何回か前にシャンパンとビールの泡持ちの違いについて解説しました。含んでいる界面活性物質と溶けているガスの量の違いにより泡持ちに違いが出るというものでした。
参考記事
→ビールの泡とシャンパンの泡の違い
今回は、同じビールでも炭酸ガスのみのビールと窒素を含んだビールの泡の違いです。
ギネスに代表されるスタウトは、炭酸ガスと窒素ガスが溶け込ませてあることがよくあります。樽から注がれる時も炭酸ガスと窒素ガスの混合ガスが使われます。樽から注がれたギネスのクリーミーで消えにくい泡は明らかに炭酸ガスの泡とは違います。これはなぜでしょう?
グラスに注がれて泡ができた後、ビールの泡には何が起こっているのでしょうか?
実はこの時、小さい泡の中から大きい泡へガスが拡散します。小さい泡の方が大きい泡より内部の圧力が高いからです。これにより、多くの小さい泡が大きな泡になってゆきます。つまり泡が荒くなります。
この挙動は泡の中の気体の溶けやすさによって大きく変わります。窒素ガスは炭酸ガスの50倍も溶けにくく、たとえ溶けやすい炭酸ガスとの混合だとしても、泡が荒くなるのが劇的に遅くなるのです。
また泡を形成している液体は下に向かって流れ、泡の膜を薄くしてゆき、やがて壊れます。このスピードは液体の粘性や重力、膜の厚さなどに依存します。早く流れれば流れるほど早く泡が壊れます。
ギネスのようなクラシックスタイル アイリッシュドライスタウトはとてもドライなので粘性はからっきし無いですが、もし、甘いバーレイワインのような濃厚なビールに窒素が溶け込んだとすると、究極に泡が長持ちするビールになるでしょう。
私のお店では水出しコーヒーを窒素で出すニトロコールドブルーを出しています。これは炭酸ガス無しの100%窒素の泡になるので、ものすごく長持ちします。