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お酒のある風景

たいていの酒飲みは、通っている店で「常連」扱いされたいと思っている。私もあこがれるけれど、最初からあきらめている。

お邪魔したお店で、料理も酒も店主も気に入って「また来ます!」と力強く約束して店を出たのに、つい別の店に浮気してしまう。当然、再訪するころにはかなりの時間が経っており、予約の電話口で「前に一度お邪魔しまして…」などとしどろもどろになるのがオチだからだ。

そもそも常連とは何か。名居酒屋の常連である知人と、差しつ差されつ、「常連の条件」について激論を交わして以下のように合意した。

①店主に名前を覚えられる。ここからすべてが始まる。

②店主に別の常連を紹介してもらう。「あ、山田さん、こちらの方、  常連の佐藤さん」という具合。特別扱いしてもらったみたいでちょっとうれしい。同様に、毎回同じ席に案内してもらうのもうれしい。

③店主催の「常連さん限定イベント」に誘われる。

④店のまかないを振る舞われる。素人が喜ぶ「裏メニュー」ではない。看板まで飲んで、その後の夜食をスタッフと食べるのだ。その延長でスタッフだけの飲み会に誘われるようになれば、立派な常連。

⑤店主の人生相談に乗る。よりプライベートな領域に踏み込むわけだが、店主と恋仲になるのは御法度。

⑥辞めるスタッフの最終日に、花束やはなむけの品をプレゼントする係を拝命する。当然、自腹である。

常連は一夜にして成らず。

店がテレビ番組で紹介される時には、背後で飲んでるお客さんとして「背中あるいは横顔」で出演するのも常連の大切な仕事だそうだ。騒がず、カメラを見たり撮影風景を写真に撮ったりせず、リラックスして呑んでいる風を装う。「ひたすら呑んで悪酔いしましたよ。背中もバリバリにこった」と常連氏。飲み代は当然、自腹。常連もなかなか大変なのである。

こうなりゃ私は、もっぱら常連さんに連れていってもらう「コバンザメ作戦」で行こう。常連の「お連れさま」待遇で十分満足であります。

この記事を書いた人

檀稚希(だん・わかき)
檀稚希(だん・わかき)
1966年福岡県生まれ。東京在住。ライター。趣味は読書、山歩き、温泉、居酒屋。独り呑 みは得意なほうで、自称「日本手酌連盟」会長。ありあわせの材料で何か作って家で飲む のも好き。
檀稚希(だん・わかき)
檀稚希(だん・わかき)
1966年福岡県生まれ。東京在住。ライター。趣味は読書、山歩き、温泉、居酒屋。独り呑 みは得意なほうで、自称「日本手酌連盟」会長。ありあわせの材料で何か作って家で飲む のも好き。