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知られざるサマゴンについて

ロシアで造られているサマゴンという名の蒸留酒を御存知だろうか?

サマゴンとはСам(自分)、Гнать(蒸留する)という言葉からСамогон(サマゴン)と呼ばれ、いわゆる密造という言葉に当てはまる。原料は何でも良い。安価なのは砂糖と水とイースト菌のみでアルコールを造り、単式蒸留器で蒸留する。少し凝ればジャムも使う。きっちりとやるタイプはライ麦、小麦、じゃがいもなどの穀物類。

ロシアではこのサマゴンが横行する時代がある。

その一つはロシアの禁酒法時代だ。アメリカにおいての禁酒法は酒呑みであれば周知の事実だろうが、ロシアにも禁酒法の時代があったのだ。それが1914年〜1925年。酒の飲み過ぎによる男性の平均寿命の短さ、倫理の低下、精神疾患者が多く、社会問題となった為の策である。ロシア革命を経てソビエト社会主義連邦が誕生した1922年以降も引き継がれた。段階的にビール・ワインは認可されたものの、ウォッカに関しては最後まで禁制。しかし財政が圧迫し撤廃。

二度目は1985年、ゴルバチョフ共産党書記長による禁酒法ではないが節酒法令。こちらも同様の理由での法案であるが、やはり財源圧迫を招き、後のソビエト崩壊に伴い撤廃。

これらの時代に、ロシア国内では砂糖不足を招くほどのサマゴンブームが訪れる。手に入らなければ自分達で造る! 何としても手に入れる!! ロシアの強さが伺え、たくましい限りである。

現在、サマゴンはロシア国内でも廃れゆく文化である。廃れるというよりは容易にアルコールが手に入る便利な世の中。先日、ウラジオストックへゲストバーテンダーとして招いてもらった。ロシア人のバーテンダーに「サマゴンを飲みたい!」と所望したら用意してくれた。穀物類で作ったサマゴン。いわゆる単式蒸留器で作ったウォッカ。案外美味しいのだ。

この記事を書いた人

鹿山 博康
鹿山 博康https://ameblo.jp/kayama0927/
1983年生まれ。20歳の時にバーテンダーを志す。2013年7月独立し、アブサン・ジン など薬草酒を中心としたバー、Bar BenFiddichを開業する。自身の畑を外秩父の麓・ときがわ町に所有し、そこで採取したボタニカルをカクテルに使う。2015年ボタニスト・ジン・フォリッジ・カクテルコンペティション 優勝。2016年『drink nternational』より、「AsiaBest Bar 50」にて21位に選出される。
鹿山 博康
鹿山 博康https://ameblo.jp/kayama0927/
1983年生まれ。20歳の時にバーテンダーを志す。2013年7月独立し、アブサン・ジン など薬草酒を中心としたバー、Bar BenFiddichを開業する。自身の畑を外秩父の麓・ときがわ町に所有し、そこで採取したボタニカルをカクテルに使う。2015年ボタニスト・ジン・フォリッジ・カクテルコンペティション 優勝。2016年『drink nternational』より、「AsiaBest Bar 50」にて21位に選出される。