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High Gravity:BBQのご当地性とブルーイングにぴったりな温度計

アメリカン・ソールフードのナンバーワンと言われれば、やはりBBQだろう。

ちょっとした庭付き一軒家には据え置き型のガス式BBQグリルが置かれているのは当たり前だし、アパートだってベランダさえあれば日本でも知られているカボチャ型のチャコール式グリルが置かれているのが当然だ。

“BBQ” (https://flic.kr/p/pYfrvZ) by Japhet Ndemera CC:BY-NC 2.0

米国人のBBQに対するこだわりも尋常ではない。日本では想像もつかないほどデッカい肉を焼く本場のBBQは、火加減や味付けなどかなり奥が深い。もともと米国ではBBQはホストがゲストをもてなす一種のホームパーティーの一環。ホストとしてゲストに失礼のないよう、様々なBBQスクールがあるし、BBQピットと呼ばれるグリル周りは、ホストが鍋奉行よろしく調理を仕切っている。

各州で異なるBBQソースの特徴

BBQには結構ご当地性があって、よく知られているのはソースの違いだ。日本人が想像するBBQソースはテキサスのどろっとしていて甘いタイプ。

豚肉をよく食べるカロライナ両州は酸味の強いサラッとしたソースが好みだし、ケンタッキー州のお隣、ミズーリ州は独特のスパイスミックスを豚肉に擦り付けるソースなしのドライタイプ。

僕が住むカリフォルニア州サンタバーバラ近くにも伝統的なBBQスタイルがある。その名はサンタマリアBBQ。年中風が強いこの地域では一般的な木炭ではなく、何年も乾燥させた地元のレッドオークが放つ裸火を使って焼き上げる。肉はビーフの中でもTri Tipと呼ばれる部位(日本では「友三角・トモサンカク」と呼ばれるらしい)にこの地域独特のスパイスミックスを摺り込んで焼くドライなタイプ。

裸火で焼き上げるため、表面だけがあっという間に焦げてしまう。これを防ぐため、グリルは上下に調整が可能な巻き上げ式。ウィンチが印象的なこのグリルだが、裸火だけに表面を焦がしすぎず中までしっかり火を通すのは普通のグリル以上に難しい。

米国農水省は肉が安全に消費できる温度について牛肉や豚肉が63℃、鶏肉は74℃(豚肉は2012年まで71℃)としているが、食中毒を避けるために正確な調理温度を知ることは本当に大切だ。BBQの場合、グリルの蓋を閉めて調理することも多いし、厚みのある肉の場合は芯温をきっちりと計らなくてはならない。

そこで米国では長いプローブを持ったBBQ用の温度計がゴマンと販売されている。人の命がかかっているだけあって、その精度はなかなかのもの。人気なのはBluetooth付きの計測機とケーブル付きプローブを組み合わせたタイプ。これならば肉にプローブを刺して計測機をグリルのそばに置いておけば、離れた場所でゲストと談笑を楽しんでいても、手元の携帯で温度を確認できる。温度変化をグラフで示したり、特定温度に達した段階でアラームで教えてくれるなど、機能も充実。値段は3000円程度で、すでに米国ではかなり普及したキッチンアイテムと言ってもいいかもしれない。

BBQ用の温度計はブルーイングにもぴったり

実はこのようなBBQ用の温度計はブルーイングにもぴったり。

ブルーイングで温度に神経を尖らせるのは麦芽の糖化工程であるマッシング。糖化の最適温度は63〜71℃と、BBQとほぼ完全に被っている。これはタンパク質が凝固を始める温度域と糖化酵素によってでんぷんが二糖類や単糖類に分解されていく温度域が重なっていることによる。

以前はより低い温度で糖化を初め、その後段階的に温度を上昇させていく「ステップマッシュ」と呼ばれる糖化方法が一般的だったが、製麦技術が進歩した現代ではこのような方法はもはや不要とされていて、予期しない温度変化がない限り約1時間の糖化中に外部から熱を加える必要がなくなっている。

Bluetooth付きのBBQ用温度計があれば、この時間を使って他の準備をしつつ遠隔で温度変化を監視できるわけで、お手頃ながら実にありがたいアイテムだ。

この記事を書いた人

ジミー山内
ジミー山内
ウイスキーアドバイザー。米カリフォルニア在住。アメリカン・ウィスキー及びクラフト・ビール関連業界に深く携わる一方、日本で気鋭のクラフト・ブルワリーであるTokyo Aleworksを創設。スコットランド在住時はScotch Malt Whisky Society本部で樽選定員として数多くのモルト・ウィスキーを世に送り出している。
ジミー山内
ジミー山内
ウイスキーアドバイザー。米カリフォルニア在住。アメリカン・ウィスキー及びクラフト・ビール関連業界に深く携わる一方、日本で気鋭のクラフト・ブルワリーであるTokyo Aleworksを創設。スコットランド在住時はScotch Malt Whisky Society本部で樽選定員として数多くのモルト・ウィスキーを世に送り出している。