アメリカ開拓時代の鉄道のボール信号。列車が停車する際、その合図として棒の先に付けたボールを上に掲げていました。その際にウイスキーのソーダ割りが供されていたので、ハイボールと言われるようになった……という説。
二つ目は、イギリス・ゴルフ場のカウンターにてウイスキーを飲んでいた人が、急に打順になったのを知らされて、慌ててチェイサーのソーダにウイスキーを入れて飲んだ。すると大変飲みやすく爽やかでおいしかった。その時、高く打ちあがったゴルフゴールが飛んできたので、ハイボールと名付けた……という説。
三つ目は、炭酸の泡がグラスの中で上がっていく様子から、ハイボールと名付けた……という説。
どれが正解ということでもないようですので、ご参考までに……。
ハイボールのソーダは何がいいの?
ソーダとは、炭酸水とも言われるように、水に炭酸H2CO3が溶けたものです。
そのため、やや酸味を感じます。多くのソーダは、水と二酸化炭素CO2に圧力をかけることで造られています。この時、用いる水が天然水なのか純水なのかで、出来上がるソーダの特徴は変わります。このように人工的に造ることができるソーダですが、湧水などで自然に得られる場合もあります。
ソーダのポイントは、ガス圧と泡の大きさです。ガス圧は、酸味や刺激の強さに寄与します。泡の大きさは、刺激の強さと香りの立ちに寄与します。ガス圧が高いと泡が大きくなりそうですが、ガスの溶かし方によって異なりますので、直接的には関係ありません。
泡が大きいソーダは、香りも立ちますが、パチパチとして刺激も強い傾向にあります。そのためバーボンやアイラモルトのような個性豊かなウイスキーに向いていると考えられます。逆に泡の細かいソーダは、あたりがやわらかいので、品の良いブレンデッドやスペイサイドモルトに向いているのではと考えられます。
これはあくまで傾向ですので、いろいろと試しながらご自身のお好みを探してみてくださいね。
定説を打ち破れ!1歩先行くハイボールの楽しみ
ハイボールのウイスキーといえば、若くリーズナブルなブレンデッドという方も多いと思います。若いブレンデッドはグレーンの割合が多く、軽快な印象となります。ハイボールにすると、グレーン原酒由来のキレの良さが、よりすっきりとした味わいをもたらしますので、気軽にぐいぐいと楽しむ時や、食事と合わせる時に向いています。
一般的にハイボールには、樽やオイリーさなどのニュアンスが少なく、すっきりとしたウイスキーが向いていると考えられています。そのため、若いブレンデッドやモルトの中でも穏やかなスペイサイドモルトが好まれています。
でも、ハイボールが身近になった今こそ、固定観念を取り払って、いろいろなウイスキーでハイボールを楽しんでみるのもいいのではないでしょうか!?
バーでハイボールをじっくりと味わってみるのも楽しいですよ。そこには、一歩大人な世界が待っています。
熟成ブレンデッド・ハイボールの芳醇な世界
ブレンデッドウイスキーは、様々なモルト原酒とグレーン原酒を混ぜ合わせることで、複雑ながら飲みやすく、飲み疲れしない、絶妙なバランスのウイスキーになります。
特に12年や18年などの熟成ブレンデッドは、モルトウイスキー原酒の割合が多くなり、より個性が豊かに感じられます。ブランドごとの違いもはっきりとしてきますので、いろいろと飲み比べてみるのも楽しいですよ。
これらをハイボールにすると、よりまろやかで深みのある味わいを楽しむことができます。じっくりと時間をかけて味わうことで、よりリラックスした大人の時間を過ごせることでしょう。
モルトウイスキーハイボールの華やかな個性あふれる世界
モルトウイスキーでハイボールなんて……贅沢な!もったいない!!
そんな声も聞こえてきますが、お気にせずいろいろと試してみましょう!!!
