History in a glass No8
ホローステムグラス
主に19世紀末から20世紀初頭において作られた、ソーサー型シャンパングラスの中に、ステムが空洞になったグラスがある。
本来このグラスは、その昔、ワインやシャンパーニュの醸造所で、澱を沈めて飲めるようにと、醸造家が日常的に使っていた物だそうだ。そのためか、このグラスの正式な名称は不明で、「Hollw stem」や「Straw stem」と呼ばれることもある。その後、造形美と遊び心からか、世界各地で洗練されたフォルムに作り替えられ、世に出された。
バカラやサンルイの金彩を施されたもの、イギリスのグラヴィールを施されたもの、ベルギーのカットが施されたもの、更にはアメリカにも渡り、ホローステムは作られた。いずれも1900年頃のグラスで、古き良きヴィクトリア様式は可憐である。
もうひとつ、このグラスはカクテルグラスとして使用すると、とてもよく映える。
実際にグラスが作られていた当時は、イギリスでのカクテルブームにも重なるので、どこかのバーでカクテルグラスとして使われていたのかもしれない。
折角なので、「シャンパンカクテル」を作ってみる。このカクテルも歴史が古い。レシピは簡単で、角砂糖にビターズを浸したものにシャンパンを注ぐだけだ。今回はステムを強調するために、ビターズではなくグレナデンシロップを用いた。
映画『カサブランカ』で「君の瞳に…..」と言って乾杯するのもこのカクテル。フルート型のシャンパングラスより断然、ソーサー型で作りたいものだ。