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ジャン=ポール・メッテ 来日セミナーレポート

2017年10月30日、目白田中屋にて横浜君嶋屋・目白田中屋共催の「ジャン=ポール・メッテのセミナー&試飲会」が開催されました。ジャン=ポール・メッテはフランス・アルザス地方において、フルーツブランデー(オードヴィー)やリキュールの第一人者といえる造り手です。特に88種類もの多様なオードヴィーを造りだすことから、「オードヴィーの法王」と呼ばれています。今回は現当主のフィリップ・トラベール氏が来日し、自ら造りの特徴などについてお話されました。

メッテの製品は、3種類に分けられます。

ひとつは、オードヴィーEau de vie。これは糖分のある原料(洋ナシや杏など)から造られ、そのまま発酵・蒸溜を行うものです。原料は軽く破砕して使います。種があるものはそのまま使うことでアーモンド様の苦みが出て、より複雑な香味が得られます。発酵は2000ℓの密閉性の高いグラスファイバー製タンクにて、酵母を添加せず、空気中の蔵付きの酵母のみで4~6週間かけて行います。蒸溜は、湯煎加熱式の銅製アランビックで2回蒸溜します。2回目の蒸溜はウイスキーやコニャックと同じく3パートに分ける、いわゆるミドルカットを行います。65~70%程度の留液に、現地リボーヴィレの天然水を45%になるまで加水し、ステンレスタンクにて最低6年熟成させます。

次に、スピリチューSpiritueux。これは糖分の低い果実やスパイス、花などの原料(生姜やトリュフ、プルーン、フランボワーズなど)から造られます。120ℓのプラスチック容器にて、原料と75%のブドウベースのニュートラルアルコールを数日~数か月浸漬(マセラシオン)した後、1回蒸溜(ミドルカットする)して造られます。こちらも同様に加水したのち、最低6年ステンレスタンクにて熟成されます。

そして、リキュールLiqueur。カシスの場合、カシスの実をそのままカシスのオードヴィー(45%)に浸漬し、その後キビ糖と天然水を加えてアルコール度数を20%まで下げます。

着色料や香料は添加せず、果実の残留物や固形分を取り除き、そのままボトリングします。ここでは加える砂糖の量によってリキュール(200g/ℓ)かクレムCreme(400g/ℓ)かを決めますが、果実味と糖分とのバランス感でどちらにするのかを造り分けています。

メッテが使用する原料の大半は地元アルザス産ですが、それ以外の地域のものでも高品質のものであれば取り寄せています(マダガスカルのヴァニラ、タイの生姜、中国四川の花椒など)。

メッテが使用するスチルは、100、130,150ℓの3つの容量のシャラント型銅製アランビックで、1960年の設立以来使用しています。加熱は湯煎式でじっくりと行うため、100ℓの蒸溜に3時間程度かかります。同じ蒸留器を繰り返し使用するので、蒸溜ごとにしっかりと洗浄することが大切です。

熟成については、アルザスの伝統に則って樽では行わず、ステンレスタンクにて行っています。果実など原料の風味・個性を最大限に生かすためです。通常6年以上熟成させますが、オーダージュのオードヴィーは30リットルのガラス瓶・デミジョンにて25年以上屋根裏部屋で熟成を行います。小さい容器のほうが、よりダイナミックな変化をもたらします。香り立ちは通常のほうがよいかもしれませんが、口当たりは別格になります。

メッテは、多くのオードヴィーやリキュールを生産しています。これは好奇心からもありますが、いろいろな場面で使っていただけるようにとの考えもあります。食後酒としての伝統的な楽しみ方としては、程よい大きさのチューリップ型のグラスにて15℃で提供するのがよいでしょう。それ以外にも、お料理やデザートなどの風味づけや、カクテルでも遊び心を持ってベースに使用するなど、いろいろとご提案できると思います。

この記事を書いた人

谷嶋 元宏
谷嶋 元宏https://shuiku.jp/
1966年京都府生まれ。早稲田大学理工学部在学中よりカクテルや日本酒、モルトウイスキーに興味を持ち、バーや酒屋、蒸留所などを巡る。化粧品メーカー研究員、高校教員を経て、東京・神楽坂にバー「Fingal」を開店。2016年、日本の洋酒文化・バーライフの普及・啓蒙を推進する「酒育の会」を設立、現在に至る。JSA日本ソムリエ協会認定ソムリエ。
谷嶋 元宏
谷嶋 元宏https://shuiku.jp/
1966年京都府生まれ。早稲田大学理工学部在学中よりカクテルや日本酒、モルトウイスキーに興味を持ち、バーや酒屋、蒸留所などを巡る。化粧品メーカー研究員、高校教員を経て、東京・神楽坂にバー「Fingal」を開店。2016年、日本の洋酒文化・バーライフの普及・啓蒙を推進する「酒育の会」を設立、現在に至る。JSA日本ソムリエ協会認定ソムリエ。