そこには、より様々な可能性と新たな発見・楽しみがいっぱい詰まっています。
モルトウイスキーは、グレーンウイスキーが含まれないので、ブレンデッドよりも余韻が長く続きます。その余韻はモルトが持つ力強さゆえ芳醇で心地よく、また泡によって香りが引き出されるので、個性をより強く感じることができます。
ハイボールを数杯飲むときなどは、同じ銘柄のままもいいですが、いろいろと変えてみると、よりハイボールが楽しめますよ。
スコッチ・スペイサイドのハイボール
華やかなスペイサイドモルトは、ハイボールにすることでよりフルーティーで爽やかな香りが楽しめます。味わいは繊細ですが、モルトゆえの力強さがあり、余韻に心地よい風味がじわじわと残ります。じっくり味わう大人の方におススメです。
スコッチ・アイラモルトのハイボール~
アイラモルトはピート由来のしっかりとした香味が特徴です。
ハイボールにするとその香りがよりはっきりと感じられ、味わいもスモーキーな余韻が心地よく続きます。個性的なウイスキーですが、その独特の風味の虜になり、ついつい杯を重ねてしまいますよ。
ジャパニーズ・モルトウイスキーのハイボール
日本のモルトウイスキーは、各メーカーのコンセプトがはっきりと感じられます。それは歴史的な背景や創業者の思いが形となって表れているからです。
ハイボールではどれもバランスのよい仕上がりとなりますので、日本のウイスキー文化に思いをはせながら、じっくりと味わってみるのもよいでしょう。
カスク・ストレングスのハイボール
樽出しのまま加水せずボトリングするのが、カスク・ストレングスのウイスキーです。
当然アルコール度数も高く、通常は50%以上、高いものだと60%を超えるものもあります。通常のウイスキーよりもしっかりとした強い個性・フレーバーを楽しめますので、ハイボールでもじっくりお楽しみいただければと思います。
あらためて感じるバーボンの魅力:バーボン・ソーダの底力
アメリカが世界に誇るウイスキーがバーボンです。ケンタッキー州で多く造られていますが、昨今はブームと相まって、シアトルなどの西海岸やシカゴなど北部をはじめ、全米中で造られるようになってきています。
その法定義や製法から、原料であるトウモロコシの甘みと新樽由来の香味が特徴的なウイスキーです。スタイリッシュなイメージもありますが、比較的ボディーもしっかりしていますので、少しワイルドな感じで楽しむのもいいでしょう。
バーボンをハイボールにすると、その個性はより花開きます。熟した果実やメープルシロップのような甘さが際立ち、樽のふくよかな風味がより心地よく楽しめます。
香味がしっかりとしていますので、森林の香りにも負けない力強さがあります。アウトドアでのバーベキューやキャンプファイヤーなどで楽しむのもよいでしょう。バーボンは内側をしっかりと焦がした新樽を使わなくてはならないので、これによってもたらされる香味は、たき火や肉などの焦げた香味とも共通していますので、相性が悪い訳がありません。特に豚肉との相性は素晴らしいので、ハムやソーセージのソテーと一緒に楽しんでみてください。豚肉の脂肪がより甘く感じられます。この時は、より力強いバーボンのハイボールがいいですね。
バーで楽しむのなら、やわらかく香りのよいバーボンでのハイボールはいかがでしょうか。そのままでも十分に楽しめますが、ガーニッシュとしてフレッシュミントやオレンジスライスやピールなどを添えた、よりバランスの良いエレガントなハイボールがおススメです。
爽やかな果実感!カルバドス・ハイボール『カルボール』のすすめ
カルバドスは、フランスの北西部ノルマンディー地方で造られるリンゴのブランデーです。その芳醇なアロマは、多くの人々を魅了してやみません。
ブランデーは、そのままで香りを楽しみながら飲むものと思われるかもしれません。もともとブランデーの香りは大変強く、十分に開くのに時間がかかることがありますが、ソーダと合わせることで、その香りをよりひき立たせることができます。
特に若いカルバドスはハイボールにはうってつけです。そのフレッシュでみずみずしいアロマは、ソーダと合わせることでより爽やかに引き立ちます。口にすると、心地よい酸味や優しい甘味が広がり、余韻に爽やかなリンゴの風味がしっかりと残り、大変心地よいフレーバーが感じられます。夏の昼下がりなどにも、爽やかに楽しめること間違いなしです。ガーニッシュとしてフレッシュミントやローズマリー、スライスしたリンゴなどを添えると、よりふくよかで複雑なアロマとなり、おしゃれでエレガントな一杯になります。
程よく熟成したカルバドスのハイボールは、泡のきめ細かいソーダをやや控え目に加えてじっくりと味わうと、その深遠なアロマが引き立ち、この上ない飲み物となります。こちらは落ち着いたバーでじっくりと味わいたいですね。
カルバドスのハイボールを、これから「カルボール」呼ぶのはいかがでしょうか!? この爽やかですっきりとした香り高いハイボールをもっと気軽に楽しんでみませんか……。
リンゴのワイン・醸造酒であるシードルもよいですが、この夏は「カルボール」を是非お試しください!!!